侍ジャパンでは“投手兼広報” 山崎康晃が語るSNS発信の効用とリスクヘッジ

DeNA・山崎康晃【写真:荒川祐史】

侍ジャパンの絶対的クローザーが見せる抜群の“取材力”

DeNAの山崎康晃投手は、金メダル獲得に貢献した今夏の東京五輪を含め、プロ入り後に5つの主要国際大会に侍ジャパンの一員として出場し、計15試合無失点と圧倒的な強さを誇る。一方で、侍ジャパンの投手でありながら、ファンに選手たちの裏側を伝えてくれる一面を持ち、ロッカールームや移動のバス、飛行機内などから自身のSNSを通じ、積極的に発信してきた。その胸の内を聞いた。

東京五輪期間中も山崎のツイッターには日本代表メンバーの、グラウンド上とはひと味違う表情が溢れ、野球ファンの間で高い評判を呼んでいた。こうした抜群の“取材力”は、ルーキーイヤーの2015年に参加した「第1回WBSCプレミア12」をはじめ、2019年の「第2回プレミア12」でも発揮された。「通常チームにいる時も、ツイッターは活発に更新しています。選手同士ならではの表情を引き出せたらと思っています」とうなずく。

東京五輪では2試合に登板し無失点に抑えた一方で、「名前の通った先輩もいらっしゃる中、写真を撮っていいのかなと迷う瞬間もありましたが、思い切って踏み込んで、いろんな素顔、ファンの皆さんが楽しみにしている笑顔、普段は見られない一面を紹介したいと思っていました」と使命感に燃えた。山崎自身もSNSを使った発信を、同僚の意外な一面に触れ、親交を深めるきっかけにしている。

「使い方ひとつで素晴らしいものになるし“凶器”にもなる」

一方、プロ野球選手のSNS発信は、グラウンド上での結果が悪かった時などには、誹謗中傷・罵詈雑言を浴びるケースも多い。「使い方ひとつで素晴らしいものにもなるし、“凶器”にもなる。発信するにあたってはそういうリスクはありますよね。ただ、リスクヘッジをかけることで、最低限防げることはあると思っています」と山崎は言う。

「短い字数ですが、誤字脱字はもちろん、言葉選び、写真選びに気を付けているつもりです。こうコメントすれば、こういうリプライが来るだろうなと、想像しながらツイートしています。写真にも、写ってはいけない物が写っていないか入念にチェックします」と対策を心掛けている。

それでも心無いメッセージが舞い込むことはある。「そこにはあまり気持ちを入れ過ぎないようにしています」。多少のリスクがあっても発信を続けるのは、「喜んでくれる人の方が多いと感じている。大事にしたい」との思いがあるからだ。

トップチームと同じユニホームで戦うアンダー世代へ「僕はリスペクトします」

また、山崎が常連となっている侍ジャパンはいまや、トップチームのみならず、社会人代表、大学代表から、U-18代表、U-15代表、U-12代表、女子代表まで組織化され、同じユニホームを着て戦っている。「小学生の時から侍のユニホームを着られるって、素晴らしいですよね。小学生であっても日本を背負って戦う以上、プレッシャーがあるはずなので、僕はリスペクトしますし、負けていられないとも思います」とアンダー世代に共感を抱く。

「日本の野球のランキング(WBSCランキング)は最近ずっと1位ですが、世界には凄い選手がゴロゴロいる。そういう選手と戦って初めて得られる自信がある。それが侍なのかなと思います」と笑みを浮かべる。

山崎康晃は相手が強大になるほど、しびれるようなピンチに追い込まれるほど、なおさら輝きを増す投手だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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