【識者談話】酒税軽減措置、企業努力で価格競争を 獺口浩一氏(琉球大学教授)

 2022年度の与党税制大綱で、酒税軽減措置の段階的廃止が決まった。沖縄では復帰特別措置法に基づき、泡盛には35%、オリオンビールなどその他酒類には20%の酒税軽減が適用されてきた。地場産業の保護や消費者への価格の恩恵が指摘される一方、税負担の公平性や特定産業への優遇措置として延長を疑問視する声も年々強くなっていた。日本復帰以来の酒税軽減が与えた影響や10年後までの廃止に向けた「出口戦略」について、琉球大の獺口浩一教授(地方財政論)に聞いた。

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 復帰特別措置法による酒税の軽減措置は、復帰後の産業の保護、振興の意味があった。県民の所得水準が低い中で、泡盛やビールが安くなることで消費行動を促す効果はあったと思う。

 50年間軽減措置が続いているが、酒造メーカーの収益性は高まっておらず、県外への販路拡大もうまくいっているとは言えない。産業振興の後押しにつながっていない。

 軽減措置ではなく、企業努力で価格競争をするのが本来の姿だ。企業努力と切り離して価格を抑えられることは、企業にとっては不幸なことだ。県外のメーカーは計り知れないほどの研究開発を続けている。

 県内企業ももちろん努力していると思うが、真の意味で競争環境に置かれないことが成長の足かせになる部分があったはずだ。コストを徹底して管理し競争下で価格を決めていく企業と、例えば海外展開などで同じ土俵に立った時に、競争力の違いとして表れる。

 「競争力がついていないので軽減措置の延長が必要」という意見もあるが、逆に措置が長く続いたことで競争力がつかなかったと言える。

 「後発の利益」と言うように、後からキャッチアップする方が成長は早い。県外の酒造メーカーの持っているノウハウや技術を吸収することで、段階的な削減の間に県外メーカーに追いつける可能性は十分ある。廃止までの期間に、本当に努力して経営体力をつけることが重要だ。小規模な泡盛酒造所なら、酒造部門以外は合併してコストの削減を図るなど、企業経営の在り方についての研究も必要になるだろう。

 もともと、酒税はたばこ税などと同様に、課税によって消費が過剰にならないようにする禁止課税という意味もある。その観点からすると、産業振興という目的があるにしても、酒税の軽減というのは少し問題があるようにも思う。

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