さわやかで繊細なオレンジワイン 余市で描く「日本」

余市で2016年にワイン醸造を始めたドメーヌモンの山中敦生さん。茨城県出身で、早稲田大学在学中にスノーボードの魅力にはまり、卒業後は後志を中心に北海道でスノーボードのインストラクターに。仕事がない夏場はレストランで働いていましたが、その事がワインに興味を持ったきっかけになったと言います。

ドメーヌモンの山中敦生さん

2012年、当時すでに注目を集めていた余市町のドメーヌタカヒコの曽我貴彦さんに「弟子入り」を直訴。2014年に余市に移住し、研修生として2年間、ブドウ作りやワイン醸造を学びました。サクランボ農家が使っていた果樹の畑が耕作放棄地になっていたのを知り、自らの手で1.6ヘクタールを切り開いてブドウ畑に。100本の木をチェーンソーり伐り倒し、5千本のブドウを植樹しました。

育てるのは、ピノ・グリ1種類のみ。

山中さんが育てるのは、ピノ・グリ1種類のみ。白ワイン用の品種ですが、山中さんがピノ・グリから作るのは白ワインではなく「オレンジワイン」。赤ワイン用のブドウを白ワインの作り方で醸造するとロゼになりますが、白ワイン用のブドウを赤ワインの作り方で醸造するとオレンジワインになります。オレンジを使っている訳ではありません。山中さんは収穫したピノ・グリを3カ月ほど皮のままタンクで発酵させます。

収穫後、3カ月ほど皮のままタンクで発酵させる。

タンクから出てくる二酸化炭素の音は、まるでブドウの呼吸のようです。発酵後、プレス機で搾った果汁にほんのりとついた皮や種の色は、出荷時には柔らかなオレンジ色に。見た目にもおいしそうですが、山中さんのオレンジワインが注目を集める理由は、やはりその味にあります。

繊細な味を重視したオレンジワイン

ワインの産地のカリフォルニアやチリは雨が少なく、果実の凝縮感がありますが、雨が多い日本では、同じようなワインを作るのが難しいと言われています。もちろん凝縮感があるワインを作るワイナリーもありますが、山中さんが重視するのは「繊細さ」。みずみずしい野菜を食べる日本人の舌に合うような繊細なワインです。山中さんの実家が日本茶を扱っていることも影響していると自ら分析します。

「ワインで日本らしさを描きたい」という山中さん。ピノ・グリ1種類に絞ったのも「繊細さと複雑さと、旨みとか余韻というのを表現できる品種は何かと考えた時に、ピノ・グリっていうのは果皮が薄くて、繊細なワインを造りやすいから」だといいます。大学時代にスノーボードを始め、瞬く間にインストラクターになるなど、物事を突き詰めることに長けています。ピノ・グリ1本にしたのも「突き詰めるため」なのです。

(2021年12月11日放送 テレビ北海道「土曜旅館 今知っておくべき北海道のワイン」で取材させていただきました)

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