西海2女性ストーカー殺害10年 遺族が心境明かす「被害者支援 適切な運用を」

事件から10年を前に男性遺族が報道機関に寄せた文書

 長崎県西海市で2011年、ストーカー被害を訴えていた女性の母と祖母が殺害された事件から16日で10年となるのを前に、妻と母を亡くした男性遺族(68)が報道機関に対し、現在の心境を明かした。県内全自治体が犯罪被害者支援条例を制定したことを評価しつつ「全ての窓口で適切に運用されないと支援は先に進まない。そのために担当部署の人材育成を」と求めた。
 報道機関の質問に代理人弁護士を通じて13日、書面で回答した。
 男性は、事件についてあまり知らない警察関係者もいるとして「事件が風化してきているのだなと感じることもある」と吐露。死刑が確定した筒井郷太死刑囚(37)の刑の執行について、法務省に通知希望をしており「早く執行してもらわないと自分を抑え続けることができなくなる」と峻烈(しゅんれつ)な処罰感情をつづった。
 5年前に報道機関に寄せた文書では、県内に犯罪被害者支援条例を制定した自治体がないことに失望感を示していた。その後18年4月の佐世保市を皮切りに県と県内全21市町が今年10月までに条例を施行。男性は被害者家族の声に耳を傾け、行政側に伝えた警察関係者に感謝の意を示した。男女間のトラブルに早い段階から積極的に介入し、被害の未然防止に努めていることも評価した。
 事件後も全国でストーカー犯罪は後を絶たず、年間2万件を超える相談が警察に寄せられている。男性は「刑に処しただけでは真の更生とはいえない」として5年前に始まった加害者に治療を働き掛ける警察の取り組みに期待を示した。加害者に対しては、被害者やその家族だけでなく、加害者家族にも大きな苦しみを与える過ちに気付いてほしいと言及。更生治療について「長期間、継続した働き掛け、支援体制が必要」と充実を求めた。


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