北大マルシェアワード2021 そらち南さつまいもクラブが初開催を制す

最優秀賞を受賞したそらち南さつまいもクラブ

2009年から毎年夏に行われていた食と農のイベント「北大マルシェ」に代わり、今年度は「農業・食・農村を見つめ直し、未来を見据えた活動を行う人を発信すること」を目的として北大マルシェアワードが開催された。11月13日に行われた同アワードの最終審査会では「農業部門」、「農村部門」、「食部門」の計3つの部門別に選出されたファイナリストたちが最後のプレゼンをした。農業部門の「未来を語る農業賞」をfloatmeal(札幌市)、農村部門の「地域の元気スターター賞」を株式会社マドリン(広尾町)、「食部門」の「以食伝心~心を動かす食~」を株式会社ユートピアアグリカルチャー(日高町)が受賞。また最優秀賞にはそらち南さつまいもクラブ(栗山町・由仁町)が選ばれた。同アワードは来年度以降も継続する予定だ。

3部門で最終プレゼン

農業部門のコンセプトは「20年後に普及しているあなたの農業!」。ファイナリストには木樋(きとい)桃源ファーム、しまねずみファーム、floatmealの3団体が選ばれた。同部門の「未来を語る農業賞」を受賞したfloatmealの最終プレゼンは、本学水産学部3年の北村もあなさんが担当した。プレゼン冒頭で食に関する温室効果ガスの排出量の多さに触れ、「北海道で盛んな環境負荷の大きい畜産業を、より環境にやさしい産業にする必要がある」と話した。その解決策の一つとして、floatmealでは高い栄養価と生産性の高さ、環境負荷の低さからミジンコウキクサを食品として注目。あらゆるモノがインターネットにつながるIoT技術を用いた効率的な生産方法を開発していることを説明した。また北村さんは北海道におけるミジンコウキクサのビジネスモデルについても触れ、「植物性食品で有名な北海道にしたい」と語った。

農村部門では株式会社マドリンとそらち南さつまいもクラブ、農家の嫁プロジェクト、RIKKA LLCの4団体が最後のプレゼンに臨み、「地域の元気スターター賞」を株式会社マドリンが獲得した。株式会社マドリンの角倉(すみくら)円佳さんは最終プレゼンで十勝には酪農・農業に強い思いを持って頑張っている女性が多くいることに触れ、「酪農そのものと酪農に従事している女性酪農家たちのイメージアップがしたい」と話した。また角倉さんは牧場経営を本業としながら、帯広市のコミュニティFM「FM-JAGA」の番組「とかちウーマンフロンティア」でパーソナリティも務める。同番組を通して女性酪農・農業従事者のイメージアップや認知度向上のため日々情報発信をしているという。

最終プレゼンに臨むRIKKA LLCの二人

食部門では「以食伝心~心を動かす食~」というテーマのもと、プラスフードと株式会社ユートピアアグリカルチャーの2団体が最終プレゼンに臨み、ユートピアアグリカルチャーが食部門の賞を取った。同団体は最終プレゼンで環境負荷の小さい循環型放牧酪農によって得た畜産物を使ったチーズケーキ作りについて説明した。同団体は原材料をこだわるため実際に日高町で牧場を運営し、80頭の牛を育てている。また餌である牧草にもこだわっており、様々なデータを使い牧草を育てる土壌の栄養状態などを検査している。

最優秀賞はそらち南さつまいもクラブ

今年のマルシェアワードの最優秀賞を取ったそらち南さつまいもクラブは最終プレゼンで「由栗(ゆっくり)いも」のブランド化に関する取り組みについて語った。もともとサツマイモ栽培はしていなかったが、サツマイモ掘りをする子供たちの笑顔を見たため始めたという。また由栗いもの名前は、さつまいもの1品種である紅あずまを栗山町と由仁町の若手農家で共同生産したことが由来。本州産のものよりゆっくり育ち、また長期間熟成させるので甘くておいしいという。当日は実際に由栗いもを使ったパウンドケーキが販売された。

受賞者の声

最優秀賞を受賞したそらち南さつまいもクラブは「選ばれるとは思っていなかった」と受賞を驚き、「由栗いもの名前を道内外に知ってもらえるように頑張りたい」と語った。「未来を語る農業賞」のfloatmealは受賞を喜びつつ、「持続可能な食資源の開発を目指しているのでアドバイスをいただけるとうれしい」と農業関係者に向け発信した。

© 北海道大学新聞編集部