【大学野球】「収入を増やさないと破産してしまう」 東都大学リーグが危機感をバネに大改革

東都大学野球リーグが来春の1部開幕戦を大分で開催することを発表【写真:宮脇広久】

土・日は東京六大学優先で平日開催…入場料収入は見込めず

1931年の創立以降91年の歴史を誇り、亜大、東洋大、中大、駒大など強豪が顔を揃える東都大学野球リーグが、ここにきて矢継ぎ早に改革を進めている。15日には都内で記者会見を開き、来年の春季リーグ1部開幕カードを史上初の地方開催とし、4月2、3日に大分市の別大興産スタジアムで行うと発表した。東都リーグは東京都内に所在地を持つ22大学で構成され、1部から4部に分かれている。

「正直言って、東都リーグの財政状況は非常に厳しい。このままいったら破産してしまう。少しでも収入を増やせる方法を考えたい。失敗を恐れず思い切った取り組みをしていかないと、この状況を打破できないと思っています」。東都大学野球連盟の西村忠之事務局長がショッキングな現状を明かした。

1部リーグ戦は専ら神宮球場で行われているが、さらに歴史が長い東京六大学に土・日を押さえられているため、平日開催を余儀なくされている。当然、入場料収入は多くを見込めない。それでも東浜巨投手(亜大、現ソフトバンク)らスター選手がいた2010年前後は、比較的多くの観客が球場へ足を運んでいたが、現在はそういったブームもない。

「まずは土・日に試合ができる環境を作りたい。それが地方開催を考える出発点でした」と西村事務局長。「最近は地方の大学が野球部の強化に乗り出し、以前に比べると地方の高校球児が東京へ進学してくれなくなっている。地方で東都の認知度を上げ、存在をアピールする狙いもあります」とも明かした。開催地の中学、高校、大学との交流も図っていく。大島正克理事長は「手を上げてくれる県や市があれば、この先も(地方開催を)広げていきたい」とうなずいた。

東都大学野球連盟の西村忠之事務局長【写真:宮脇広久】

地方開催、リーグに愛称、プレミアムパートナー、ファンクラブ創設

改革は地方開催だけではない。新たにリーグの愛称を「PREMIUM UNIVERSITIES 22」(略称プレユニ22)と設定。「一般的に東都は、1部と2部くらいは存在を知られていても、4部まであって、一橋大や学習院大といった有名大学も加盟していることはあまり知られていない。これからは22大学の総力を挙げてやっていくという思いを込めました」と西村事務局長は言う。さらにリーグのプレミアムパートナーとして、人材派遣大手の株式会社エイジェックを3年契約で迎えた。

10月下旬に終了した今年の秋季リーグ戦では「東都ファンクラブ」をテスト的に設立。会費1万円で1部から4部まで全試合を観戦できるもので、約350人の会員が集まった。「開幕直前に生まれたアイデアで、宣伝する時間はほとんどなかったが、予想以上の反響があった。存在を知らなかったという人もたくさんいました」と西村事務局長。来年は春季・秋季共通の年会費2万円とする方向で、年明けから募集を始める見通しだ。

今後は「10年後までにはこれをやる、15年後までにはあれというように、中・長期計画を立てていきたい。長期的には、土・日に開催できる東都専用の球場をつくりたいです」と青写真を描いている。

「もはや各大学におんぶに抱っこで済む時代ではない。自分たちの活動費は自分たちで稼ぐ気概を持ちたい。われわれは本気です!」と語気を強めた西村事務局長。危機感をバネに東都のチャレンジが成功すれば、全国のリーグに波及し、大学野球全体の振興につながる可能性もありそうだ。今季のプロ野球で新人ながら3割20発を記録した牧秀悟内野手(DeNA)も、中大出身の東都OB。本気の改革は知名度アップ、収入アップにつながるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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