北朝鮮、14歳少年を「たった5分」で容赦なき見せしめ

たった5分間の「過ち」が14歳の少年の人生を狂わせてしまった。

北朝鮮・両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、韓国映画を少し見ただけの中学生に対して実刑判決が下されたと伝えた。

道庁所在地の恵山(ヘサン)市の初級中学校に通っていたハン君(14歳)は11月7日、2010年に公開されたウォン・ビン主演の韓国映画「アジョシ」を見始めたが、わずか5分後に逮捕された。

韓流取締法とも呼ばれる「反動的思想・文化排撃法」の27条は、南朝鮮(韓国)の映画や録画物、編集物、図書、歌、図画、写真などを見たり保管したりした者を、5年以上15年以下の労働教化刑(懲役刑)に処すと定めている。

ハン君に対しては、この法律に基づき、労働教化刑14年もの重い判決が下された。今までも未成年に対して実刑が下された事例が存在するが、今回の判決はことさら重いものとなった。これは、韓流の主な消費者層が若者であることから、「未成年でも容赦しない」という見せしめの意味合いがあるものと思われる。

また、今年9月の最高人民会議で採択された、若者に対する思想教育を強化する内容からなる「青年教養保障法」の影響も考えられる。

一方、反動的思想・文化排撃法の34条から38条には「子どもに対する教育、教養を無責任に行い、反動的思想・文化犯罪が発生した場合には、10〜20万北朝鮮ウォン(約2300円〜4600円)の罰金刑に処す」との規定もあり、ハン君の両親、家族も処罰の対象になるものと思われる。

現地では、罰金刑では済まされず、奥地への追放や管理所(政治犯収容所)送りの可能性も噂されているとのことだ。

実際、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)で今年2月、某有名女優が出演したAVを見ていて摘発された男子生徒の事例では、家族全員に対して奥地への追放処分が下されている。

情報筋は、韓流視聴を始めとした非社会主義、反社会主義行為を取り締まる82連合指揮部(非社会主義集中掃討連合指揮部)の活動が活発化していると伝えているが、いくら取り締まりを強化しても、摘発事例は途絶えることなく、根絶は事実上不可能だろう。

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