「10万円給付」栃木県内13市町が全額現金方針 市民の声後押し、地域の実情反映も

 政府が新型コロナウイルス禍での緊急経済対策として実施する18歳以下の子どもへの10万円相当の給付を巡り、宇都宮市や栃木市など新たに10市町が全額現金で給付する方向で調整していることが9日、栃木県内全25市町への取材で分かった。既に方針を固めた3市町と合わせ計13市町に拡大した。事務負担の軽減や、クーポンを使用できる店舗が少ないことなどが主な理由。12市町は国が現金給付を認める具体的な条件を示していないなどとして検討中としている。

 国は年内に5万円を現金給付し、残りの5万円は子育て関連商品などに使い道を限定したクーポンを給付する方針を示している。一方で事務経費増加への批判などを受け、岸田文雄(きしだふみお)首相は「地方自治体の実情に応じて現金給付も可能とする」と表明。9日、「柔軟な制度設計を進める」と述べた。

 全額現金給付で調整する市町は、市民の声や事務負担の軽減などを重視した。那須塩原市の担当者は「クーポン配布の場合、コロナワクチンの3回目接種の事務作業と重なり、職員の負担が増える可能性がある」と懸念。「市民からも『速やかに現金給付を』との意見を多く頂いている」と説明した。

 佐野市も「事務量が削減され、子育て世帯の意向にも沿う」。真岡市には「毎日のように市民から『全額現金給付にしてほしい』と要望がある」という。同様の声は他の各市町にも寄せられている。

 宇都宮市は同日夜、全額現金給付の方針を発表した。「市民の利便性や迅速性を考慮した」という。対象児童は約8万人。2回に分けて給付する。

 地域の現状に応じた理由も挙がった。市貝町は「町内にクーポンを使える店が少なく、町民にとって不都合が多い」。野木町も「使える店が限られる」とした。

 「検討中」という市町のうち、那珂川町の担当者は「地方自治体の『実情』の詳細など明確な条件が示されておらず、町が合致するのか判断できない」と悩む。那須烏山市や那須町などと同様に、まず年内に現金で5万円を給付し、残りを現金とするかクーポンとするかで議論している。

 また検討中であっても事務負担の軽減を歓迎する声は多い。さくら市などが全額現金給付を前向きに捉えており、今後さらに増える可能性がある。市町の多くが「国は早く全額現金給付の条件を示してほしい」と求めた。

 県内では那須塩原市で14日、宇都宮市で27日など順次、給付が始まる。

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