カレー屋と聞いてどのようなメニューを思い浮かべますか?
スパイスたっぷりなカレー、昔懐かしいカレーと、さまざまな種類がありますね。
頭に浮かんでくるメニューは、すべてカレーではないでしょうか。
「ケーキ」や「パスタ」などを思い浮かべるかたは少ないと思います。
カレーだけでなく、スイーツやコーヒー、パスタなどにも力をいれるカレー屋、「カレーとコーヒーのお店774(ナナシ)」。
間借り営業のオープン時から人気が高い「カレーとコーヒーのお店774」を取材しました。
774について
カレーとコーヒーのお店774(以下、774)は、岡山県道22号線を挟んで倉敷アイビースクエアの反対側に建つ古民家を改装した店です。
以前は倉敷美観地区内にある和食店で間借り営業をしていた774。
和食店が閉まっている時間を借りるので、営業日は不定期でしたが人気が絶えず、ファンが着実に増えていきました。
そして2021年7月に、ついに間借りから実店舗を構えるように。
店内には4人掛けのテーブルが2つと、2人掛けが2つあります。
通りに面した2人掛けの席には大きな窓ガラスが。
▼正面には倉敷アイビースクエアのレンガ造りの壁が見えます。
774のランチメニュー
カレー
774のランチメニューは、間借り時代から続くカレーです。
2種の「アイガケカレー」や3種盛りの「サンシュモリアワセ」など、週替わりでメニューが変わります。
2種盛りと3種盛りはカレーの種類が異なるので、どちらにしようか悩ましいですが、3つもカレーが楽しめるサンシュモリアワセに。
ルーとルーの間に副菜が添えられています。
ひと皿に、手作りの副菜が6つも!
茶色一色になりがちなカレーの皿を彩っています。
▼紫キャベツの酢漬け。口直しにぴったり。
カレーのプレートに載ってくると想像もしなかった、春菊の白和えが異彩を放っています。
和の定食屋に来たような感覚になる、心がホッとなる味です。
食べる前は「カレーに合うのかな?」と思いましたが、意外と相性がいいと判明。
さぁ、カレーを食べましょう。
水分がほとんどないカレーは、ジンジャーポークキーマです。
まるでスパイスが効いた、丸めていないハンバーグのよう。
肉肉しく、食べると元気がわいてきそうなカレーでした。
ごろりと大きな鶏肉が入っているのはトマトチキンカレーです。
王道のカレーで、万人にうけそうな味付け。
鶏肉はホロホロになるまで煮込まれていました。
3つ目のカレーは、レンズ豆とココナッツ野菜のカリーです。
ココナッツの働きで他のカレーに比べ甘いカレーでした。
カレーはそのままでもおいしいですが、他のルーと混ぜて自分にぴったりな味を作るのもおすすめ。
スイーツ
カレー屋ですが、スイーツも外せません。
スイーツにも非常に力が入っています。
ケーキは季節によってメニューが変わりますが、「カレー屋の固めプリン」と「プリンアラモード」は通年メニューです。
パフェが提供されることもあります。
プリンアラモードには、固めプリンと季節のフルーツがたっぷり。
ケーキもあるので、プリンもケーキも食べたいかたにはプリンアラモードがおすすめです。
固めプリンはスプーンの跡が残るほどの固さがありました。
ほろ苦いキャラメルソースで大人向けのプリンです。
新しくはじまった夜営業
2021年11月より、昼だけでなくディナー営業がはじまったので、夜も訪れました。
夜メニューは時期によって変わります。
カレーとスイーツもありますが、ランチメニューにはないパスタや肉料理などが登場。
冷菜の豚肉とプルーンのパテを注文しました。
スパイスのクミンが香る一品。
中にマッシュルームやプルーンが入っています。
お酒好きのかたへ特におすすめしたい料理です。
カレー屋から提供されるとは予想もしない、水餃子が夜メニューにありました。
餡には美星豚とエビが入っていて、パクチーがたっぷり添えられています。
水餃子自体はあっさりしていますが、パクチーの働きでエスニックな仕上がりに。
パスタも気になったので、カラスミとパルミジャーノのパスタも注文。
しっかりと混ぜて麺にカラスミとチーズをからめてパクリ。
シンプルで、カラスミの塩っけと、パルミジャーノチーズのコクを楽しめるパスタでした。
ドリンクはソフトドリンクのほか、ワインが充実しています。
扱うワインは自然派ワイン。
自然派ワインとは化学肥料や化学合成農薬を使わず、自然の力を借りて造られたワインを指します。
扱うワインの生産国もさまざまで、王道のフランスをはじめ、珍しいオーストリアのものも。
▼ラベルが芸術的なフランスの白ワイン。微炭酸でした。
最新情報は公式Instagramをチェック!
ランチのカレーメニューや営業日など、最新情報は公式Instagramでのチェックがおすすめです。
スイーツの情報も載っていますよ。
見ているだけでお腹が減るアカウントです。
間借り店舗から実店舗を構えた774。
774を営む店主の木村直貴(きむら なおき)さん(通称 なおきむさん)に話を聞きました。
店主の木村直貴さんへインタビュー
間借り営業を経て、古民家を改装した店舗を構えた774。
店主のなおきむさんに移転の経緯や今後の展望などを聞きました。
実店舗を構えたきっかけ
──新型コロナウイルス感染症の影響で飲食業が厳しい環境ですが、なぜこのタイミングで独立を?
木村(敬称略)──
30歳までには独立したくて。
独立を目指していたのは16、17歳からです。
コロナ禍では飲食に影響があって、シンプルに収入は減るから大変とは思っていたんですけど、自分のなかで関係はありませんでした。
実店舗を構えたきっかけは、物件のタイミングがよかったからです。
自分にとって物件はすごく大事で。
この店のあたり(倉敷市船倉町)は前から気になっていました。
この店の物件は不動産にあがっていませんでした。
たまたま間借り時代にお客様に「あの物件気になっているんですよね」と話したときに、「あれ、私の物件なのよね。一回見てみる?」と言われて見に行きました。
それがコロナ真っ盛りの2020年。
実際に見に行った段階で決意しました。
「ここだ!やってみたい」って。
これが独立したきっかけです。
間借り時代から引き継がれたものと新たに生まれた想い
──道具は新たにそろえたのですか?
木村──
調理機材は一式そろえました。
皿は間借り時代から自分のものを使用していて、それを今も使っています。
中華鍋も間借り時代から自分のものです。
今日も中華鍋を使いましたよ。
キーマカレーなど水分を飛ばしながら作るカレーは、鉄鍋がいいんですよ。
メニューは週1で変わります。
レシピを考えるのは楽しいです。
「これ、前のメニューと一緒じゃね?」と息詰まることもありますが。
──間借りの時に好評だったから今回もカレーを提供しているのですか?
木村──
そうですね。
でも昼のカレーだけではなく、夜の営業も始めました。
実はカレー屋をずっとやりたいわけでもなくて。
もともとは定食屋をやりたかったんです。
間借りのときは、ひとりで効率よく回せるのがカレーということで始めました。
ずっとひとりでやっていると、どんどん効率が良くなってくるんですよ。
そうすると余裕ができて、違うことがしたくなるんです。
今はこれをやってみようかと、これに慣れてきたら昼に一品つくって、効率よく回せるかもしれない。
だからカレーだけじゃなくてもいいなと。
今はカレーが流行っているだけで、すぐ廃れていくから、ずっとカレーだけをやっていくのは自分的にも気持ち的にもしんどくて。
もっと本質的なことを行なって、倉敷に根付く店にしていかないと意味がないんです。
店をやりたいだけだったら誰でもできるんですけど、町に対して何ができるかとか、そこにちゃんと意味を持たせないと。
最近は町の未来に対して何ができるかを考えています。
今はまだ力がないから、何もできないのが現状ですけど。
倉敷の町に対してやりたいこと
──町の未来に対して、思い描いていることはあるんですか?
木村──
倉敷で食文化のレベルを上げることをしたくって。
おいしい料理を食べるためにちゃんとお金を使ったり、もっと地球のことを考えて食べたりするべきだと、飲食業の仲間と話すことがあります。
結構簡単に食べられるし、安く手に入るものもあるし。
今はそれを消費している状態じゃないですか。
そうではなくて、命を大切にして食べることや一汁一菜など、昔から日本人が大事にしているものを大切にしたいんです。
いろいろ勉強して、自分のレベルを上げないといけないし、一緒に周りのレベルも上がったらいいなって思っています。
倉敷の食文化自体のレベルが上がれば、みんながもっと幸せになるんじゃないかなって。
幸せになるひとつの選択として774があればいいなと思います。
それが仕事をしている意味につながるかなと思うんです。
でもこの考えって独立後に思ったんです。
独立前は、自分の店をやりたいだけだったんです。
目標があって、夢があって、自分の店を構えることを実現させたい。
目標を達成したら幸せになれるんだろうと思っていました。
でも目標の、店を構えても全然幸せにならなかったですね。
問題は起こるわ、自分の無力さを知るわ。
いろいろ考え事をしていくなかで、このような考えに至ったんです。
日々のお客様に接するなか、考えが変わってきたんですよ。
間借り店舗の木村ではなくて、774を経営している木村として見たときにこのままじゃだめだなと。
──間借りのときと比べて、気持ちに違いがありますか?
全然違います。空気感、雰囲気が。
間借りのときは言葉のとおり、借りているんですよ。
それが結構気持ちの逃げ道で。「まだ間借りだし」って言えちゃうんですよね。
でも店を構えたら、もう1ミリもそんなこと言えないんですよ。
言ったら負けだし、その時点でお客様が来てくれなくなってしまうから。
責任感が全然違います。
楽しさは独立してからのほうが楽しいです。
しんどいこともあるけど、お客様と毎日ダイレクトに接して、反応いただくとうれしいし、頑張る原動力になります。
その分働く時間は増えるんですけどね。
休みの日も仕込みをしています。
今後の展望
──新たにはじめた夜メニューについて教えてください。
木村──
食材は地物を多く扱っていて、ワインは自然派です。
おすすめはジビエですね。
ジビエを扱うのは地球のためでもあるけど、害獣といわれているお肉もおいしいよと知ってほしいから。
いまイノシシや鹿が増えすぎて駆除しきれなくなっているそうですからね。
害獣だけど駆除して捨てるのではなく、ちゃんと流通があって店にお肉が届いてほしい。
そしてジビエっておいしいのだと一人でも伝えられればうれしいです。
夜の営業はまだ知られていないので、まずは知っていただきたいです。
夜のメニューは昼とまったく違うので、来ていただきたいですね。
おわりに
間借り時代の人気はそのまま、しかし常に変化と進化をしている774カレー。
カレー屋の枠を超えてスイーツや肉料理などにも力を入れる店です。
かつての目標だった店を構えることが実現した今、新たな夢への達成に向けて動き出しています。
今後のなおきむさんと774の進化から目が離せませんね。