各政党の宣伝広告事業費用の推移を観察する

本年2021年10月31日に第49回衆議院議員選挙が行われました。
投票率は過去3番目に低いものとなりましたが、選挙期間中は各政党の宣伝広告が各メディアから流れてきました。

テレビ、新聞のみならず、検索エンジンでの検索結果、YouTube等のSNS上での政党情報が流れてきたのを目にしたかたも多いと思います。

選挙では多くの人に政党を知ってもらうために宣伝広告を打ちますが、各政党は年間幾らぐらい宣伝事業費に費やしているのでしょうか?

国政選挙が予定されている年には多くの宣伝事業費用が使われているような予想はたちますが、実際に政党の宣伝事業費がどの程度利用されているのかイメージすることが難しいので、今回は各政党の年間宣伝事業費用がどの程度であるのかについてグラフを作成してみました。

利用するデータは総務省が2020年12月23日に公表している
令和元年分政治資金収支報告の概要(総務大臣届出分+都道府県選管届出分)です。

この資料に掲載されている、
令和元年、平成30年分の宣伝事業費用を各政党別についてグラフ化したものが下記になります。

図1_宣伝事業費

まず、グラフ全体を見ると2018年、2019年とを比較をすると、
2019年には第25回参議院議員選挙が行われた関係もあり、
宣伝事業費が2018年より増加していることが確認できます。

最も宣伝事業費を出しているのが2018年,2019年ともに自由民主党であることがわかります。
自由民主党の政治活動費のうち宣伝事業費が30億円以上あることがわかります。

そして政党別に各項目に支出した金額の割合をグラフ化したものが次のものになります。
グラフの左側にある黄色の部分が宣伝事業費になります。

図2_宣伝事業費割合

政党ごとに収入金額が異なるので簡単には比較しにくいのですが、
国民民主党、日本維新の会、れいわ新選組は、
政党支出に占める宣伝事業費の割合が他の政党と比較すると多いことが特徴です。

ここまで見てきた各政党の宣伝費用ですが、
2013年から選挙運動の際にインターネットを活用することができるようになった関係で、
政党が直接又はコンサルタントを介在させる形でSNS等に宣伝広告費用を支出している事例が、
各種資料から確認することができます。
またメールマガジン等によりウェブ媒体収益がある議員、候補者のかたも各種資料から確認できますので、
政治活動、選挙運動にインターネット利用することが当然になっていることが伺えます。

実際、総務省情報通信政策研究所「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の調査結果を見ても、
有権者の各メディアでの消費時間も変化しています。
特にインターネット接続時間は長くなる傾向にありますので、
各政党、候補者がインターネット選挙運動、政治活動に力を入れるのもうなずけます。

図3_メデイア接続時間

ただ、接触時間が長くなっているインターネットですが、
その信頼度については以前から存在する媒体と比較をすると情報に対する信頼度が高いとは言えないようです。
各メディアに対する信頼度については下記のようになっています。

図4

これら数値を参考にしつつ、
2022年の参議院選挙に向け各政党、候補者もアピールの場をテレビ、新聞等のマスメディア、
自分で管理運営ができるウェブサイトに展開してくるものと思われます。
(各種公的資料を見ていくと政党等PRに大手PR会社が起用されていることがわかります)
それらアピール合戦を見た際に、
政党ごとに広告費用について思い浮かべると、
今までとは違った視点で選挙運動広告を見ることができることと思います。

これら政党の宣伝事業費は想像したより多かったでしょうか、
それとも少なかったでしょうか?

今回は選挙時等、政党広告を見ることはあるけれど、
その費用についてはあまり知ることのない各政党の宣伝事業費について観察をしてきました。

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