サッカーの天皇杯全日本選手権で連覇を目指すJ1川崎は12日、等々力陸上競技場で準決勝の大分戦(試合開始午後2時)に臨む。主力の海外移籍を新戦力の台頭で乗り切ったシーズンで、ひときわ存在感を放ったのが大卒新人のMF橘田健人(23)だ。リーグ優勝と合わせ、2年連続2冠の偉業で躍進の1年を締めくくる。
橘田は5日に発表されたJリーグ優秀選手31人に新人で唯一選出。ベストイレブン入りこそならなかったが、4度目のリーグ制覇を成し遂げた川崎に欠かせない存在に成長した。
桐蔭横浜大から加入した今季は控えからスタートし、ウズベキスタンで集中開催されたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で台頭。攻撃的MFや右DFもこなし、終盤戦ではチームの心臓部といえる中盤の底の「アンカー」に定着した。
こぼれ球をことごとく回収する高い予測力に加え、目を引くのはピッチの至る所に顔を出す豊富な運動量。神村学園高(鹿児島)時代の「自衛隊ダッシュ」と呼ばれる過酷なトレーニングに終盤まで衰えないハードワークの原点がある。
練習試合で負ければ、1失点につき20メートルの短距離走と腕立て伏せのセットを100回繰り返した。多いときには千回も課され、「走りのトレーニングは結構やっていたので、高校時代に体力がついた」と振り返る。
「シーズンが始まる時はこれだけ試合に出られると思わなかった」と目まぐるしく動いた一年。2年連続の2冠を達成すれば、1993、94年にリーグとナビスコ杯を制した黄金期のV川崎(現東京V)以来となる。
「(リーグ)優勝が決まった後も絶対に全部勝つという意識で戦えている」と橘田。クラブの新たな歴史を刻むべく、大卒の星は最後まで労をいとわず走りきる。