株式投資にかかる税金、会社員の場合は確定申告や源泉徴収どうすればいい?ケース別に解説

個人で株式投資をする人が増えています。2021年7月に東京証券取引所などが発表した「2020年度株式分布状況調査」では、2020年度の個人株主数は前年度比で308万人も増加しました。今回は、会社員が株式投資を行う際にかかる税金について、損しないためのポイントをお伝えします。


株式投資にかかる税金は2種類

まずは、株式投資をした際にかかる税金について確認しましょう。

1. 売買で得た利益(税率:所得税15.315%、住民税5%)
株の売買で得た利益は「譲渡益」と言い、1年間(1月1日〜12月31日)の個々の譲渡益と譲渡損を通算して計算を行います。そして、原則、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要となります。

会社員は勤務先で年末調整を行いますが、株の譲渡益は「申告分離課税」であり、年末調整の対象外です。申告分離課税では、給与や他の所得とは区分して税金の計算を行い、確定申告によって納税する課税方式が取られています。ただし、確定申告を簡略化する方法もあるので、それについては後ほど詳しくお伝えします。

2. 配当で得た利益(税率:所得税15.315%、住民税5%)
株の配当は「配当所得」と言い、譲渡益と同じ税率ではありますが、確定申告の必要はありません。なぜなら、配当を受け取る際に自動的に税金が引かれる「源泉徴収課税」となっていて、実際には税引き後の金額を受け取ることになるからです。

証券口座の種類と税金の扱いを確認する

株式投資を始める際に、証券総合口座で「一般口座」「特定口座」のどちらかを選択したのを覚えているでしょうか?まずは、自分が開設している口座の種類を確認して、やるべきことをチェックしましょう。

株の売買で得た利益「譲渡益」の税金は、口座の種類によって扱いが変わるため、自分の口座を把握していることはとても重要です。自分の口座種類がよくわからない時は、証券会社のマイページで口座情報を確認しましょう。口座の種類は必ず記載されています。

【一般口座を開設している人のケース】
1年間の売買損益を自分自身で計算し、確定申告を行います。売買損益については、証券会社の口座管理などで記録を確認します。

なお、給与収入が2,000万円以下で、給与の支払いが1箇所のみの人は確定申告をしなくて良いケースがあります。具体的には譲渡益など給与以外の所得が年間20万円以下であれば申告不要です。例えば、株式を30万円で購入し、45万円で売却した場合、譲渡益は15万円ですから確定申告は必要ありません。

ただし、注意する点もあります。所得税の確定申告が不要でも住民税の申告は必要になります。

【特定口座(源泉徴収あり)を開設している人のケース】
譲渡益から20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金が自動的に引かれるため、確定申告は不要となります。なぜなら、「源泉徴収課税」が行われ、証券会社が代わりに納税を行う仕組みだからです。

ただし、確定申告を行うことで税制上のメリットがある場合は、確定申告可能なことも覚えておきたいところです。具体的には、次のようなケースが当てはまります。

年間で売却損があり損益を通算した結果、源泉徴収課税額に過払い分がある
年間の損益合計がマイナスで、翌年の譲渡益から控除したい
年間で売却損があり、特定口座内で受け取っていない配当がある

実際に確定申告を行う際は、証券会社から交付される「特定口座年間取引報告書」を利用します。

【特定口座(源泉徴収なし)を開設している人のケース】
証券会社から、1年間の売却損益を計算して「特定口座年間取引報告書」が交付されるので、その報告書を元に確定申告を行います。

ただし、一般口座と同様に、給与収入が2,000万円以下で、給与の支払いが1箇所のみの人は、譲渡益など給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。

会社員の証券口座はどれがメリットあるの?

一般口座にはメリットと言える特徴がないため、特定口座を選択することをお勧めします。会社員にとって、特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらが良いのかはケースバイケースとなるため、選択する際の目安をお伝えします。

【「源泉徴収なし」を選択した方がよい目安】
給与収入が2,000万円以下で、給与の支払いが1箇所のみの人は、株の託譲渡益など給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要とお伝えしました。そのため、株の譲渡益と副業など他の所得の合計が年間20万円以内となる見込みであれば、「源泉徴収なし」口座を選択するのがお勧めです。

なぜなら、「源泉徴収あり」を選択してしまうと、納税の必要がない20万円以下の譲渡益についても証券会社経由で納税してしまうからです。この場合、確定申告を行っても税金は戻ってきません。確定申告で税金が還付されるのは、他の証券会社で株式投資などをして損が出たケースだけですから注意が必要です。

【「源泉徴収あり」を選択した方がよい目安】
「源泉徴収あり」口座は、自動的に納税が行われるため税金の問題に煩わされずに済みます。例えば、源泉徴収なし口座で確定申告をすると、扶養控除や配偶者控除などを判定する「合計所得金額」へ影響が及び、扶養控除や配偶者控除を受けることができなくなることもあるので、年収が高い人は注意が必要です。

以上を参考に自分にメリットがある口座種類を選びましょう。また、現在の口座から変更したい場合は、取引先の金融機関で手続きをすれば変更可能です。

なお、NISA(少額資金非課税制度)口座については、一般口座、あるいは特定口座を選択して証券総合口座を開設した後に、任意で開設する非課税枠の口座になります。売買や配当で得た利益への課税について気にする必要はないため、NISA口座の優先利用を検討することをお勧めします。

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