【軍艦島ツアー】上陸チャンスはどれくらい!?条件・行き方・見どころを伝授

2015年に世界文化遺産に登録されたことも手伝って、ますます人気の観光スポット「軍艦島」。炭坑によって繁栄した街が廃墟と化した様子が魅力の島ですが、訪れるには各船会社が実施する「軍艦島上陸ツアー」に申し込む必要があります。とはいえ、天候などによって必ず上陸できるとは限らないのです。そこで軍艦島までの行き方や上陸の条件、見どころなど、訪れる前にチェックしておきたいことを徹底レポートします。

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島の名前は「軍艦島」ではないって知ってる?

現在は軍艦島という名前で親しまれていますが、実は正式名称は「端島(はしま)」といいます。軍艦「土佐」のシルエットに似ているということから、「軍艦島」という名前で呼ばれるようになりました。2015年(平成27年)7月に世界文化遺産に登録されてから、その名前はさらに有名になりましたね。

軍艦島の歴史とは?いつまで人が住んでいた?

三菱鉱業(現 三菱マテリアル)の炭坑として多くの人が働いており、最盛期だった1960年(昭和35年)頃には約5,300人もの人々が住んでいました。その人口密度は、東京都の9倍にものぼるほどで、当時としては世界一でした。島内には小学校や病院はもちろん、映画館やパチンコ店などの娯楽施設もそろっていて、生活には困らない環境だったそう。当時は島に住んでいる人しか入島できず、セキュリティ面も万全。

炭坑で働く人たちは危険と隣り合わせの労働だったこともあり、現在の日本円の価値でいうと初任給で50~60万円程度の収入で裕福な暮らしを送っていました。当時まだあまり普及していなかった「三種の神器」といわれる最先端の家電であるテレビ、冷蔵庫、洗濯機が、軍艦島で暮らす人々の家庭にはそろっていたそうです。

日本の近代化を支えた端島炭坑ですが、主要エネルギーが石炭から石油へと移行したことから衰退の道を辿ります。1974年(昭和49年)1月15日に閉山し、この年の4月20日に全ての住民が島から離れ、島は無人となりました。

軍艦島への行き方

軍艦島は長崎県長崎市にある島です。東京・羽田空港から長崎空港までは飛行機で2時間15分程度かかります。長崎空港から長崎駅前まではバスで約45分(片道運賃1,000円)。軍艦島行きの船は常盤ターミナル発、長崎港ターミナル発の2つがあります。公共交通機関を利用し、常盤ターミナル・長崎港ターミナルへ行くには、路面電車とバスのいずれかになります。

<長崎駅→常盤ターミナルへの行き方>

●路面電車の場合

路面電車「崇福寺(1番系統)」に乗車し、「新地中華街」で「石橋(5番系統)」に乗り換え、「大浦海岸通り」で下車

●バスの場合

長崎バス「グラバー園入口」または「メディカルセンター」バス停で下車

<長崎駅→長崎港ターミナルへの行き方>

●徒歩の場合

約10分

●路面電車の場合

路面電車「崇福寺(1番系統)」に乗車し、「大波止」で下車路面電車の時刻表はこちら

路面電車の運賃は、大人(中学生以上)140円・小児(小学生)70円、交通系ICカード使用可能(2021年11月現在)

軍艦島に行くには?上陸条件あり

先にも述べましたが、軍艦島に上陸したい場合には、事前に予約する必要があります。海上が荒れている日はもちろん、風速5mを超える場合、波の高さが50㎝を超える場合などには出航や上陸ができません。

この日は朝から天気が良い日でしたが、出航前になぜか風が強く……無事に上陸できるのかひやひやしました。船が出航しても上陸できないことがあります。上陸できない場合には、周遊のみとなり高島に上陸へと変更されることも。ちなみに、筆者が参加したのは常盤ターミナル発、シーマン商会のツアーです。上陸と周遊ツアーで3,900円、300円割引チケット(公式サイトからダウンロード可)を使用すれば3,600円になります。上陸する場合には、ツアー料金に加え、船内にて施設入島料310円の支払いが必要です。ツアー料金は会社により異なりますので、事前に公式サイトなどで確認してから申し込んでくださいね。

シーマン商会を含め、軍艦島ツアーを実施している会社は5社あります。

シーマン商会

軍艦島コンシェルジュ

やまさ海運

高島海上交通

第七ゑびす丸

当然ですが、船に乗って行くことになるので、乗り物酔いしやすい人は酔い止め薬を事前に用意しておくと安心です。また、日傘、雨傘の使用は安全上の配慮から禁止されていますので、夏場は日傘以外の日除け対策(帽子など)、雨天時はレインコートを用意しておきましょう。特に夏場は、軍艦島に上陸すると日除けがないため対策は万全に。水分補給用の飲み物も必要です。

上陸できるのか!?上陸可否は直前にわかる

軍艦島へ向けて無事に出航。船内では軍艦島についての紹介映像が流れ、上陸に向けて気持ちも高揚します。軍艦島上陸まで、あともう少し! 出航したからといって、必ずしも上陸できるわけではないのですが……まずは第一関門突破というところでしょうか。船が軍艦島に到着し、上陸の直前に許可が下りれば無事上陸となるわけです。意外とハードルが高いんですね。

軍艦島へ向かう途中、長崎湾に浮かぶ「女神大橋」が見えてきます。長崎市南部・西部を最短距離で結ぶ橋で、夜間のライトアップも美しいので、ぜひ夜景も楽しんでほしいスポットです。

軍艦島に近づくと、船で島を一周するので、海上から近い距離で島の全貌を眺めることができます。島を一周するタイミングで船内アナウンスが流れ、眺めの良い船上へ上ることが可能に。ガイドさんの説明を聞きながら、その迫力に歓声を上げたり、写真を撮ったりと忙しいです。ガイドさんが「モノクロで写真を撮ると、雰囲気が出ていいですよ」と教えてくれたので、撮影してみました。

さまざまな場所で目にする軍艦島の写真ですが、島の裏側って見る機会がなかなかありません。船で一周する際には島の裏側も眺めることができます。

そうこうしているうちに「上陸許可がおりました」とアナウンスが流れ、めでたく軍艦島に上陸できることになりました。軍艦島にはトイレはないため、上陸前に船内で済ませておく必要があります。軍艦島到着前には船内のトイレが混雑しますので、早めに済ませておくのをおすすめします。

見学できるのは3つのポイントのみ

船を降り、ガイドさんの案内に従って進んでいきます。上陸できるといっても、3つのエリアのみに限られています。自由行動はできません。島内には保存が困難と判断され、崩落の可能性がある建物もあるためですね。

船が接岸するのは、「ドルフィン桟橋」。過去2回にわたり台風によって流失したことを経て、台風にも負けない日本初のドルフィン式可動桟橋が完成したのだとか。現在も上陸ツアーの船の接岸場所として使われています。

各ポイントごとに立ち止まり、ガイドさんの説明を聞きます。興味がさまざまな建物に移って、写真を撮影することに熱心になり、立ち止まってしまいがちですが、観光できる時間は限られています。筆者らが乗った船以外にも次の船が上陸を待っているため、速やかに行動しないと、ほかの観光客のみなさんに迷惑がかかります。団体行動の輪を乱さないように注意が必要です。

実は軍艦島そのものが世界遺産ではない

明治日本の産業革命遺産として、2015年に世界文化遺産に登録された端島炭坑(軍艦島)ですが、厳密には護岸と海底坑道のみが世界遺産に登録されています。該当の護岸がこちら。

石垣は手で積み上げられたもので、端島炭坑を守るライフラインの役割を担っていました。海底坑道のほうは残念ながら入ることはできません。世界遺産に登録された護岸をしっかり目に焼き付けましょう。

第1見学広場で立ち止まると、建物や当時の生活についてガイドさんが説明してくれます。次の見学広場へ移動する合間でも、近くにいるガイドさんへ質問すると何でも答えてもらえ、その知識の深さには感心します。

画像右側に並ぶのは大量のベルトコンベア跡で、支柱のみが残っています。ベルトコンベアで、採掘した石炭を船に運んでいました。

島で最も高台にそびえたつ建物は、エリート職員が生活するマンションでした。

画像中央に見えるのは、端島小中学校。最盛期の小中学校の生徒数は、1,000人を超えていました。

続いて、第2見学広場にやってきました。レンガ造りの建物は、炭坑でさまざまな業務を担っていた総合事務所です。

第3の見学広場で、資料である写真とともに説明をしてくれるガイドさん。台風の際には島が覆われるかと思うほどの高波が立つのだとか。もちろん離島ですから、台風接近の際には一週間ほど船が来られないこともあります。船が来ないということは、物資も届かないということで、何より心配なのは食べるものがなくなってしまうことだったそう。

崩落が近い?国内最古の鉄筋コンクリート造アパート「30号棟」

正面に見えるのは、国内最古の鉄筋コンクリート造アパート「30号棟」。軍艦島に存在する建物は、劣化が著しく保存が困難であることから、補修の対象となっていないものもあります。30号棟もその一つで貴重な建物。風化が進むアパート群を調査している東大大学院の野口貴文教授(建築材料学)は、あと半年程度で階全体が崩落する可能性があると予測しています(2021年11月現在)。崩落してしまえば、この景色は過去のものになってしまうのですね……。

がれきの山を間近に見られ、ここが廃墟の島であることを感じます。元島民だった人も、現在は上陸ツアーでしか入島することはできません。かつて自分が住んでいた、古くなった建物を悲しそうに眺めることもあるとか。故郷に自由に帰れないというのは切ないものがありますね。

3カ所のポイントでの見学が終了し、第3見学広場から名残惜しさを抱えつつ乗ってきた船に戻ります。

常盤ターミナルに戻る船の中では、「軍艦島上陸記念証明書」が配られます。

炭坑の発展とともに栄えたこの島の歴史に思いを馳せつつ軍艦島を眺めれば、切なさとともにどこか心に迫るものがあります。ぜひ実際に足を運んでみてくださいね。

参考:軍艦島30号棟「余命半年程度」 国内最古の鉄筋アパート 東大大学院、野口教授が予測

[All Photos by Chika]

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