区役所×旅行会社 人手不足のコロナ業務に一丸で

新型コロナのワクチン接種で課題となっていたのが「医療機関や行政の人手不足」です。東京・目黒区は旅行会社の力を借りています。

目黒区の保健所で窓口業務に当たっているのは、区の職員ではなく「都内にある旅行会社の社員」です。現在、6人の社員が保健所の予防接種課で働いています。ことし2月、目黒区ではワクチン接種の予診票のデータ入力や接種券の発送などを行うため、急きょ人手が必要になりました。目黒区保健所・新型コロナ予防接種課の吉田武広課長は「需要と供給が一致した。社会を元に戻したいという思いは、旅行会社の皆さんは人一倍持っていると思う。われわれも早く、彼らが元の業界で本来の業務に就ける世の中になることを目指している。そこは最初から一致していて、すごく心強かった」と話します。

保健所に出向している1人、柴田麻子さんは旅行好きが講じて2020年2月に旅行会社に就職しました。しかしコロナの影響で、旅行業務の実務は数カ月しかできていません。そんな旅行会社の社員の強みが発揮される場面があります。現在、予防接種課の窓口にはワクチンパスポートの発行や3回目の接種に関わる問い合わせなどで、1日20人ほどが訪れ、中には外国人の姿も見られます。こうした時、語学が堪能な旅行会社の柴田さんたちが対応することで、日本語が苦手な外国人にもスムーズな受け付けを可能にしました。

自分の希望とは違う仕事でも前向きに取り組む柴田さんは「気軽に海外旅行に行けるような通常の生活に戻ってほしい」という思いがあります。柴田さんは「保健所の仕事で外国人に英語で説明する時、どんな単語が分かりやすいか調べることもあった。そういったものは元の会社に戻った時に生かせるかなと思う。保健所の業務を通してワクチン接種を受けてもらい、コロナのまん延防止ももちろんですが、私も元の会社に戻れるように、気軽に海外旅行に行けるように、通常の世界に戻るといいなと思う」と語りました。

この業務の契約は2022年3月までですが、目黒区は3回目接種に向けて契約を継続していく見込みだと話しています。

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