「10万円相当の給付」に… 東京の自治体にも混乱広がる

政府が経済対策に盛り込んだ18歳以下の子どもへの10万円相当の給付を巡って地方自治体に混乱が拡大しています。東京都の小池知事は12月10日の会見で「国として早期に具体的な基準を示すことが今の状況を落ち着かせる一番の方法ではないか」と述べ、政府の対応を注視する考えを明らかにしました。

報道陣から「(全額現金給付と)クーポンとの併用とどちらが効果的と考えるか」そして「スピード感を含めた政府対応への評価」を尋ねられた小池知事は「基本的に各自治体が行うもので、都のレベルではなくそれぞれの区市町村が実際の主体になるもの」とした上で「政府としての方針はできるだけ安定したものが必要。区市町村が混乱することのないよう、国として早期に具体的な基準を示すことが今の状況を落ち着かせる一番の方法ではないか」と指摘しました。また「手間や印刷費を含めたコストの問題などを考えると、おのずとあまり選択肢はないのではないか。その中で、区市町村がそれぞれのニーズに合った形で選択されるものと理解している」と述べました。

<東京23区 各区の対応は…>

政府は所得制限を設けた上で18歳以下に10万円相当の給付を決定しています。給付の方法は原則として5万円を現金で、残りはクーポンでの給付としています。これについて岸田総理大臣は「地域の実情に応じて」全額現金での給付も可能としています。ただし基準が曖昧だと混乱が広がり、9日には木原誠二官房副長官が現金給付に切り替えられる基準を補正予算の成立後に公表する方針を明らかにしました。補正予算の成立にはまだ時間がかかりそうなため、全国各地で「全額現金での給付」を決める自治体も出てきています。

国が方針を明らかにしない中、自治体ごとに対応が分かれています。10万円相当の給付について小池知事は「各自治体の判断で」としましたが、TOKYO MXは東京23区の方針を取材しました。残りの5万円について、決定ではないものの「不利益がなければ現金給付の方針」と決めているのが足立区です。そして、国が示しているルールの下で「クーポンの準備を進めている」と回答したのが杉並区です。最も多かったのが「現在検討中」で、国の基準を待って決定したいという回答でした。

いくつかの区の担当者は「できることなら現金でやりたい」と、現金でできる理由付けを考えていると話しています。国が方針を決めないと動けないというのが本音です。「クーポンの準備を進めている」と回答した杉並区も「現在示されている方針がクーポンなので、区民にいち早く届けるために準備をしている」というものの、杉並区の担当者は本音として「クーポンの印刷や使える店舗の選定、業務委託する業者の入札など、とにかくクーポンは現場の作業が大変」として「現金なら現場はかなり楽になる」と話しています。"どれぐらい楽になるか”というと、最初に振り込まれる「5」万円の入力する数字を「10」に変更するだけですが、現実には予算の問題などでできないようです。なかなか踏み切れないのには別の理由もあるようで、港区の担当者も「本音は一括10万円にしたい」としつつ「区が立て替え払いした場合、国が補償してくれるか分からない」と、国の方針に従わないことでペナルティーのようなことがないか心配しているということです。

改めて「現金」と「印刷された紙のクーポン」それぞれの給付方法の長所と短所をまとめました。「現金」の場合、現場の負担が少なく、住民からの要望が多い、給付が速やかに行える点などが長所です。その一方で「貯蓄に回るのでは」という指摘もあります。一方で「印刷された紙のクーポン」の場合、貯蓄には使えない一方で、事業経費が全体で967億円かかるという試算があることや現場への負担が大きいこと、給付スピードが遅くなることなどが課題とされています。特に23区の担当者の声で印象的だったのが「住民からの要望として『クーポンだと使い勝手が悪く、現金での給付を望む』という電話やメールは毎日来るが『クーポンにしてほしい』という声は1件もない」という意見です。クーポンは他にも「給付のスピードが遅く、いつ渡せるかは不透明」という声が上がっています。こうした中、小池知事も指摘した"第3の案”も浮上しています。それが「電子クーポンなどポイント」での付与です。印刷が不要なので紙のクーポンよりも作業は楽ですが、結局は新しいシステムを作らねばならず、現場の負担が大きいことに変わりはありません。また、通販での利用を認めると地域振興にならないという指摘もあります。

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