片桐仁が「やりすぎ!」と息を吞むほど豪華なホテル雅叙園東京・百段階段とは?

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。9月18日(土)の放送では、ホテル雅叙園東京の「百段階段」に伺いました。

◆絢爛豪華な百段階段に集まった「あかりのアート」

今回の舞台は東京都・目黒区にあるミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」。

創業時より受け継ぐ美術工芸品の数々が館内を彩るなか、片桐が向かったのは「百段階段」です。百段階段とは、ホテル雅叙園東京の前身、1935(昭和10)年建立の旧目黒雅叙園3号館にある階段。

この建物は料亭として開業し宴会や披露宴など華やかな宴が行われていましたが、その絢爛豪華な7つの部屋を繋いでいるのが百段階段で、現在は東京都指定有形文化財に指定されています。

片桐は、そんな百段階段で今夏開催されていた企画展「和のあかり×百段階段2021 ニッポンのあかり、未来のひかり」へ。そこでは7つの部屋に「あかりのアート」が集結し、有形文化財を鮮やかに彩る唯一無二の空間を創出。

ホテル雅叙園東京の柚木啓さんの案内のもと、百段階段を前にした片桐は、窓枠に施された巧みな装飾に早くも感嘆。

そして、1室目「十畝の間」に足を踏み入れると「うわ~、すごい……」と思わず声を漏らします。重厚な造りのこの部屋は、黒漆の螺鈿細工が随所に見られ、天井には日本画界の大御所・荒木十畝の花鳥画が。

なかでも片桐の目に留まったのは立派な"柱”。それは「パウ・ブラジル」というブラジルの国名のもとになった木で、昭和初期、綿花の輸入時に船のバランスを取るための重し代わりに積まれていたものです。

そんな十畝の間では、「森のあかり」をテーマに折り紙作家の布施知子と照明デザイナーの阿曾正彦の作品「ORITERASU」などを展示。全て折り紙で作られているというその作品を目にした片桐は、「これは紙ですか!」とビックリ。

2部屋目は「漁礁の間」。中国の故事「漁礁問答」の一場面を再現した部屋を一瞥した片桐は「この部屋、派手」とあんぐり。欄間・天井・床柱は全て木を彫って色を付けた彩色木彫板で、室内は全て純金箔、純金泥、純金砂子でしつらえられ、「彫りで色塗っていうのがいいですよね。ともすれば装飾過多と思われるが、やっぱりめでたいのがいい」と片桐。

この部屋は「かぐや姫の記憶」という展示テーマのもと、日本の伝統工芸がたっぷり。「こういう部屋で作品を展示するってなかなかないでしょうからね」と文化財の空間を彩る作品の数々を片桐は感慨深く鑑賞します。

続いては「草丘の間」。そこには部屋名の由来となった日本画家・磯部草丘の作品が天井を埋め尽くしています。「素敵な風鈴の音が。いいですね」と期待を寄せつつ部屋に入ると、室内には「風のあかり」をテーマに、日本を代表する五大風鈴がズラリ。

さらに、片桐の目を丸くさせたのが"掛け軸”。「これはなんなんですか!? 掛け軸が動いてますよ!」と驚きの声を上げます。それは敷地内の庭にある滝の映像をはめ込んだもので、「掛け軸とは本来、窓のなかに別の世界があるということなので、まさに現代の掛け軸」と目を見張ります。

◆なぜこうも豪華なのか…創業者の思いとは?

次の部屋は日本画家・橋本静水の名が銘打たれた「静水の間」。橋本静水ら多くの日本画家の作品が天井と欄間を彩ります。

この部屋の展示テーマは「ガラスのあかり」。全国各地からさまざまな技法のガラス作品を集めています。

ここで片桐は、どの部屋もなぜこうも豪華なのか、「創業者はどういう方なのか?」と思いを馳せます。創業者は石川県出身の細川力蔵で、1O代のときに上京。東京・神田の銭湯に丁稚奉公に入ります。そこで精力的に働き、1912(大正元)年には23歳で浴場の経営者に。そして、1928(昭和3)年に、芝浦の自宅を改装し高級料亭を開き、1931(昭和6)年には目黒で庶民向け料亭「旧目黒雅叙園」を開業。細川は「1日限りでもお大臣気分を味わっていただきたい」と華美な装飾にこだわったそうです。

この逸話に、片桐は一代で築いた業績に驚きつつ、「良い身分の人だったら、こういうものを作る目がなかったかもしれない。いろいろなものが当たり前になっていたから」と細川への思いを巡らせます。

なお、百段階段には細川による粋な仕掛けがあり、それは縁起が良いものが多いこと。"末広がり”を意味する扇の装飾があちこちに施され、その他にも「健康」や「長寿」、「富貴」を思わせる縁起物が点在。"富士山”や"鶴”、"鷹”などさまざまなおめでたい吉兆のモチーフが随所に見受けられ、片桐も「素晴らしいですね」と感心しきり。

5つ目の部屋は、日本画家・板倉星光の作品が天井と欄間を覆う「星光の間」。

そして、6部屋目は日本画家・鏑木清方が作った茶室風の部屋「清方の間」。そこには「土のあかり、木のあかり」をテーマに陶芸作品が空間を彩ります。

◆美の世界を提供し、人々を楽しませるパワースポット

実はこの階段「百段階段」と言いながらも、99段しかありません。その理由は、百までいってしまうと先がない、未来がないから。さらには今後も登っていくため、未完の美など諸説あるそうで、片桐は「日本的ですね」と合点します。

そしていよいよ最後の「頂上の間」へ。部屋の壁には山口県の柳井で祭りになると軒先などに飾られる「金魚ちょうちん」が。

今回の企画展では、照明効果を出すために基本的に暗幕を敷いていますが、頂上の間のみ外光を取り入れ、「ニッポンのあかり、未来のひかり」というタイトルにかけ、屋外が見渡せるようにしています。

初の百段階段を堪能した片桐は「一代で丁稚奉公から実業家になった細川さんの夢の結晶でもあるし、来た人をビックリさせたい、楽しませたいということで時代のエネルギーを感じますね。パワースポットだと思いました」と感想を述べ、「人々を楽しませるために豪華絢爛な美の世界を提供した百段階段、素晴らしい!」と絶賛。華やかな美の世界を見せてくれた百段階段に盛大な拍手を贈っていました。

◆片桐仁の"もう1間”は「漁礁の間」

今回は、片桐がもう一度じっくり見たい部屋をチョイスする「片桐仁のもう1間」。選んだのは、「漁礁の間」。特に目を奪われたのがヒノキの大木を使った柱で、「日本のこうした木彫って2.5次元くらいのものが多いんですけど、これはもう2.9次元くらい。ほぼ回り込んでいる」とその彫りの深さに感動。さらには松が畝り、家族が描かれ、海もある、そのモチーフに「やりすぎ、いいです」と興奮気味に語ります。

最後はミュージアムショップへ。「金魚ちょうちん」や「江戸風鈴」、「小田原風鈴」、「南部鉄風鈴」といった風鈴など、それぞれの部屋で見られた作品の数々が商品化されており、思わず興味をそそられる片桐でした。

※開館状況は、ホテル雅叙園東京の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:わたしの芸術劇場
放送日時:毎週土曜 11:30~11:55<TOKYO MX1>、毎週日曜 8:00~8:25<TOKYO MX2>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/geijutsu_gekijou/

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