不妊治療で2人目希望の30代夫婦。世帯年収手取り700万円のマネープランはどうなる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、第一子目を出産予定の34歳看護師の方。もう1人子どもを望んでいますが、おそらく不妊治療が必要とのこと。世帯年収は手取り700万円。2人目を望めるようなマネープランは? FPの高山一惠氏がお答えします。


結婚して4年、不妊治療(体外受精)で第一子を授かり12月出産予定です。子供はもう1人欲しいと思いますが(できれば2学年差)、おそらく不妊治療を再開しないといけないと思います。年齢等も考え、できれば仕事復帰前に治療は再開したいと思うのですが、貯蓄も少なく第二子のタイミングを考えてしまいます。第二子をのぞめるような家計管理をアドバイス頂きたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、34歳、看護師、月収手取り22万円

10月末から産休。1年から1年4か月くらいで復帰予定

夫/37歳、会社員、3年前に転職、月収手取り23万円

子ども/0歳(12月出産予定)

・住居の形態:持ち家(中部地方)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:夫70万円、妻90万円

・毎月の世帯の支出の目安:37万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:3万3,000円

・通信費:8,000円

・車両費:ガソリン代2万円

・お小遣い:夫4万円、妻3万円

・その他:日用品2万5,000円、SECOM 4,000円、ペット1万5,000円、娯楽費1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額2万円(あとは共通口座の残り)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):共通口座130万円、積み立て口座40万円、貯蓄口座190万円、特別費口座26万円、妻普通貯金45万円、夫不明

・現在の投資総額:

妻/iDeCo(老後資金用毎月1万)総額50万円、つみたてNISA(教育費用)毎月1万総額50万円

夫/iDeCo毎月5,000円(総額不明)、会社株毎月5,000円(給料天引き、退職に時もらえる)

・現在の負債総額:住宅ローン物件購入額4,000万をダブルローンで夫6:妻4、金利1.18%固定、返済期間35年(2018年〜)、残積:夫2,420万円、妻1,600万円、車ローン(11月に購入)370万円、4年ローン、ボーナスから年2回10万ずつ月3万5,000円(予定)

【その他家計のルール】

・現在共通口座に11万円ずつ入れて支払い。

・毎月2万円を共通口座から積み立て口座に移動。

・家賃は夫7万円、妻5万円をそれぞれの口座から引き落とし。iDeCoやNISA、株の関係はそれぞれの口座から引き落とし。残りをお小遣いにしている。

・ボーナスはそれぞれ5万を自分達のお小遣いにして他はなるべく貯金。

・特別費は毎月1万妻から入れる(何を引き落とすかハッキリ決めておらず、今年は固定資産税や車検、冷蔵庫の購入なども共通口座から引き落とした。来年からは固定資産と車検は特別費から引き落とそうかと考えている)。

高山:不妊治療を経てお子さんを授かったとのこと。喜びもひとしおですよね。2人目のお子さんも望まれているとのことですが、どうしてもお金のことが気になってしまいますよね。まずは、子どもが2人になることを想定し、今後のライフプランで準備したいお金を把握しましょう。

200万円かかる人も。不妊治療をする場合のお金の予算を決めておく

不妊治療を経てお子さんを授かったとのこと。本当によかったですね。数年以内に2人目のお子さんも授かりたいとのご希望があり、その際には再び不妊治療を再開する可能性が高いとのこと。不妊治療をする必要があるかどうかは、その時になってみないとわかりませんが、もし、不妊治療をするとなった場合、まずは、どれくらい不妊治療にお金をかけるのか、予算を決めておくことが大切です。

既に不妊治療を経験されているので、どれくらいの費用がかかるのかは把握されていると思いますが、一般的な費用をお話しておきます。

不妊治療には、基本検査からタイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精まで5段階あり、高額かつ保険適用外になる体外受精以降の手段をとると、最低でも治療費は1回の体外受精を受けるまでに総額100万円以上かかります。しかし、1回の治療で成功したり、気がすむという人はそうはいません。また、病院・クリニックでの治療費や通院費用以外にも「できるだけ、効果を高めたい」と、体質改善のためのサプリメントや漢方を常用したりするケースも。これまで私のところにマネー相談にいらした方たちを見ていると、200万円以上かかる方も少なくなかったです。ご相談者さんが最初の不妊治療でどれくらいの費用をかけたのか把握できませんが、まずはどれくらいの費用をかけるのか「予算」を決めておきましょう。

予算を決めると、無計画に使ってしまうのを避けられるだけではありません。パートナーと不妊治療に対する価値観が折り合わない時も、予算が見える化されることで、お互いに現実が見えて、「ここまでなら使ってもいい(使えない)」と折り合いをつけやすいのではないでしょうか。

仮に予算を現在の貯蓄から確保する場合ですが、最低でも生活費の半年分は預貯金で確保し、その上で、予算を組むようにしましょう。

2人目の子にかかる費用は1人目より約20%抑えられる

お子さんが増えることはとても喜ばしいことですが、気になるのがお金の問題ですね。

衣類や食費、生活用品費などは、子どもが2人になったからといって、単純に2倍になるわけではありません。例えば、2人目のお子さんが1人目のお子さんと同性ならば、上の子のおさがりを下の子に着させることができますし、ジャンパーやコートのようなアウター、上着やズボンなどは使い回せる可能性が高いでしょう。また、ベビーカーやベビーベッドなどは2人目でも3人目でも十分に使えるはずです。

少し古いデータですが、「平成17年版国民生活白書『子育て世代の意識と生活』」によると、2人目の費用は1人目より20%程度費用が抑えられるとのこと。つまり、約1.8人分の費用で2人を育てられる計算になります。

現状の家計を拝見していると、特に無駄使いをしていることもなく、子どもが小さいうちは大きなお金はかからないので、夫婦のお小遣いや保険など、多少家計を見直せば、やりくりできるのではないかと思います。

子ども2人の教育費はどれくらいかかる?

ただし、学校教育費・学校外教育費といった教育費については、1人ずつしっかりと費用がかかってきます。ですから、教育費についてはしっかり準備する必要があります。

一口に教育費といっても、お子さんを育てるエリアや教育プランによってかかる費用は相当変わります。現在は、「幼児教育・保育無償化」や「高等学校等就学支援金制度」など、教育費を軽減する国の制度がありますので、制度を利用するかしないかなどによっても費用は変わってきますが、文部科学省「子どもの学習費調査2018」、「日本学生支援機構学生生活調査2016」を見ると、子ども1人につき、幼稚園から大学までオール公立の場合には1,000万円程度、オール私立の場合には、2,500万円程度かかります。

教育費の準備のタイミングは?

子どもが高校を卒業するまでは、基本的に学費は家計からやりくりしたいところです。先のデータには、小、中、高校、大学でかかる1年間の学費の平均値が記載されています。例えば、公立中学のデータをみると、学校教育費と学校外活動費を合わせて年間で48万円かかっています。つまり、毎月4万円を家計から教育費として支払うということ。私立中学の場合は、学校教育費と学校外活動費を合わせて年間で132万円かかっています。

つまり、私立の場合は、毎月10万円以上家計から捻出することに。ざっくりとですが、小学校から高校まで公立の場合は、月2〜4万円、小学校から高校まで私立の場合は、月7〜10万円を家計から捻出するイメージです。子どもが2人であれば、上記で示した金額の倍かかるということです。

児童手当とつみたてNISAを活用して

教育費のピークである大学費用は、家計からの捻出だけでは厳しいので子どもが18歳になるまでに子ども1人につき300万円から500万円を準備したいところです。

仮に子ども2人が高校まで公立に進むと仮定して、大学進学費用をそれぞれ500万円ずつ用意することを考えてみます。

まず、教育費の準備として活用したいのが児童手当です。児童手当は、子どもが生まれてから中学校卒業までの約15年間支給されるお金です。支給日は毎年2月・6月・10月の10日。4カ月分がまとめて口座に振り込まれます。これをずっと貯めると約200万円貯まります。

また、既にご相談者さんは教育費の準備としてつみたてNISAを活用していらっしゃるようですが、これはぜひ続けましょう。仮に毎月1万円を18年間積み立てて年4%のリターンがあったとすると、積立金額は約315万円になる計算です。お子さん2人分となると、毎月2万円を積み立てる必要があります。

児童手当と合わせると、目標の500万円は準備できそうですね。

人生の3大資金のバランスを考える。繰り上げ返済をうまく活用

今後の家計を考えるにあたり、人生の3大資金を上手に乗り切れるように計画を立てることはとても重要です。人生の3大資金とは、「教育資金」「住宅資金」「老後資金」です。

まず、教育資金ですが、現在の家計の状況には、教育資金が計上されていませんが、お子さんが2人になったとしても高校まで公立というプランであれば、家計をやりくりしながら、国や自治体の助成制度なども活用すれば、大学資金を貯めつつ、準備できるのではないかと思います。

住宅ローンについても現在の家計の状況であれば、家計から支払っていけると思います。ただし、住宅ローンが終了する時にご主人の年齢が69歳なので、ご主人のローンについては65歳までに終わらせられるように繰上げ返済も検討したいですね。

あくまでも目安ですが、例えば、1人目のお子さんの教育費の目処が立ちそうな20年後に300万円繰り上げ返済すると、返済期間が約4年短縮され65歳までに返済することができます。現在はボーナスもご夫婦合わせて年間で160万円(手取り金額)支給されているようですので、ボーナスもしっかり貯蓄していき、繰り上げ返済などにも対応できるようにしていきたいですね。

夫婦合わせてiDeCo月3万円を目標に運用を

老後資金についてですが、こちらは現在、ご夫婦でiDeCoに加入されているようですね。iDeCoは老後資金を準備するための手段としてとても有効ですからぜひ継続してください。

現在、ご相談者さんが1万円、ご主人が5,000円積み立てているとのことですが、参考までに、老後夫婦2人が基本生活(持ち家前提)を送るのに公的年金だけでは2,000万円程度足りないと言われています。

投資信託の積立を活用する場合、毎月3万円を4%で30年間運用することができれば約2,000万円になります。加えて、iDeCoの場合、掛金の全額が所得控除になり、所得税、住民税を安くできるのもメリットです。

2022年5月からiDeCoは法改正が予定されていて、iDeCoに加入できる期間が60歳から65歳まで延長になります。65歳までの加入には一定の条件を満たす必要があるのですが、60歳以降も厚生年金に加入する働き方を続けるのであれば加入することができます。

老後の資金準備のために、まずは、夫婦合わせて月3万円をiDeCoで運用することを目標にしてみるのはいかがでしょうか。

お子さんが2人になると、費用が心配になりますが、お子さんが2人になることで、どれくらい費用が増えるか、また、今度のライフイベントに対してどれくらいのお金を準備しておけば良いのかを把握することができれば、対策を立てることができます。

今回はいただいた情報でのアドバイスですので、詳細な部分までは行き届いていないかと思いますが、アドバイスを参考に、家計の見直しをしてみていただけると幸いです。

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