緊迫の接近戦で連続3位表彰台、シボレーのカサグランデが初タイトルを獲得/SCB最終戦

 最終戦を迎えた2021年のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第12戦BRBスーパー・ファイナルが12月11~12日、インテルラゴスで開催され、1秒差圏内に27台が入る僅差の予選でポールポジションを獲得したガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)が、日曜両ヒートともに3位表彰台を獲得。選手権リーダーの優位性に甘んじることなく、シリーズ3連覇王者ダニエル・セラ(Eurofarma-RC/シボレー・クルーズ)や、年間最多ポールポジション獲得記録を持つ“最速男”ことチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)らを退け、キャリア初のドライバーズチャンピオンを手にした。

 サンパウロのF1トラックで争われるSCB最終決戦を前に、スタンディング最上位につけた26歳のカサグランデは、ランキング2位のセラに対し最後の週末に獲得できる最大56ポイントのほぼ半分に相当するリードを保って乗り込んできた。

 しかし初のSCBタイトル獲得に向け意気込むカサグランデは「攻めの姿勢で行く」と語って予選に挑むと、1秒差圏内に27台が入ったQ1を危なげなく突破。続くQ2でもトップ10がわずか0.252秒のギャップに収まる緊迫の接近戦を制し、1分40秒035のフライングラップでキャリア通算4度目のポールポジションを射止めた。

「僕はこのトラックが大好きなんだ。大勢のファンがスタンドに戻り、家族や友人の見守る前で結果が出せて素晴らしい気分だよ。このポールで2点を加算できたのも大きいね」と、喜びを語ったカサグランデ。

「5月のインテルラゴスでもポール獲得から優勝を果たしたが、それはチームのみんなが速いクルマを用意してくれたからだ。もちろん明日も、その5月の再現を狙うつもりさ。僕らのタイトルのためにね」

 この予選結果により、フロントロウ2番手に並んだ“予選最速男”カミーロは、決勝を前にカサグランデ、セラの選手権上位2名が週末0ポイントで、自らは勝利を挙げる条件でのみ戴冠可能という、数学上で残されていた逆転タイトルの可能性も消滅。一方で「僕が4冠目を狙うには、彼に不運が必要だね」と語ったセラが2列目3番手という結果となり、最終決戦に向けグリッド前方に役者が揃う完璧なお膳立てが整った。

Q2でもトップ10がわずか0.252秒のギャップに収まる緊迫の接近戦を制し、ガブリエル・カサグランデ(A. Mattheis-Vogel/シボレー・クルーズ)がキャリア通算4度目のポールポジションを射止めた
12月11~12日のインテルラゴスでは、パドックのドライバー陣も詰めかけたファンも、F1最終戦の行方を固唾を飲んで見守った
ともにフルシーズン・デビューイヤーで苦心したフェリペ・マッサ(Lubrax Podium/シボレー・クルーズ/右)と、トニー・カナーン(Full Time Bassani/トヨタ・カローラ)
TOYOTA GAZOO Racing Brasil(TGRブラジル)勢最後の1台としてタイトル戦線に留まったチアゴ・カミーロ(Ipiranga Racing/トヨタ・カローラ)も届かず

■ブラジル人にとって、インテルラゴスで王者になるのは“魂”に触れるような瞬間

 明けた日曜現地時間午後13時40分開始のレース1は、オープニングでポールシッターを仕留めたカミーロが、そのまま18周のスプリント戦を制覇してキャリア通算37勝目を記録。これでSCB5冠を誇る“帝王”カカ・ブエノ(クラウン・レーシング/シボレー・クルーズ)に並ぶ勝利数を記録した一方、2位にセラ、3位カサグランデと真っ向勝負の表彰台に。

 インターバルを経てそのまま迎えた30分間のレース2は、11月末の第11戦と同様にトップ10リバースグリッドの恩恵を受けたセラの僚友、リカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が17周を走破してトップチェッカー。2位に入ったリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)に続き、後方グリッドから注目すべきパフォーマンスを披露したカサグランデがふたたびのポディウム圏内に辿り着き、シーズン14度目の表彰台とともに自身初のチャンピオン獲得を決めた。

「本当に肩の荷が降りた気分だ。このタイトル獲得はすべてを変えるだろうね」と、安堵の言葉を述べた新王者カサグランデ。

「レース前のミーティングで、チームメイトが僕にあることを思い出させてくれたんだ。彼とはカート時代から競う仲だが、その頃から僕は『ストックカーでチャンピオンになる』と言い続けてきた。F1に目が眩むことはなかったね。そして今日、僕は人生最大の夢を実現させたんだ!」と続けたカサグランデ。

「僕は本当に幸せな男だ。プレッシャーから解放された今、さらにチャレンジする意欲も湧いてきているよ。もっと挑戦したいし、そのためのクルマもチームもここにある。連覇に向け、勝負はもう始まっているんだ」

 一方、4度目のタイトル獲得を逃したWEC世界耐久選手権レギュラーは、この1年を振り返り「僕にとっても良いシーズンだった」と述べるとともに、対戦相手を祝福する言葉を残した。

「重要な点は、僕がユーロファーマRCに5年間在籍したうち、毎年のようにタイトル戦線に挑み続けていることだ。2021年はゴイアニアで多くのポイントを失い、それが決定打になった。その結果、何倍も優れた対戦相手が栄冠を勝ち獲ったわけだが、ガブリエル(・カサグランデ)にはお祝いの言葉を贈る必要があるね。彼はとても良いドライバーで、良いシーズンを過ごした。戦えて光栄だったよ」

レース1はオープンニングでポジションを明け渡したカサグランデだが、リスク排除の展開で3位フィニッシュ
シリーズ3連覇王者ダニエル・セラ(Eurofarma-RC/シボレー・クルーズ)が最後まで喰い下がるも、自身4度目の戴冠はならず
レース2はリカルド・マウリシオ(Eurofarma-RC/シボレー・クルーズ)が制し、リカルド・ゾンタ(RCM Motorsport/トヨタ・カローラ)が2位に入った
「ブラジル人にとって、インテルラゴスで王者になるのは“魂”に触れるような瞬間」と表現した新王者カサグランデ

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