社会人アメフトXリーグ IBMビッグブルーの中谷祥吾さん コロナ禍でもアスリートが出来ることとは

IBMビッグブルーの中谷祥吾選手(提供:杉田恵さん)

アメフト日本代表であり、社会人リーグIBMの主力選手である中谷祥吾(なかたに・しょうご)さんは、コロナ禍で練習も試合も出来ず、悩んでいる後輩たちを沢山見てきました。トップ選手の中谷さんは思いました。こういう時だからこそ、アメリカンフットボールを盛り上げよう。それはトップ選手の宿命であり、やるべきことだと中谷さんは言います。「スポーツを通じて何が出来るか?」動き始めた中谷さんに周りの仲間が応えてくれます。あえてコロナ禍でアクションを始めたのはなぜか? 中谷さんに話を聞きました。

日本代表 副キャプテンの中谷選手(提供:杉田恵さん)

▼ 中谷祥吾 Nakatani Shogo プロフィール ▲
1991年9月17日生まれ 30歳
大阪府 堺市 出身  関西大学 卒
関西大学職員として働きながら IBMビッグブルー(社会人リーグ)で選手としてプレーする。
身長181センチ、95キロ ポジション:DB(ディフェンスバック)
2020年 日本代表チームの副キャプテンを務める。

アメフト選手としての原点は “成長したい” という強い思い

チームキャプテンを務める中谷選手(提供:IBM BIG BLUE)

中谷祥吾さんは千葉県を拠点とし、Xリーグに加盟するクラブチーム「IBMビッグブルー」でキャプテンを務めています。ポジションはディフェンスバック(DB)、相手オフェンスのパスやラン攻撃を阻止、フィールドの後方や両サイドを守るデフェンスの花形ポジションでもあります。
日本代表として国際大会で日の丸を背負った2020年は、チームの副キャプテンとして活躍。
日本は米プロフットボール選手育成リーグ「THE SPRING LEAGUE」の選抜チームと対戦。敗れはしましたが、タックルミスもなく張り合うことができました。
「THE SPRING LEAGUE」選抜チームはアメリカンフットボールの最高峰 NFLでプレーしていた選手や、NFLを目指す選手らで構成される日本代表のレベルを試すには最適の強豪です。
平日は大阪にある関西大学の職員として働く中谷選手。週末は飛行機で大阪と千葉を往復する多忙な日々を送っています。
そんな中でも隙間時間を見つけては筋力トレーニングに励み、社会人になってからこれまで、丸一日休むことは無かったと言います。がむしゃらに頑張ってこられたのは『成長したい』という中谷さんを突き動かす強い気持ちでした。

「自分はまだ出来ると思うから、最善を尽くす。成長を止めたら終わりだと思っています。」

大学時代の中谷選手(提供:関西大学アメリカンフットボール部)

今やアメフトのトッププレーヤーとして活躍する中谷さんですが、小学2年生から高校までは野球に明け暮れる日々でした。アメリカンフットボールとの出会いは大学進学時、友人に誘われたのがきっかけです。
関西大学アメフト部は強豪、周りはスポーツ推薦や経験者が多い。未経験からのスタートだった中谷さん。
最初は『面白くない』と思っていたそうです。指導される内容も漠然としたものが多く、理解するために中谷さんは自分なりに考えながら練習をするようになったと言います。

「何となくの感覚で教えられても分からない。自分で考えて練習することを意識しました。
練習後、家に帰ってからは、上手い人のプレーを録画したDVDを何度も見ては自分と比較しました。仲の良い同級生に分からない所は聞いて、昼休みに自主練習。基礎が出来るまで反復したんです。将来コーチになることをイメージし、理解できないと意味がないと考えました。そうやって未経験からでも日本代表になれました。『こんな僕でも出来たからみんなもきっと出来る』、そう伝えていきたい。」

コロナ禍でも成長の場を作りたい!「スポーツを通じて何が出来るか?」

インタビュー中の中谷選手

2020年4月、中谷選手は難題に直面しました。
国内最高峰のリーグ、Xリーグは、毎年春と秋の2シーズン制をとり8チームが対戦します。
しかし、コロナの影響で昨シーズンも今シーズンも春は休止。
加えて、試合どころか思うような練習をすることさえ出来なくなったのです。
大学で働く中谷さんは学生スポーツの現場も大変な状況にあると気がつきました。

「コロナの影響で、学生は授業もなくスポーツをする場もなく、孤立する一方に感じたんです。
アメリカンフットボールはメジャーではありません。関東や関西での大都市は強いチームが多く、設備なども整っているけれど、地方で頑張っている子はもっと大変なのではないか。
と、想像したんです。僕は成長したいと考えている学生を後押ししたい。
オンラインであれば、全国各地の頑張っている子らの相談を聞くことが出来ると考えました。」

オンラインで繋がった東北大学の皆さんと(提供:中谷選手)

1年ほど前から始まったオンラインでの活動。これまで北は北海道、南は福岡、中学生から大学生までと幅広く、40チーム以上と繋がりを持つことが出来ました。
また学生たちに、どんな悩みがあるか? というアンケートを取りました。
『練習メニュー』や『テクニック』、『中谷さんのように大学からアメリカンフットボールを始めたが、どうしたら強くなれるのか』など、その数400にものぼりました。
中谷さんはそのひとつひとつに丁寧に答えていきました。

左:北村選手、右:中谷選手(提供:杉田恵さん)

熊本に共に活動をしているアメフト仲間がいます。
昨シーズンのXリーグで優勝、日本一になった名門、オービックシーガルズの DB 北村 優(きたむら・ゆう)さんです。北村さんは立命館大学出身、大学リーグでも戦ってきた仲間です。
緊急事態宣言が明けてからは、熊本に住んでいる北村選手との繋がりで、熊本大学の学生の元へ指導に行きました。中谷さんのこれまでの活動は全て自費、ボランティアです。

「僕は日本を代表するような選手を育てる、アメリカンフットボールのすそのを広げるような指導にも想いがあります。『スポーツを通じてどうなりたいか』を考えて欲しいんです。
努力、取り組みをどう考えるか?どう意識するか? 一回きりでは済まないけれど、考えるきっかけをこれから作れたらいいなと考えています。」

中谷選手(提供:杉田恵さん)

自分が一生懸命になれば周りも応えてくれる

社会人と選手の二足のわらじを履きながら、限られた時間の中でオンラインでの活動を続けてきました。その場で答えきれない質問もあり、いつでも誰でも閲覧できるフットボーラー向けのWEBのアプリを作ろうと考えました。

Webアプリの画面

IT企業を経営する大学時代のアメリカンフットボール部の後輩や、Xリーグの広報、そして北村選手を巻き込み、共同作業で去年の秋から作り始め、ようやく形になってきました。

「やりたいと思ったことをただひたむきにやっていたら、『中谷さん手伝いますよ』と周りの人たちが言ってくれた。助けてくれる周りには本当に感謝の気持ちしかないです。」

2021年、秋のXリーグが9月4日に開幕しました。
新型コロナウイルスの影響で2年ぶりの通常開催です。
中谷さんが所属するIBMは、2017年、2018年には日本社会人選手権決勝に進むなど、力をつけてきました。

インタビュー中の中谷選手

「社会人になる前、上位のチームに誘われましたが、そこで自分が試合に出て活躍し、日本一なってチヤホヤされることに何の価値があるんだろう。と、思ったんです。日本一になってメディアに出ても、10年20年経てば誰も覚えていない。
結局は自分がスポーツを通じて成し遂げ続けるかどうかなんです。
僕はアメリカンフットボールとそれ以外の社会の中で、やりたい事ができるIBMを選びました。僕らは選手でもあるし、社会人でもある。競技と仕事を両立して、日本一を目指します。それは難しい事ですが、IBMは挑戦し続けるチームでありたいと考えています。誰がどうより、自分がどうありたいか。このコロナ禍で悲観し続けず、僕は出来る事をやっていきます。」

※この内容は、2021年7月に取材した記事です。

チーム・試合情報

2021年12月12日(日) 11:00
ヤンマースタジアム長居にて、X1SUPER セミファイナルが行われます。
中谷選手率いるIBMビッグブルーに対するは、パナソニックインパルス。ぜひ応援しましょう!

チケット情報

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