外交ボイコット

 〈事故を起こして沈没しそうな豪華客船。海に飛び込んでもらおうと船長が乗客の説得を始めた〉…米国人には「ヒーローになれますよ」、英国人には「ここで飛び込むのが紳士というものです」、イタリア人には「あそこで美女が泳いでいますよ」…▲こんな調子で世界の国々の国民性を笑う有名なジョークがある。ドイツ人には「規則で決まっています」、フランス人には「絶対に飛び込まないで」、中国人には「海にはうまそうな食材が」などと続き、日本人への説得文句は「皆さん飛び込んでいますよ」▲北京冬季五輪・パラリンピックを巡る外交ボイコットの動きが広がる中、この話を思い出した。中国の人権状況を問題視し、口火を切ったのは米国。オーストラリア、英国、カナダが同調する構えを見せている▲さて日本は…。笑い話の通りならば、予想される選択は「追随」だが、日中は来年が国交正常化50年の節目。今夏に自国で五輪を開いたばかりという事情もある。私たちは東京五輪を全力で支えた-と中国側▲スポーツと政治を直結させることには素朴な抵抗を感じる。国際的に孤立させることが即、画期的な前進をもたらすとも考えにくい。かと言って、人権問題はもちろん看過できない▲あちらを立てればこちらが立たない。難題である。(智)

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