アート・ブレイキー初来日公演の未発表ライヴ盤を語る!

【コラム】日出ずる国で失われた秘宝を発見する。再発プロデューサーが語るアート・ブレイキー初来日公演の未発表ライヴ盤『ファースト・フライト・トゥ・トーキョー』。

文:ゼヴ・フェルドマン
訳:川嶋文丸

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音源が行方不明になった日本ツアーに関するアート・ブレイキーのレコーディングについて、私が初めて聞いたのは2017年のことだった。私が耳にしたのは、1961年1月、初の日本ツアーの途次にメッセンジャーズが行った未発表のレコーディングを根本隆一郎という男性が所持している、という話だった。

初めて日本にツアーした著名なアメリカのジャズ・ミュージシャンが誰だったのかは正確には分からないが、ブレイキーがそのひとりだったこと、そして彼の1961年の日本ツアーが、その後の何世代にもわたるアメリカのジャズ・ミュージシャン訪日への道を切り開く役割を果たしたこと、それによって彼らがこの日出ずる国で人気を博すための足場を固めたことは明らかだ。

それだけでなく、アート・ブレイキーの1961年の日本ツアーは第一線で活躍するあらゆる世代の日本のジャズ・ミュージシャンに大きな影響を与えた。初の日本ツアーの際に録音されたアート・ブレイキーが演奏する未知のテープが存在することを聞いて、私の心臓は胸から飛び出そうになった。

それは1961年1月13日と14日の2日間にわたって東京の日比谷公会堂で行われたアート・ブレイキーのコンサートを録音したものだった。私たちの手元には5本の1/4インチ・テープ・リールが届いた。そこには不完全な演奏の曲がいくつか含まれていた。

私と共同プロデューサーのデヴィッド・ワイスはそれらをアルバムには収録しないことにした。不完全曲を外すという方針、そしてテープに記された番号が実際に演奏された順番どおりかどうか不確かだという実状を考慮し、私たちはリスナーが最高の音楽体験を得られることを念頭に置いて曲順を決めた。

これが私にとっていかに驚嘆すべき発見だったかということについては、どれだけ言葉を尽くしても言い表すことができない。ほぼ60年間にわたる埋没を経て地表に出た、ジャズ史上最高のグループのひとつによる未発表音源は、発掘を手がけるジャズ・プロデューサーにとって夢のような宝物だ。

<動画:Art Blakey and the Jazz Messengers - Moanin' (Live at Hibiya Public Hall, Tokyo, Japan 1/14/61)

2018年、ブルーノートに出向いたとき、私がドン・ウォズ、ジャスティン・セルツァーに真っ先に話した企画のひとつがこのレコーディングだった。ブルーノートの全体が興奮に包まれたことは明らかだった。ブレイキー・ファミリー、ウェイン・ショーター、レコーディングに参加したその他のミュージシャンの家族からの支援により、この歴史上意義深いレコーディングに初めて光を当てることができて、ありがたく思っている。

これは私がブルーノートのために手がける2作目のアート・ブレイキーのプロジェクトだが(1作目は1959年の未発表スタジオ・レコーディング『ジャスト・クーリン』であり、2020年に発売された)、さまざまな点で、念入りな工程、豪華なパッケージにより発売されるこのアルバムこそ、私にとって、ほんとうの意味でアート・ブレイキーに敬意を表する最初の機会になったのではないかと感じる。

このセットのディスクはバーニー・グランドマンにより、バーニー・グランドマン・マスタリングの真空管再生機を含む特注アナログ・マスタリング・システムを使ってマスタリングされた。

<動画:Art Blakey and The Jazz Messengers - A Night In Tunisia (Live at Hibiya Public Hall, Tokyo, 1/14/61)

このブックレットのために、私たちはアート・ブレイキーを知っている人や1961年の日本ツアーで彼と接触があった人など、多くの方々に協力を仰いだ。彼らがこの伝説に名高い、大きな影響を与えたジャズ・ドラマー&バンド・リーダーについての思い出を綴ってくれたことに対し、私たちは心から感謝したい。

ブックレットには、日本のジャズを代表するサックス奏者の渡辺貞夫、音楽評論家の湯川れい子から、ジャズ・メッセンジャーズの卒業生であるウェイン・ショーターやドナルド・ハリソン、ジャズ・ドラマーでありブレイキーの弟子だったシンディ・ブラックマン・サンタナ、熟練ジャズ・ミュージシャンのルー・ドナルドソン、ビリー・ハート、ルイ・ヘイズまで、幅広い人々が登場する。私たちはまたテープの来歴について根本隆一郎に執筆してもらった。最後になってしまったが、アート・ブレイキーの子息であるタカシの回想も収められていることを特記しておきたい。

リスナーのみなさんが、私たちと同様、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが1961年に行った活気あふれる初の日本ツアーへの、時間をさかのぼる旅を満喫されることを願っている。

<動画:The Story Behind Art Blakey & The Jazz Messengers “First Flight To Tokyo: The Lost 1961 Recordings”

■リリース情報

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
『ファースト・フライト・トゥ・トーキョー』
NOW ON SALE
SHM-CD 2枚組:UCCQ-1145/6 \3,520 (tax in)
SA-CD~SHM仕様~:UCGQ-9028 \5,280 (tax in)

視聴・購入などはこちら→ArtBlakey.lnk.to/FirstFlighttoTokyo

Disc 1
1. ナウズ・ザ・タイム
2. モーニン
3. ブルース・マーチ
4. ザ・テーマ

Disc 2
1. ダット・デア
2. ラウンド・アバウト・ミッドナイト
3. ナウズ・ザ・タイム
4. チュニジアの夜
5. ザ・テーマ

※SA-CD~SHM仕様~は1ディスクに全曲収録

アート・ブレイキー(ds)
リー・モーガン(tp)
ウェイン・ショーター(ts)
ボビー・ティモンズ(p)
ジミー・メリット(b)
★1961年1月14日、東京、日比谷公会堂にてライヴ録音

Co-produced for Reissue by Zev Feldman & David Weiss

© ユニバーサル ミュージック合同会社