「投資信託」が下落したときのリスクに耐えられる?選ぶときに確認すべき点とは

投資信託を選ぶ際にどうしても気になる過去の運用成績。でも、騰落率が参考にならないのは、前回の記事でも説明したとおりです。でも、過去の運用成績をチェックすることは大事。ちょっと矛盾しているようですが、その真意を説明します。


運用成績は気になるけれども

前回、投資信託の運用成績を示す「騰落率」は、投資信託選びの判断材料にならないという話をしました。そもそも投資信託という金融商品は、元本も将来の運用成績も保証されていません。すべては投資先のマーケット動向次第です。

したがって、今提示されている騰落率はあくまでも過去のマーケット動向によってつくられたものであり、それが今後も続くという保証はいっさいありません。メディアなどでは時々、騰落率のランキングを掲載するケースがありますが、このランキングが上位だからといって、必ずしも優秀な投資信託であるとは限らないということを、まず理解しておいてください。

とはいえ、投資信託で資産運用を行う場合、自分でどの投資信託を買うか判断しなければなりません。以前も触れましたが、日本にはたくさんの投資信託が設定・運用されています。

なかには純資産総額の規模が非常に少なくて、真面目に運用されているのかどうかも定かではないような投資信託もたくさんありますが、それでも総本数で見れば、10月末で5,911本もの投資信託が存在しています。ここから自分の大事なお金の運用を託す投資信託を選ぶのですから、何か判断基準が必要になりますし、そのひとつとして過去の運用成績が気になるのは当然のことだと思います。

まずは資金の流出入を把握する

では、何を参考にすれば良いのでしょうか。

まず、自分がどの資産クラスに投資するのかを決める必要があります。たとえば株式という資産クラスに投資するならば、日本株式なのか米国株式なのか、あるいは世界中の株式市場に分散投資するグローバル株式なのか、ということです。20年後、30年後の世界経済の成長を取りたいのでグローバル株式型の投資信託を買おうと考えているのであれば、たくさんあるグローバル株式型投資信託の中から、どれかを決めなければなりません。

それを決める時に大事なのが資金流出入の状況です。資金の出入りが激しいと、優秀な運用者でも運用成績を上げにくくなります。継続的かつ安定的に資金が流入していれば問題はないのですが、頻繁に大きな額の解約が生じると、常に一定規模のキャッシュを持つ必要がありますし、解約注文が出るたびに保有しているポートフォリオの一部を売却せざるを得ず、そのまま保有し続ければ得られたはずの利益を失うことになり、それが運用成績の低下を引き起こします。

したがってまず純資産総額を一定金額で足切りします。たとえば100億円程度の純資産総額であれば繰上償還リスクも減りますし、運用者もある程度真剣に運用してくれるはずなので、100億円以上の投資信託をピックアップしたうえで、資金の時系列の出入りをチェックします。モーニングスターのホームページには個別ファンドの資金流出入状況が掲載されているので、それを参考にすると良いでしょう。

資金が安定していれば絶対に運用成績が良くなるとは言いませんが、良い運用成績を維持するための条件のひとつは、運用資金の安定性なのです。

騰落率は見なくても良い

純資産総額と資金流出入状況で、ある程度購入したい投資信託の候補を絞り込んだら、過去の運用成績をチェックします。

過去の運用成績といっても騰落率をチェックするのではありません。正直なところ、騰落率は見なくても良いくらいです。ここで必ず見ておくべきなのは、過去の基準価額の推移です。

基準価額は、投資信託に組み入れられている資産の価値が上昇すれば値上がりしますし、資産の価値が下落すれば値下がりします。個人が投資信託を買ったり、解約したりする場合、この基準価額と購入・解約する受益権の口数を掛けたものが購入金額、解約金額になるので、基準価額の値動きの幅が、その投資信託が内包しているリスクの度合いであると考えられます。

過去の基準価額を見るうえで注目したいのは、投資先のマーケットが大きく下落した時、その基準価額がどの程度値下がりしたのか、です。たとえばグローバル株式型投資信託であれば、2008年のリーマンショックや、直近だと2020年3月のコロナショックにより世界株式の急落が参考になるでしょう。このように、短期間のうちにマーケットが急落した時、基準価額がどのくらい値下がりしたのかをチェックするのです。

その際に見るべき点は2つあります。

ひとつはグローバル株式市場全体の値動きを示すインデックスとグローバル株式型投資信託の基準価額を比較することです。この手のインデックスとしては、たとえばMSCIオールカントリーワールドインデックスが参考になるでしょう。コロナショックを例にとると、同インデックスは2020年2月14日から3月20日までの間に32.09%下落しました。

では、グローバル分散投資型の株式投資信託はどうでしょうか。一例としてセゾン投信が設定・運用している「セゾン資産形成の達人ファンド」の基準価額を見てみましょう。同ファンドの基準価額は、2020年2月14日が2万4,186円で、3月23日が1万7,225円です。この間の下落率は28.78%ですから、とりあえず株価インデックスに対して下落率は小さく抑えられています。

自分のリスク許容度を把握する

これで良しと考えるなら、次はこのリスクを自分は許容できるのかを考えてみましょう。つまり1か月間で28.78%資産が目減りすることに耐えられるかどうか、ということです。

どうですか。たとえば100万円を運用していて、1か月間でそれが約29万円減ってしまう投資信託に資金を投じられるかどうかを考えるのです。

もちろん誰でも損はしたくありませんから、「1カ月間で約29万円の損失なんて冗談じゃない」と思うかも知れません。でも、その後の基準価額は順調に上昇し、2021年11月26日の基準価額は3万2875円ですから、コロナショックを受けた3月23日の大底から見て、90.85%も値上がりしています。

このように、基準価額の推移を見て、マーケットが下落した時のリスクに耐えられるかどうかを考え、耐えられると思ったら、その投資信託を買えば良いでしょう。

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