海に面した京都の小さな港町 「伊根町」で過ごす静寂に癒される旅

みなさんは京都、というと、どういうイメージを持ちますか?

ほとんどの方が、お寺や神社が沢山あり、着物を着た女性達が行き交い、道が縦横に整備された日本文化の発祥地としての京都を連想するのではないでしょうか。しかし、それは広い京都府の中でも、京都市など一部の地域のイメージです。

京都府内には、舞鶴などまだまだ見どころがたくさんあります。日本人にとっては知られた地名も多いのですが、訪日観光客の方にはまだまだ知られていない穴場です。

今回は、そのなかでも京都の北の端、丹後半島に位置する小さな港町「伊根(いね)」をご紹介します。

伊根町とは

伊根は京都府の日本海側、丹後半島(たんごはんとう)の東側に位置する漁港町です。

美しい曲線を描く伊根湾に沿って立ち並ぶ「舟屋(ふなや)」で有名な場所で、日本の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。

もともと舟屋は、名前のとおり、漁をするための小舟を収納するスペースを家の1Fにつくった住居のスタイルのことをいいます。家々は海に面しているので、そこからはとても美しい景色が望めるのです。

最近は、漁業をしている方が、その住居の2Fを宿として運営しています。

大阪から伊根へ

今回伊根を訪れたのは7月の終わりごろ。忙しい毎日から逃避しようと、伊根を休暇の地に選びました。

大阪の阪急梅田駅から丹後海陸交通の高速バスにのり、天橋立駅(あまのはしだて)で路線バスに乗り換えて伊根へ。合計3〜4時間の道のりです。京都市内からも高速バスが出ています。

朝9時に出発し、お昼過ぎにようやく伊根に到着。舟屋の宿に向かいます。

舟屋の宿

木造の古い舟屋の階段をのぼり、荷物を置いたらほっとひと息。

カーテンを開けると目の前にはエメラルドグリーンの伊根湾が広がっています。わたしたちは、カモメが飛び交う光景をしばらくぼうっと眺めるのでした。

伊根までいったら、1泊することをオススメします。レンタカーがあるなら夜でも移動が可能ですが、公共交通機関で移動する旅行者には、早い時間に京都市や大阪行きのバスが終わってしまうのでちょっと不便です。

そして、せっかく伊根まできたら、ぜひ舟屋に泊まってください。部屋のすぐ下は海、キラキラした反射光をぼーっと眺めるだけで心が洗われていくようです。ゆっくり遊覧船にのったり、釣りをしたりと、アクティビティも人気です。

舟屋の宿のお値段は様々で5,000円から20,000円くらい。お部屋の様子もさまざまです。素泊まりのほか、1泊2食付きの宿泊プランも用意されています。舟屋の宿を探すには、伊根の観光協会のサイトなどを見てくださいね。

伊根をぐるっとサイクリング

散策にはバス停「伊根」近くに置いてある、無料の貸自転車を使ったサイクリングが楽で便利です。

伊根湾の景色を楽しめ、地元の食材を使ったレストランなどがある「道の駅 舟屋の里」は高台にあります。自転車に乗り、時には押しながら上ります。徒歩の方には、なかなかハードですが、階段もあるので、ぜひがんばって登ってください。

晴れの日の見晴らしは、最高です。

「道の駅 舟屋の里」には新鮮な魚介や地元の食材を使った日本食レストラン「油屋(あぶらや)」も入っています。ランチ時にはとても並んでいました。

女性杜氏のいる酒蔵「向井酒造」

また、伊根には、「向井酒造」という酒蔵があります。

蔵の裏はすぐ海となっており、こんなに海に近い酒蔵は珍しいです。この酒蔵は、女性の杜氏(とうじ:日本酒造りの最高責任者)の方がいるということでも、名前が知られています。

わたしたちは時間がなくて酒蔵は見に行けませんでしたが、 数日前に予約すれば見学ができます。

訪問を希望するかたは、ウェブサイトから、メールで連絡をしてくださいね。女性杜氏の久仁子さんの旦那様(こちらも杜氏の方)は英語がわかるので、英語でのメール対応も可能です。

わたしたちは直売所で向井酒造の「京の春」というお酒を買って夕食時にいただきました。甘みの強い、芳醇な味です。

向井酒造は、伊根の名を冠した「伊根満開」という甘みの強い日本酒を作っています。こちらは古代米を使っているんですって。こちらも要チェックです。

夕食になまこ丼を

夕方は海辺でぶらぶら過ごし、さて夕食です。

伊根には実は夜開いているレストランが1,2軒しかありません。夜ご飯をリーズナブルに食べるなら、こちら「なぎさ」がオススメです。

「なぎさ」のオーナーは伊根に惚れ込んで移住されてきた方。英語が堪能で、他言語も少し理解されますので、伊根周辺の情報をいろいろ教えてくれるはずです。伊根のFacebookページも運営されています。

わたしたちはこちらの名物・干しなまこ丼をいただきました。

う〜ん、初めての食感…。プルプルとした食感と中華風の味がおいしかったです。

「なぎさ」のメニューは、種類こそけして多くはないけれど、ここでしか食べられないものばかり。伊根に行ったらここもぜひ訪問してみてください。

寺社仏閣のイメージとはまた違う、海の京都・伊根町はいかがでしたか?

人の多い市街地を離れて、自然と調和した生活をする場所を巡るのもまた面白いですよ。自然の緑で目を癒し、潮風を感じる時間を楽しみ、地元の方と笑顔で挨拶すると、また違う日本が見えてくるものです。

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