政党支持率の「ニューノーマル」か?維新・立憲の支持率を各社世論調査から見る(米重克洋)

10月の衆院選で議席を4倍近くに増やした日本維新の会。選挙後、直近までに実施された各社世論調査では、選挙前と比べて政党支持率が大きく上昇しており、各社とも立憲民主党と野党第1党を争う水準を示している。

12月も、既に読売新聞やJNNなどの世論調査の結果が発表されているが、読売新聞では立憲7%(前月比-4pt)に対して維新8%(同-2pt)、JNNでは立憲8.0%(同-1.3pt)に対して維新8.5%(同-1.3pt)と、引き続き政党支持率で維新が立憲をわずかに上回っている。

維新人気は単なる「選挙ブースト」か

元々、世論調査で示される政党支持率には選挙直前に大きく上昇し、選挙後は徐々に元の水準に戻していく現象が知られている。とりわけ普段は支持率が相対的に低い野党では、選挙前に無党派層が投票態度を決めることで支持率が上乗せされやすく、維新もその影響を強く受けてきた(これを「選挙ブースト」と呼ぶ人もいる)。だが、今回、維新の政党支持率は選挙から1ヶ月以上経過した今も立憲を上回る水準をキープしている。また、読売新聞のように、維新より立憲の方が落ち込みの幅が大きい調査が見られる。こうしたことから、維新の支持率は一時的なブーストが収まった後も、従来よりある程度「底」が上がったまま推移する可能性がある。

となると、気になるのは来年の参院選への影響だ。仮にこのような状況が今後も続けば、来年の参院選の結果は前回や前々回のそれとは大きく異なってくるだろう。例えば複数人区では、従来立憲民主党など旧民主党系の政党の候補が当選してきたところで、代わりに日本維新の会の候補が当選する、あるいは比例代表の得票でも維新が立憲と並ぶか上回る、といったことが近畿圏のみならず全国的に生じ得る。政党支持率の異変は、そうした状況の変化を先行して示している可能性がある。

この、維新が立憲に並ぶかそれを上回る支持を集める足元の状況は、果たして一時的なものなのだろうか。それとも当分の間続くものなのだろうか。その問いを考えるうえでヒントになるのが、維新支持層の内訳だ。

女性から支持を受ける維新

年齢層ごとの維新支持率を見ると、現役世代を中心とする維新支持の高さがわかる。

選挙ドットコム・JX通信社が11月13,14日に行ったハイブリッド調査のうち、電話調査では、立憲と維新の支持率は60代以下でほぼ並ぶ。70代以上では立憲の方が支持率が高くなっているが、差はわずかだ。相対的に若年層の回答が多いネット調査で見ても、20〜30代では立憲と維新がほぼ横並びとなり、40〜50代では維新が上回っている。

性別ごとで見ると、維新は男性より女性の支持が高い。電話調査では、男性における支持率が維新8%、立憲12%なのに対し、女性では逆に維新11%、立憲9%と多くなっている。

図:立憲と維新の支持率比較 2021年11月に選挙ドットコムとJX通信社が実施した電話調査より選挙ドットコム編集部作成

これらの傾向は他社が行っている調査とも共通する。

朝日新聞が11月6,7日に行った調査では、50代以下の現役世代で維新の支持率が立憲を上回っている。性別で見ると維新は男性の8%、女性の11%の支持を集めており、女性では立憲を2pt上回っている。女性の中でも特に40〜50代、主婦層で支持が多い。

これは過去の維新支持層の内訳と比べてもやや異質だ。2019年11月に行った電話調査では、維新の支持率は3%で立憲(12%)よりかなり低い水準だった。年齢層別で見ると、20〜30代や60代からの支持が相対的に多いとはいえ最大でも6%程度であり、性別では男女とも共通して3%ほどの支持しかなかった。

人口の多い団塊ジュニア世代を中心とした「現役世代」から支持を一定程度集めていること、投票先を決めるのが相対的に遅くなる女性からの支持が比較的厚いことは、先の衆院選で各社の情勢予測を上回る議席数を得たことと無関係ではないだろう。

維新は「政権交代の担い手」と見られているか?

野党第1党は、今後の衆院選の結果によっては与党に代わり得る政権の担い手となる立場だ。果たして、有権者は立憲ではなく維新を政権交代の担い手と見始めているのだろうか。

月刊誌「中央公論」2022年1月号で紹介された、政治学者の砂原庸介氏(神戸大学大学院教授)と善教将大氏(関西学院大学教授)の対談で、興味深い調査結果が紹介された。善教氏が先の総選挙後の11月1〜4日にかけて、政党に対する有権者の「感情温度」を測る調査を行ったところ、維新の感情温度が自民や立憲を大きく上回ったという。詳細は誌面で確認いただきたいが、これを受けて善教氏は「有権者の維新を見る目が変わった」と評している。

実際、選挙結果を見ても、先の衆院選では地盤とする近畿のみならず、北関東、南関東、東京、東海の各ブロックで比例得票率が10%を超えている。近畿内で大阪以外の地域を地盤とする議員が増えただけでなく、近畿外でも比例得票の増加で多くの議員が当選したことは明確な状況の変化だ。維新も、そして立憲も、政党支持率において「ニューノーマル」を迎えている可能性がある。

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