【コロナワクチン接種】薬剤師の貢献を振り返る/飯能地区薬剤師会(埼玉)の事例から

【2021.12.10配信】3回目の接種に向けて準備が進むコロナワクチン。1回目、2回目の接種では初めての事態に自治体や医療従事者の中でも戸惑いがあった。そのような中、接種会場への協力等の薬剤師の参画に対しては、高い評価があった。飯能地区薬剤師会(埼玉)の取り組みから振り返る。

分注マニュアル作成と研修会実施で手技を統一

埼玉県飯能市では4月から医療従事者向けの接種を開始した。4月6日、飯能地区薬剤師会では集団接種への準備に向けて薬剤師会内でアンケート調査を実施。希釈分注・予診事業への参加意向を会員に確認した。これを受け、5月21日に市に対し、薬剤師会として支援事業に協力する旨の意思表明をした。5月22日には市から協力要請を受ける。

6月2日・3日に薬剤師会内で希釈分注・予診に向けて研修会を開催する。
6月5日、集団接種支援事業が始まった。

飯能地区薬剤師会が市に提出した参加意思表明書は以下の通り。平日・休日で薬剤師会から具体的に協力できる人数などを提示。「来局される患者様の不安な気持ちを少しでも和らげるように今、できることを様々な面から考え、サポートしながら日々業務をおこなっております。(中略)今後、ワクチン接種において人手が十分でない場合もあるかと存じます。その際にご活用いただけると幸いです」と、支援事業に協力する背景にある薬剤師会の思いを伝えている。

実際の接種では6月に4710回分(=分注数、参加薬剤師延べ92人)、7月に8516回分(376人)、8月に1350回分(69人)、9月に1万3080回分(274人)、10月に8880回(168人)を実施した。6月から10月の累計分注数は3万5996回。全体の接種対象数(飯能氏の12歳以上人口7万2000人)に対する薬剤師会の協力率は25%となった。

この中で薬剤師会が行ったことは国際医療センターと連携して薬剤師の派遣を依頼したこと、市のスケジュールに合わせて参加人数を調整したこと、分注作業のマニュアルを作成・手技の統一化を図ったこと、アナフィラキシー等のアレルギー反応のためのマニュアルを作ったこと、参加社の体調チェックなど健康管理を行ったこと、市と話し合いの上時給を決め参加者に分配したこと、他職種とコミュニケーションをとりながら実施に協力したこと――などだ。

OTC薬の相談を受ける

こうした取り組みの結果、大きなトラブルなく集団接種が実施された。
累計3万5996回分の分注は医療過誤が起こることなく準備できた。
予診では薬剤師ならではの視点も加えて行った。
特にアナフィラキシー等を想定して対応に必要な情報を収集し、免疫抑制剤の薬剤名の記載やステロイド内服中の人の用量と薬剤名記載、向精神薬を飲んでいる人の注意喚起、外来化学療法中の人などがん治療中の人への注意喚起などを行った。
OTC医薬品を含む医薬品やサプリメント服用の状況や、食事のアレルギーのほか造影剤でのアナフィラキシー等検査薬のアレルギーについても聞き取りを行った。発熱時等のOTC薬使用について相談を受けたほか、これを機に日常で服用しているOTCについての相談も受けたという。この中で鎮痛薬依存症の人も多数いたという。
副次的な成果もある。接種準備を通して多くの職種と顔の見える関係のさらなる構築につながった。

編集部コメント/本稿を記録の一部にしたい

飯能地区薬剤師会の事例を紹介したが、日本全国の多くの地区薬剤師会で同様の取り組みと貢献が行われた。本稿でその取り組みの一部を記録として残しておきたいと思う。
日常業務に付加する形で協力を行ったワクチン接種事業においては、「最初は初めての貢献に緊張感や使命感があって感じなかったが、月を追うごとに疲れが蓄積していった」という率直な声も聞こえる。こうした奉仕精神に基づく取り組みは、社会からの薬剤師への大きな評価として返ってくるはずだ。
接種事業に協力した飯能地区薬剤師会副会長の池田里江子氏は、「医療行為のあるところには必ず薬剤師が必要だと思っています。ワクチン接種事業を通して、医療人としての役割達成には薬剤師の協力も必要なんだと、他職種の方々に再認識していただくことにつながったのであれば幸いだと思っています」と話している。

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