「このままでは資料が消える」 長崎で公害フォーラム 被爆者運動の経過など保存を

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被爆者の故渡辺千恵子さんの資料の保存事例を基に、原爆関連資料の保存や活用に向けた課題を語る木永准教授=長崎市文教町、長崎大文教キャンパス

 全国の公害の記憶継承や資料保存について、研究者らが意見を交わす「公害資料館連携フォーラム」が11日、長崎市内で始まった。長崎原爆やカネミ油症の被害地である本県開催は初めて。資料保存に関する分科会で、長崎総合科学大の木永勝也准教授(日本近現代史)は、被爆者の高齢化が進む中、被爆者運動の経過や個人の生きざまなどを伝える遺品を積極的に受け入れる公的施設がなく、「このままでは資料が消える」と警鐘を鳴らした。
 同大の長崎平和文化研究所は2016年、関係者を通じ、長崎の代表的被爆者で車いすから核兵器廃絶を訴えた故渡辺千恵子さんがのこした資料約4千点を引き受けた。被爆者団体のパンフレットや反核集会で読み上げた原稿など多岐にわたり、木永氏は「被爆者組織の形成や運動の経過が分かり貴重」と説明する。
 一方で木永氏によると、長崎原爆資料館などは主に原爆の実相を伝える資料を受け入れ、「戦後を生きた被爆者に関する資料の引受先はない」。さらに今は被爆者団体が存続し関係資料を引き取ることもできるが、全国には解散する団体も出ており、木永氏は「被爆者がのこした資料の保存や展示を担う公的な資料館がつくれないか」と提言した。
 カネミ油症の分科会では五島、諫早両市の油症患者と五島市職員が健康被害や経過を報告。同市の患者、岩村定子さん(72)は「一番怖いのは次世代まで(ダイオキシン類などの)影響があること」と訴えた。
 参加者は複数のグループに分かれ意見交換。油症2世と被爆2世が言葉を交わす場面もあり、「(双方の次世代問題は)未認定、援護がないこと、科学的知見が壁になっていることなど置かれている状況が同じ」「2世にしかできないこともある」などと語り合った。
 フォーラムは公害の実相を伝える資料館などでつくる「公害資料館ネットワーク」が13年以降、全国の被害地などで開催し8回目。11日は長崎大文教キャンパスで基調講演と分科会があり、オンラインを含め計約130人が参加した。長崎大会は12日まで開かれる。