住宅ローン減税縮小へ 消費者にどんな影響が? 住宅のプロが解説

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。12月7日(火)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、“住宅ローン減税縮小”についてNewsPicksのプロピッカーが解説しました。

◆最大40万円から21万円に…住宅ローン減税縮小

今回、「住宅ローン減税縮小」について解説してくれるのは、住宅の専門家、不動産ITベンチャー「TERASS」代表取締役でNewsPicksプロピッカーの江口亮介さん。

政府は住宅ローン減税を0.7%に縮小する方針を示しましたが、そもそも「住宅ローン減税」とは何か。江口さんは「家を買った人が税金の一部を控除してもらえる減税制度」と解説。その減税率は、これまでローン残高の1%、上限4,000万円で最大で年間40万円でしたが、これが多すぎるということで、新たに0.7%、上限3,000万円にする方針です。

なぜ縮小するのかといえば、住宅業界的にも問題視されていた「逆ざや問題」があったから。例えば、住宅購入費用4,000万円を金利0.8%のローンで借りた場合、控除額40万円に対し、利息は4,000万円の0.8%なので32万円で、家を購入したのに8万円得をしてしまいます。こうした状況を「逆ざや」と言い、消費者や業界的にはメリットになっていましたが、さすがに良くないと今回メスが入ったと背景を説明します。

具体的には、上限3,000万円の減税率0.7%となると、年間の減税額は最大21万円となりますが、江口さんは「こうした税制改正がおそらく行われるんじゃないかという見通しになっている」と現状を語ります。

◆住宅ローン減税縮小で住宅市場への影響は?

では、これにより住宅市場に歯止めがかかるのか。少なからず影響はあるものの、それを極力抑えようと政府は控除期間の延長を考えていると言います。現行では最大40万円の控除期間は10年間ですが、改正案の0.7%へと変更された際には13年に。ただ、総額的には40万円×10年の最大400万円が、21万円×13年は273万円と大幅減。

こうした住宅ローン減税縮小について江口さんは、「実質的には増税に近いが、これにより消費を落ち込ませてはいけないとさまざまな折り合いがあっての着地。ただ、まだ決まってはいないので変更点はあるかもしれないが、このままだと(控除額は)減ってしまう」と言います。

「東京新聞」整理部 整理記者の大島晃平さんは、空き家問題もあるなかで、政府はなぜ新築の購入を促すような政策を続けているのか腑に落ちない様子。また、減税率にしても「金利は社会の状況によって変わる。利息率が変わったら減税率もまた変えるのか。家の購入時は長期的な経済を見通し、家計なども計算して購入するわけで、それを国の方針によって変えられてしまうのは消費者にとってどうなのか」と疑問を呈します。

まず、空き家問題についてはそれを解消すべく、住宅ローン減税も新築だけでなく一部の中古住宅に適用されるようになっています。ただ、新築のほうが控除額が大きく、その理由については「新築住宅は価格に消費税が入っている。その分、還付を増やそうとしているのが現状」と江口さん。

キャスターの堀潤からは「逆ざやになることは想定できなかったのか?」との質問も。減税率に関しては、住宅ローン減税の前身は1970年代にあり、当時は金利が3%など高く、その後も1%を超えていて、1%を切る時代が来ることは予想だにしていなかったそう。それが今や安いものだと金利0.3~0.4%台もあるなかで、さすがに調整が必要ということで遅ればせながら改定に舵を切ることに。江口さんは「税制というのは常に変わっていくので、消費者も勉強が必要」と指摘します。

一方、法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんからは、住宅ローン減税縮小による不動産市場の変化に関する質問が。これに江口さんは「消費者としてはうれしくない話なので、落ち込みの力がかかるかなと思う」と言いつつ、「同時に駆け込み需要も発生する見立て」とも。

最終的にいつ家を買えばいいのか聞いてみると、「家を買うべきと思っている人は早く買ったほうがいい」と江口さん。というのも、将来の価格がどうなるかは正直わからず、さらには税制も常に変化するから。今回で言えば、消費者としてはマイナスになる可能性が高いため、買うなら早いほうがそれまで期間に払う賃料もかからないので結果的にお得なのではとの見解を示します。ただ、「焦って変な物件を買うこともないので、専門家から知己を吸収し、情報を仕入れて判断していくことが大事」と注意を促します。

由井さんが「(住宅は)大きい買い物なのでどうしても慎重になってしまう」と吐露すると、江口さんは賃貸か持ち家かで悩んでいる人たちに向けて「将来を考えるタイミングで、しっかりと考えた結果、"自分は買わない”であればオーケーだと思う。ただ、大きな話でよくわからないからと後ろ倒しにしてしまいがちだが、そうすると回り回って損をすることもあるので、勉強は大事」とアドバイスしていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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