2021年F1第22戦アブダビGP決勝当日の午前11時45分、パドックの裏、ヤス・マリーナを望むベンチの前に、ホンダのスタッフたちが集合した。毎年、シーズン最終戦でホンダはスタッフ全員の集合写真を撮影していた。その撮影会も今年が最後。笑顔のなかにも、どこか寂しさを感じながら、時は刻々と流れていった。
だが、レース後にメルセデスがセーフティーカー後の再スタートに進め方に関して抗議したため、レッドブル側は静けさを保っていた。
午後11時3分、スチュワードがメルセデスの抗議をすべて却下。するとレッドブル・ホンダのスタッフがスタート・フィニッシュラインに集結し、優勝を祝う。
ただし、メルセデスにはアブダビGPのスチュワードの裁定に関して国際控訴裁判所に控訴する権利がある。そのため、メルセデスのスタッフはみな沈黙を保ったまま、サーキットを後にしていた。そのなかでハミルトンのレースエンジニアを務める”ボノ”ことピーター・ボニントンだけが、こちらにサムアップしていた。ボニントンは第3期のホンダ時代にホンダのスタッフと共に仕事をした経験がある。レッドブルのチャンピオンには異議はあるが、ホンダが勝利でラストレースを飾ったことを祝っていたのかもしれない。