第9回グッドライフアワード最優秀賞は「自然を傷つけない屋根上太陽光発電とグリーンテック」に決定

最優秀賞を受賞したアイ・グリッド・ソリューションズの秋田智一代表取締役社長 (右)

環境省が主催するグッドライフアワードが今年で9回目を迎え、12月4日に環境大臣賞受賞プレゼンテーションと表彰式が行われた。環境と地域社会の課題を解決するローカルSDGsの取り組みを応援するこのプロジェクトに、今年は192の応募があった。最優秀賞に輝いたのは「自然を傷つけない屋根上太陽光発電とグリーンテックで環境に優しいエネルギー循環の実現」を目指しているアイ・グリッド・ソリューションズ(東京・千代田)。優秀賞には小学生、部門賞には高校生の取り組みが輝くなど、同省が長年訴え続けてきた「地域循環共生圏」の考えは、着実に新しいテクノロジーや世代へと引き継がれているようだ。(いからしひろき)

「地域循環共生圏」とは、各地域が足元の地域資源を最大限活用して自立・分散型の社会を形成し、地域の特性に応じて資源補完、支え合うことにより、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方だ。

今回、環境大臣賞の部門賞・優秀賞・最優秀賞(計11件)、そして実行委員特別賞(計31件)に選ばれた取り組みはまさにそれを体現しており、地域も資源も課題もばらばらだが、どれも非常にユニークかつ意義の高いものだった。

全てをここで紹介するのは差し控えるが(詳細は下記、ならびに環境省報道発表資料を参照)、特に気になったものを挙げていこう。なお、筆者はこのアワードを第7回から取材している。

部門賞では、若い世代の活躍が目を引いた。

「学校部門」を受賞した大阪府立堺工科高校・定時制課程の生徒たちは、東日本大震災でのボランティア活動をきっかけに、災害時のエネルギー供給の脆弱性に気づいた。そこで、有事に供給がストップしやすいガソリンや軽油に代わり、天ぷら油などで発電する「バイオディーゼル発電機」を製作。さらにはプラスチックゴミから油を作る装置も開発し、身近な資源を再利用できるエネルギー循環システムを作り出した。

大阪府立堺工科高校が作ったバイオディーゼル発電機

「個人部門」を受賞した東京都の高校2年生山崎佐知子さんは、食品ロスを減らし、持続可能な社会を実現させたいという思いから、豆腐店で発生する廃棄物の「おから」に着目。グラノーラに加工し、ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)を意識した量り売りをしたり、売上高を子ども食堂に寄付したり、おからを起点にさまざまな社会的課題を解決する“善意の流通システム”を構築した。

祖父の戦時中の食糧難の話がフードロスに目を向けるきっかけだったそう

今年から新設された「ユース部門」には、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運用するNature Innovation Group(東京・渋谷)が輝いた。スマートフォンアプリを活用した傘の貸し出しやシェアリングによって、全国328の駅、都内200の駅に貸し出しステーションを設置するまでに普及させた。代表の丸川照司氏は若干27歳である。

アプリを使って誰でも気軽に使えるようにしたことが評価された

「優秀賞」においても、若い世代の活躍が目立った。福井県の勝山市立平泉寺⼩学校の生徒たちは、地域の湿原の植物の成長の妨げになるヨシを環境保全のために刈り取るだけでなく、それをストローに加工することでプラスチックゴミ削減にも貢献。活動は地方紙にも取り上げられるなど、地域振興にも役立っている。

子どもたちは動画メッセージで出演

最優秀賞を受賞したアイ・グリッド・ソリューションズは、商業施設や物流施設の屋根に分散型の太陽光発電施設を建設することで、土地を切り崩さず、自然環境に負荷をかけない再生可能エネルギーの利用を促進している。さらに、需要・発電予測等を一元的に管理するシステムを構築し、発生した再生可能エネルギーを効率的に利用できるようにしたトータルソリューションが評価された。

既存の太陽光発電の課題を最新のテクノロジーで解決

実行委員長の益田文和氏(デザインコンサルタント)は、記者の取材に「グッドライフという曖昧なテーマに関わらず、これだけ多くの、しかも優れたアイディアが集まるのは日本ならでは。日本の環境に対する素晴らしい取り組みとして、世界中に発信していきたい」と語った。また、受賞しながら新型コロナウイルス感染症対策のため来場できなかった子どもたちについて、「とても残念だが、来年こそは目の前で喜ぶ顔が見たい」と次回に期待を寄せた。

総評する益田文和実行委員長
プレゼンテーターは大岡敏孝環境副大臣

新しい世代の活躍、そして既存のシステムの課題を解消する新しいテクノロジーの活用が目立った今回の受賞取り組み。このように人間、技術ともにアップデートを重ねながら、持続的な社会は形成されていくのだろうと感じた。

環境大臣賞受賞者と実行委員全員で「GOOD!」な記念撮影

【環境大臣賞・受賞一覧】※環境省報道発表資料より抜粋
○最優秀賞(1件)
・自然を傷つけない屋根上太陽光発電とグリーンテックで環境に優しいエネルギー循環の実現【株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(全国)】

○優秀賞(3件)(※応募順)
・海のゴミを資源に〜漂着海藻から「アルギン酸」を生み出す世界トップメーカー〜【株式会社キミカ(千葉県富津市及びチリ共和国)】
・池ヶ原湿原の環境保全活動を発信!~ヨシストローで地球環境保全もヨシ!~【勝⼭市⽴平泉寺⼩学校(福井県勝⼭市など)】
・TOKYO WOODの家 ~多摩の檜でつくる東京の家~【株式会社⼩嶋⼯務店(東京都 神奈川県 埼⽟県)】

○各部門賞(7件)
(NPO・任意団体部門)
・スマートグッドライフ湘南物語<SDGsで取組む脱炭素社会づくり>【湘南・省エネネットワーキング(神奈川県 湘南地域)】
(企業部門)
・木材を利用した地盤補強「環境パイル」で地中に炭素貯蔵〜森林を地中に〜 【兼松サステック株式会社(全国)】
(地域コミュニティ部門)
・「森 里 海 ひと いのちめぐるまち」の実現を目指して~産学官民が連携した生ごみの再資源化~【宮城県南三陸町(宮城県)】
(自治体部門)
・ 人口減少先進地の挑戦!地域を超えて支え合う、「お互いさま」が広がるプロジェクト「ヒダスケ!」【岐⾩県⾶騨市(岐⾩県⾶騨市)】
(学校部門)
・「捨てればゴミ、活かせば資源」プロジェクト~美しい地球を次世代に~【大阪府立堺工科高等学校 定時制の課程 (大阪府及び被災地)】
(個人部門)
・ Fairy forest~もったいないに架け橋を~【山崎佐知子(東京都)】
(ユース部門)
・ 傘のシェアリングサービス「アイカサ」【株式会社 Nature Innovation Group (全国)】

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