漫才の日本一を競う「M―1グランプリ2021」。12月2日に行われた準決勝で、決勝に進む9組が選ばれた。その中の一組で「中年の星」とも呼ばれる錦鯉が優勝への決意と、11月に出版された初めての著書について語った。(共同通信=中村彰、敬称略)
▽4位で生活が一変
錦鯉は無邪気なボケを連発する長谷川雅紀(50)に冷静に突っ込む渡辺隆(43)のコンビ。去年のM―1グランプリ決勝で4位に食い込み、一気に人気と知名度が上昇。長谷川は決勝進出者の最高齢記録としても話題になった。
「去年の12月まで2人ともアルバイト生活。アルバイトをやめられて、テレビのお仕事がたくさん増えて、収入もそれに見合った額をいただいて。一変しましたね、生活が、人生が」と、長谷川はこの1年を振り返る。
「朝3時起きだとか、1日に五つ、六つお仕事があったり、休めなかったりとかありますけど、アルバイト行って、ライブやってという日々に比べたら幸せだなって思います。朝早く起きるのだって、休みがないのだって苦じゃないですもん。それまで怠け過ぎ、寝過ぎだったんで、これで帳尻が合ってくるみたいな。神様はよくしてるなと思います」と長谷川は話す。
▽「決めるなら今年」
今年はもちろんM―1優勝を狙う。昨年は上位3組に惜しくも残れず、2本目のネタを披露できなかった。「今年はネタ2本をやって、しっかり優勝を取りたい。50代初のM―1優勝者を目指して、決めるなら今年」と決意を語る。渡辺も「僕も優勝だけですね。それだけです」と短い言葉だが気概をみなぎらせる。
決勝に進んだのは放送作家らプロの審査員が選んだ実力派ばかり。長谷川は「わくわくするメンバー。初登場が多いので、何が飛び出してくるか分からない。でも、自分らのスタイルをやるしかない」と期待と警戒感をにじませる。渡辺は「戦略は思い切りやるだけ」と冷静だ。
▽「くすぶり中年の逆襲」
長谷川は去年のM―1グランプリ決勝進出者の記者会見で「『人生大逆転』という本を出す」と発言していた。タイトルこそ違うが、夢は実現した。長谷川は今、思う。「言霊ってあるんだな。思っていることを言えば現実になるんだな」
著書「くすぶり中年の逆襲」(新潮社)では、2人の生い立ちから芸人としての歩みまでの半生がつづられている。
錦鯉のように、夢を持ち続け年月がたってしまった人たちはお笑いに限らず表現の分野でたくさんいるだろう。「僕らが『中年の星』とか希望を持たせる半面、やめるきっかけを逃す、変な希望を持たせた両面がある」と長谷川は分析する。
「(本で)オジサンの存在意義は思いつく限り言い尽くしたのかなあ。あっという間にオジサンになるし、オッサンからが長(なげ)えんだから」と渡辺は誰もが加齢を避けられない宿命を指摘する。
M―1優勝以外の目標はレギュラー番組を持つこと。「同じスタッフ、同じ出演者で顔を合わせたら、どんな感じなのかな」と長谷川は思いをはせていた。
「M―1グランプリ2021」決勝進出者は錦鯉のほか、もも、真空ジェシカ、モグライダー、オズワルド、ランジャタイ、インディアンス、ゆにばーす、ロングコートダディ。敗者復活戦を勝ち上がった1組を加えて優勝を争う。12月19日夜、テレビ朝日系で生放送。