悪石島震度5強 トカラギャップひずみ解消の振動か 専門家「地盤の緩み警戒を」

 トカラ列島近海で9日午前、最大震度5強を伴うマグニチュード6.1の地震が発生したことについて、神戸大学の巽好幸名誉教授(マグマ学)は「トカラ周辺の地盤で大きなひずみが解消された際の振動」と指摘する。ひずみは全て解消されておらず、「大小さまざまな地震を繰り返し、次第に収束に向かう可能性が高い」との見方を示した。

 トカラ列島周辺には、フィリピン海プレートやユーラシアプレート、南西諸島の西に延びる沖縄トラフ(海底盆地)の相互作用で形成された水深1キロ超の海峡(トカラギャップ)がある。巽名誉教授は「トカラギャップを含む周辺のひずみを解消し、同時にトカラギャップを発達させる地殻変動に伴う地震」とみる。

 4月のトカラ近海の群発地震は横ずれ断層型だった。気象庁は今回は正断層(縦ずれ断層)型と説明。巽名誉教授は「トカラギャップは地盤が沈降している。縦ずれ地震が起きてもおかしくない」と話した。

 鹿児島大学の地頭薗隆教授(砂防学)は、一連の地震で悪石島や小宝島などの地盤が緩んでいるとして、土砂災害などに注意するよう求める。

 「火山噴出物が堆積してでできトカラ列島の地質はもろく、地盤の中には亀裂が多い。震度5弱以上の地震では、地盤が壊れても不思議ではない」と指摘する。「落石や崖崩れには特に注意が必要。急斜面の近くに住む人は、崖から離れて生活する工夫をしてほしい」と呼び掛けている。

地震後に崩れ落ち、土煙が上がる山の斜面=9日午前11時5分ごろ、十島村悪石島(住民提供)
ヘルメットをかぶって校庭に避難する悪石島小中学校の児童生徒や島民ら=9日午前11時50分ごろ、十島村悪石島の悪石島小中学校(住民提供)

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