杏里「キャッツ・アイ」歌謡曲とアニメの融合、18秒のミステリアスなイントロ  1983年8月5日 杏里のシングル「CAT'S EYE」がリリース

ヒット曲 “イントロ秒数徹底調査” 1983年のシングルTOP100篇

1983年シングルTOP100のイントロ秒数は?

リマインダーで取り上げている1978年~1991年までの14年分を、1年ごとに年間シングルランキングTOP100のイントロ平均秒数を調査し、その結果を紹介していく連載企画。

第8回の今回は、“1983年” を調査します。その年間ランキングTOP10のラインナップと調査結果がこちら。

1位 さざんかの宿 / 大川栄策(26秒)
2位 矢切の渡し / 細川たかし(29秒)
3位 めだかの兄妹 / わらべ(16秒)
4位 探偵物語 / 薬師丸ひろ子(18秒)
5位 氷雨 / 佳山明生(25秒)
6位 CAT’S EYE / 杏里(18秒)
7位 ガラスの林檎 / 松田聖子(20秒)
8位 セカンド・ラブ / 中森明菜(16秒)
9位 フラッシュダンス / アイリーン・キャラ(10秒)
10位 め組のひと / ラッツ&スター(11秒) ※(カッコ)の数字はイントロの秒数

調査方法は、年間シングルランキングTOP100にランクインした曲のイントロ秒数を、0秒、1~2秒、3~10秒、11~20秒、21~30秒、31~40秒、40秒以上… の7つの長さに分けて集計していきます。1983年の結果をグラフにすると、こうなります!

平均秒数は17.8秒。前年の1982年の平均が16.2秒、1年前と比べると、1.6秒長くなったという結果でした。イントロ「0秒」の曲の合計が、9曲から2曲と激減。前年、若者人気を一気に獲得した、不良スタイルで疾走感のあるロックンロールを聴かせてくれるミュージシャンのブームが一段落し、変わりに演歌勢の復権が目立つ年になりました、年間ランキングTOP10にも演歌が3曲ランクイン。

1位 さざんかの宿 / 大川栄策(26秒)
2位 矢切の渡し / 細川たかし(29秒)
5位 氷雨 / 佳山明生(25秒)

5位の「氷雨」の発売日は1977年。発売から有線放送でのリクエストが途切れることはなくロングヒットを続け、1982年10月には箱崎晋一郎、12月には日野美歌によるカバーも発売されたことも話題となり、1983年に人気が爆発。発売から6年経ってブレイクした「氷雨」のヒットも含め、3曲ともイントロ秒数は20秒越え。地道な演歌ヒットソングが結果を出したことは、イントロ秒数が長くなった要因の一つと考えられます。

大谷和夫がアレンジ、クールでミステリアスなサウンド

今回取り上げるのは、年間シングルチャート6位の、杏里「CAT’S EYE(キャッツ・アイ)」。『週刊少年ジャンプ』で1981年から連載されていた北条司の漫画をアニメ化した同名タイトルのオープニングテーマに起用され、1983年8月5日にリリースされた曲です。

「キャッツ・アイ」の作詞を手掛けたのは、三浦徳子、作曲は、小田裕一郎。このコンビといえば松田聖子の『青い珊瑚礁』を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。1980年7月1日発売の『青い珊瑚礁』の後、このコンビは、日本テレビで1981年10月から放送されたアニメ『六神合体ゴッドマーズ』のオープニングテーマ「宇宙の王者! ゴッドマーズ」を手掛けています。

ここでの起用が、同局で2年後に放送されるアニメ『キャッツ♡アイ』と繋がっていきます。そして「キャッツ・アイ」をここまでのヒットに引き上げた一番の立役者は、編曲を手掛けた大谷和夫です。

喫茶店を営む美人三姉妹が、怪盗集団という正体を隠しながら、オシャレに任務を遂行していく物語をスタイリッシュな挿し画と作風で描いたアニメの雰囲気を、シンセサイザーのクールなシティポップサウンドで彩り、歌謡曲としてのクオリティはもちろん、アニメソングのオープニングとしても、イントロからアニメ作品に自然に入り込める素晴らしいアレンジとして聴かせてくれます。

まったくアニメを見たことがなかった杏里は、この曲のオファーが来たとき、少し戸惑ったそうですが、曲のよさに魅かれて快諾。良い音楽を届けたいと思うミュージシャンの素直な気持ちを信じた結果、オリコンシングルチャートで5週連続1位を獲得、売上枚数82万枚のヒットを記録。

今もたくさんのリスナーに愛される、杏里「キャッツ・アイ」

杏里は「キャッツ・アイ」のヒットをこう振り返ります。

「あのとき「キャッツ・アイ」をレコーディングして、ほんとうによかった。ずっと歌い続けてきて、今もたくさんのリスナーに愛されている楽曲になりました。作品の力をいまなお感じています」

「キャッツ・アイ」のヒット以降、歌謡曲フィールドのアーティストがアニメソングを歌う流れが一気に広がっていき、このコラムを書いている2021年も、その流れは変わらず続いています。

「あのJ-POPシンガーが遂にアニソンを歌う!」と言ったフィールドに拘り過ぎているニュースやコメントを観ることも少なくないですが、楽曲としてはもちろん、アニメタイアップの機能として高いクオリティを感じられる作品は、よりたくさんの人に届く時代になっていると思います。

発売から38年経った今も、ミステリアスな気持ちにしてくれる「キャッツ・アイ」のイントロを聴きながら、こんな素晴らしい楽曲をもっとたくさん知りたい! カッコいい新曲が配信されていないかな? と「目を光らせながら」今日も私は、音楽ライフを楽しんでいます。

カタリベ: 藤田太郎

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