河北春秋(12/8):「オレンジ色の貓」という表現がアガサ・ク…

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 「オレンジ色の貓」という表現がアガサ・クリスティの小説に出てくる。そんな色の猫が果たしているのだろうか。辞書には出ていないが、実は英語のオレンジ色は明るい茶色を意味するそう▼言語学者の鈴木孝夫さんが『日本語と外国語』に書いていた。同じ言葉でも言語によってその意味に差異がある場合は多い。例えば中国における「民主」という言葉は、民主主義国の人々がイメージする内容とは全く異なる▼中国人の哲学者の李沢厚(りたくこう)さんは「中国の伝統的な民主」について、次のように述べている。「民のために主人になることであり、人民が主人となることではなかった。よい皇帝が民を尊ぶことであり、民衆が自分たちを尊ぶことではなかった」▼伝統の影響は今なお残る。言論の自由や人権の尊重など民主主義の実現が困難を極めているのは、共産党一党独裁の国家だという事情だけではない。指導者層がデモクラシーの何たるかを知らないわけはないが、そのそぶりは見せない▼米国が北京冬季五輪の外交ボイコットを表明し、あすからはオンラインで民主主義サミットが始まる。天安門事件に関係した李さんは、弾圧を逃れて渡米し、先月、91歳で死去した。存命ならば、かつてなく批判が強まる母国の現状をどう論評するだろう。(2021.12.8)