社説:外交ボイコット 情勢見て冷静に判断を

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 米国のバイデン政権は、来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに、政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を表明した。

 中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に抗議する姿勢を示すのが狙いという。

 米大統領報道官は「中国などで人権(の尊重)を促進するための行動を取り続ける」としている。

 五輪成功に国の威信をかける中国は反発している。

 「平和の祭典」を巡り、経済や安全保障分野を中心に競争を繰り広げる両国の対立がさらに激化することが懸念される。

 米政府は1月、中国当局による少数民族ウイグル族の弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。

 先月には中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白した女子テニス選手が所在不明になる問題も起きた。中国の人権侵害への懸念が世界的にいっそう強まった。

 従来通り首脳らが五輪に参加すれば、人権や民主主義の重視を掲げるバイデン政権は、国内外から整合性を問われかねない。

 米議会でも超党派で外交ボイコットが支持されている。上院は6月、中国との覇権争いに向けて米国の競争力を高める対中競争法案を可決し、ボイコットを求める内容が盛り込まれた。

 対中関係全般に影響が及ぶリスクもわかった上での判断なのだろう。

 米国の動きに対し、中国外務省は「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。対抗措置として、2028年米ロサンゼルス五輪を外交ボイコットする可能性を示唆した。

 米国務省は「他の国々も近く発表することを想定している」と述べ、北京五輪の外交ボイコットに同調する国が広がるとの見通しを示している。

 だが、多くの国が米国に追随することになれば、世界の分断を深めかねない。

 米国が五輪以外でも外交ボイコットを広げるかは不透明だ。中国側への圧力がどう作用するか見極めることが重要だ。

 同時に、中国に対して人権状況などの改善を働きかけることが必要である。

 岸田文雄首相は「五輪やわが国の外交にとっての意義を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」としている。

 米中の対応や国際社会の状況を慎重に検討し、冷静に判断することが求められる。