キアロスタミ監督が導く素人役者の名演技「本当に魔法のよう」 「現代アートハウス入門」が初日

日本ではミニシアターと呼称されるアートハウスを彩った名作を7日間上映し、講師として映画作家らが各作品の魅力を解説する連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」が11日、東京・渋谷のユーロスペースなど、全国24劇場で初日を迎えた。イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督「クローズ・アップ」(1990年)の上映後、映画監督の深田晃司氏が登壇した。

映画監督マフマルバフだと身分を偽り、詐欺で逮捕された青年サブジアンの実話をもとに、再現映像とドキュメンタリーを交差させて描かれた異色作。「友だちのうちはどこ? 」(1987)、「そして人生はつづく」(1992)、「桜桃の味」(1997)などの代表作と同様、素人役者による好演技が特色に挙がる。

深田氏は「一般の人の演技が自然で素晴らしいことに驚愕(きょうがく)します。本当に魔法のよう」と感想を語った。映画と演劇における演技の差異、ドキュメンタリー調の映像の裏にある演出などを解説。「脚本と構成がうまい。自然主義的にみえて非常につくり込んでいる」と、素人役者の好演を導くキアロスタミ監督の魅力を語った。

同講座は今年1月に続く第2弾。前回から6館増え、全国24劇場をオンラインでつないで同時開催される。上映後の講座は約1時間で、全国の観客から寄せられた質問への回答などを行う。開催は18日まで。作品と講師は次の通り。詳細は公式サイトまで。

◆12月11日「クローズ・アップ」(1990年イラン、監督:アッバス・キアロスタミ、イラン)、講師:深田晃司(映画監督)◆12月12日「マッチ工場の少女」(1990年フィンランド、監督:アキ・カウリスマキ)、講師:岨手由貴子(映画監督)×大江崇允(映画作家/脚本家)◆12月13日「鳥の歌」(1995年ボリビア、監督:ホルヘ・サンヒネス)、講師:小田香(映画作家)×太田昌国(シネマテーク・インディアス)◆12月14日「セールスマン」(1969年米国、監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、シャーロット・ズワーリン)、講師:想田和弘(映画作家)◆12月15日「ビリディアナ」(1961年メキシコ・スペイン、監督:ルイス・ブニュエル)、講師:広瀬奈々子(映画監督)×稲川方人(詩人/編集者)◆12月16日「ある夏の記録」(1961年フランス、監督:ジャン・ルーシュ、エドガール・モラン)、講師:小森はるか(映像作家)×月永理絵(エディター/ライター)◆12月17日「イタリア旅行」(1954年イタリア・フランス、監督:ロベルト・ロッセリーニ)、講師:三宅唱(映画監督)×大川景子(映画編集)

「クローズ・アップ」(C) 1990 Farabi Cinema

(よろず~ニュース編集部)

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