FIA、最終戦セーフティカー手順への強い批判受け、調査を開始へ「F1のイメージに傷をつけている」と発言

 FIAは、12月15日に世界モータースポーツ評議会会合を行った後、2021年最終戦アブダビGP決勝終盤に起きた混乱について、今後詳細な分析と解明を行い、教訓にするとの声明を発表した。

 ドライバーズタイトルを争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が同点で迎えた最終戦、ハミルトンが大きなギャップを保ってレースを終盤までリードし、タイトル獲得の可能性が高いと思われた。しかし残り数周のところで、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がクラッシュしたことによりセーフティカーが出動。その後、FIAレースディレクター、マイケル・マシが採った手順によって大きな波乱が生じた。

 周回後れのマシンがハミルトンとフェルスタッペンの間に数台、フェルスタッペンより後ろにも何台か走っていた。マシは最初は周回後れを前に出さないと通達。しかしその後、その指示を取り消して、ハミルトンとフェルスタッペンの間の周回後れのマシンに限り、前に出ることを許し、その直後にセーフティカーを引っ込め、最終周1周のみのスプリントレースを実現させた。

 その後のレース展開がどうなるかは誰にでも容易に予想できた。ハミルトンはロングスティントを取り、古いタイヤを持たせながらチェッカーを目指していたが、フェルスタッペンはセーフティカー中に新品ソフトタイヤに交換していたのだ。予想どおり、ハミルトンはなす術なくフェルスタッペンに抜かれ、つかみかけていたタイトルを失った。

 今回のセーフティカー手順がF1競技規則に反する部分があったため(一部のバックマーカーだけを前に出したこと、規則に記されているより1周早くセーフティカーを引っ込めたこと)、メルセデスの怒りを大きかった。メルセデスはこれについての抗議を行ったが、スチュワードは、レースディレクターに自由に決める権限があるとしてこれを棄却。メルセデスはすぐさま、上訴の意思を表明した。

2021年F1第22戦アブダビGP タイトルを逃がし失意に沈むルイス・ハミルトン(メルセデス)と父アンソニー

 多くの関係者、ジャーナリスト、ファンが、FIAがセーフティカーに関して取った手順を批判し、反発を示すなか、FIA会長がこの件について調査を行うことを提案、それが承認されたことが発表された。

「2021年FIAフォーミュラ1アブダビグランプリは、F1関係者やモータースポーツ全体、そして一般の人々から多くの反響を呼んだ」とFIAの声明には記されている。

「FIAはいかなる場合でも、関係者全員の安全とスポーツの品位を確保することを第一の責務としている」

「ニコラス・ラティフィの事故によるセーフティカー導入にまつわる状況、そしてFIAレースディレクションチームとF1チームとのコミュニケーションが、F1チーム、ドライバー、ファンのなかに大きな誤解と反応を生んだ」

「それについての議論は、(F1)選手権のイメージに傷をつけ、マックス・フェルスタッペンが獲得した初のドライバーズ世界選手権タイトルと、メルセデスが獲得した8年連続のコンストラクターズ世界選手権タイトルの正当な祝賀に影を落としている」

2021年F1第22戦アブダビGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

「FIA会長は、同グランプリの53周目に発生したインシデントに関する報告書を発表した後、改善を図るため、世界モータースポーツ評議会に、関係者全員による今後の詳細な分析と解明を行うことを提案した」

「この状況からあらゆる教訓を引き出すとともに、ドライバーとオフィシャルの安全を確保しながらスポーツの競争的本質を維持するために、競技者、メディア、ファンに対して現行のレギュレーションの明確化を行うべく、この問題についての議論をすべてのチームおよびドライバーと共に行う」

「この分析から、F1だけでなく他のすべてのFIAサーキットの選手権全般が恩恵を得ることになるだろう」

「したがってFIAは、F1のガバナンスの中でこれを進めるために最大限の努力をする。F1ドライバーの支援を得て、スポーツ諮問委員会に研究と提案を行うべく明確に指示するよう、F1コミッションに対して提案し、2022年シーズンの開始前に、有意義なフィードバックと結論を特定するよう進める」

 メルセデスが実際に上訴の手続きを開始するための期限は16日に定められているが、チームはレース後、一貫して沈黙を守っている。

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