苦悩の1年を経て「光が…」 DeNA細川、オースティンらとの米国修行で得た手応え

DeNA・細川成也【写真:荒川祐史】

昨季はイースタン・リーグで3冠、自信を深めて迎えた2021年だったが…

1軍出場37試合、39打数6安打1打点、本塁打数は0。プロ5年目のDeNA・細川成也外野手の2021年の成績だ。主に代打として起用され、結果を残せなかった今季について「5年間の中でも、すごく長く感じる苦しいシーズンでした」と正直に打ち明ける。

「1軍に滞在した時間は、5年間で一番長かったんですけど、やっぱり代打の難しさであったり、少ないチャンスをモノにできなかったり。シーズン当初、外国人選手が来日できないことがあって、自分はオープン戦から使っていただきましたが結果が出ず、シーズン最後までズルズルと来てしまいました」

主にファームで過ごした昨季は、イースタン・リーグで最多本塁打、最多打点、最高出塁率の“3冠”を獲得。持ち味の長打力を十分に生かせた結果に自信を深め、満を持して迎えた今季だったが、現実はそう甘くはなかった。

会心のスイングでボールを捉えても打球が守備の正面を突いたり、バットの芯を外されてゴロ凡打に打ち取られたり。「ファームではできても1軍ではできないことが、たくさんありました。どうしたらいいのか、いろいろ悩んで……」。試行錯誤を繰り返しても、逆にドツボにはまってしまう。そんな細川の苦悩を感じ取っていた人物がいる。同じ外野を守るタイラー・オースティンだ。

「前半戦の終わり頃でした。試合前の守備練習で一緒にライトに就いていた時、オースティンから『今年のオフはアメリカで一緒にトレーニングしてみないか?』と声を掛けてもらったんです。元々、オースティンのような選手になりたいと思っていましたし、これも何かの縁。すぐに『お願いします!』と返事しました」

強打者でありながら、全力疾走で次の塁を狙う。守備でも積極的なプレーを見せ、勝利へのこだわりが強い。そんなオースティンの姿に、日頃から尊敬の念を抱いていた。

「チャンスに強くて、ここぞ、という場面でホームランが打てるし、打率も残せる。自分もああいう存在になっていかないと外野のレギュラーは奪えない。自分の目指すべき姿だと思って、ベンチから見ていました」

DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

異例の許可でこの秋に渡米、ソトも加わり「新たな発見があった」

シーズン終了を迎えると、球団の了承を得て米国へ飛び立った。カリフォルニア州にあるトレーニング施設では、オースティン、そして主砲ネフタリ・ソトと合流。オースティンが師事する現地コーチ陣も加わり、主に打撃スキルの改善に取り組んだ。

「まずは打つ姿を見てからアドバイスをいただいたんですが、改善していこうと言われたのが上半身、腕、バットの使い方。指摘された点は、シーズン中に自分でも何とかしたいと思っていたところでした。僕の場合、ボールがバットに当たるゾーンに奥行きを持たせたいと思っていて、打席ではバットを極端に下から出してボールを捉えるイメージをしています。そのイメージをどうやって体で表現するか。そこが上手くできなかったから、今年はゴロが多くてホームランがゼロだったんだと思います」

頭の中にあるイメージを体現するために、通常よりも短く、チェーンの付いたバットを使ってみたり、片手でバットを振ってみたり、現地コーチのアドバイスを基に今までにはないアプローチを取ってみた。「バットを持たずにできるドリルも教えていただきました。いろいろ試してみましたが、自分でも『なるほど』と納得できる部分が多かったので、すごく面白かったですね」。そう語る声は心なしか弾んで聞こえる。

「本当に濃い1週間だったと思います」という言葉が、充実の時間を物語っている。見るもの、聞くこと、全てが新鮮。1つでも多くのことを学んで帰ろうと、夢中で打撃と向き合った。「他の国の野球文化に触れて『こういう考え方があるんだ』『こういう教え方もあるんだ』と、新たな発見が本当にいっぱいありました」。野球に対する視野が少し広がると「自分の中で『こうした方がいいんじゃないか』という道が見えてきた。光が見えてきたんじゃないかと思います」と、目の前の霧が晴れた思いがした。

勝負の6年目に向けて「打撃をモノにできるかできないかは自分次第」

帰国後、三浦大輔監督に挨拶し、米国行きを許可してくれた御礼を告げると「(米国で)やってきたことを貫いてみろ。来年は期待しているぞ」と力強い言葉をもらった。パワーとスピードを兼ね揃える逸材としてブレイクを期待されながら5年が過ぎた。「ずっと期待していただきながら結果を残せていない。来年こそは恩返しではないですが、期待に応えたいですね」と力強く宣言する。

「来年はもう6年目。1軍で結果を出さなければいけない立場ですし、1軍で活躍すればチームの勝ちに繋がる。アメリカで見えた打撃スタイルをオフの間にしっかり自分のモノにして、キャンプ初日からアピールできるように準備したいと思います。打撃をモノにできるかできないかは自分次第。考えながら質の高い練習をして体に染み込ませていきます。1日1日を大切に」

米国で手応えを掴んだ細川の顔に、もう苦悩の表情は浮かんでいない。そこにあるのは、オフの取り組みに対する高いモチベーションと来季の自分自身に対する期待だけだ。

来年2月1日、沖縄・宜野湾で迎えるキャンプ初日。米国での経験を生かしながらどんなオフを過ごしたのか、細川の姿から見てとれるはずだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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