脱炭素先行地域、再エネ事業の促進区域、自治体は慎重姿勢。「制度の詳細不明」で

 環境省は「2050年までにCO2排出を実質ゼロにすることを目指す」ことを表明した地方自治体をゼロカーボンシティと呼称し、11月30日現在、これを表明したと確認されている地方自治体は492自治体(40都道府県、295市、14特別区、119町、24村)となっている。政府は5月の地球温暖化対策推進法の改正を受け、6月に「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、脱炭素事業での地域紛争の緩和などを目的に「脱炭素先行地域」や再エネ事業の「促進区域」設定などの自治体支援策を打ち出している。しかし、自治体は「制度の詳細が不明」を理由に、費用対効果などを見定めるため今のところ慎重姿勢を示しているようだ。

12月8日、矢野経済研究所が「カーボンニュートラルに向けた施策に関する自治体アンケート調査」(調査期間10月~11月、調査対象は9月末まで50年脱炭素を表明している177自治体)の結果レポートを公表しているが、この調査結果によると表明自治体では導入コストや発電場所の選定・確保が課題となっているようだ。

 「地域の特徴を生かした再生可能エネルギーの有無」を複数回答で聞いた結果では、「屋根置き太陽光発電」が60.5%で最多、次いで「野立て太陽光発電」42.4%、「バイオマス発電」36.7%と続き、レポートは「低コストや幅広い地域での導入の可能性を特徴とする」ものが上位に来ていると分析している。同様に「普及に向けた課題」について聞いた結果では、「発電設備の導入コスト」84.2%、「発電場所の選定・確保」76.8%、「蓄電設備の導入コスト」74.6%などとなっており、設備の導入コストを重視していることが示唆される。

 脱炭素先行地域への応募意向を聞いた結果では、「ある」22.7%、「検討中」は53.5%、「ない」23.8%となっており、検討中と回答した理由の中には「事業の促進区域との関係性を検討中」としているものもあり、「応募の意向は、具体的な施策の実施・検討レベルによって変わる可能性がある」とレポートは分析している。再生エネ事業の促進区域設定の意向については、「ある」7.3%、「検討中」70.0%、「ない」22.7%となっており、検討中の理由としては、「制度の詳細が不明」、「知識・情報の不足」、「関係者との調整が途中」などが挙がっている。レポートではこれらの理由で「動きが鈍い可能性がある」と分析している。(編集担当:久保田雄城)

矢野経済研究所が「カーボンニュートラルに向けた施策に関する自治体アンケート調査」。再エネ事業の促進区域設定の意向「ある」は7%、「検討中」70%。理由は「制度の詳細が不明」など。

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