知っておきたい!ドローン新制度「機体登録制度」まるわかり

2020年6月に公布された改正航空法により、無人航空機(ドローン)の機体登録制度が創設されます。それに伴い、2021年11月25日に発表された「無人航空機登録要領」により2022年6月20日に義務化される登録制度の内容が明らかになりました。

機体登録しないとどうなるの?リモートIDってどうしたらいいの?など、機体登録制度はドローンを趣味で楽しむ人も仕事で活用する人も気になる点がたくさんあると思います。そこで今回は、気になる機体登録制度の内容をざっくりと読み解いて行きたいと思います。

機体登録制度ってどんなもの?

2022年6月20日以降は、基本的に全ての無人航空機の機体登録が義務となります(100g未満の機体、研究開発中の機体、屋内を飛行させる機体は除く)。登録した機体には、国土交通省から発行された個別の登録記号を記したラベル等を貼る、もしくは「リモートID」機能を搭載する必要があります。機体登録の義務を怠ると、50万円以下の罰金または1年以下の懲役が課されます。

無人航空機登録ポータルサイト

なぜ機体登録制度が必要なの?

近年、ドローンの利活用が進む一方で航空法違反事案や事故が多発しています。航空法違反による検挙数は2016年は36件だったのに対し2018年には82件に、国土交通省への事故報告数は2016年は55件だったのが2018年には79件、2021年は10月時点で86件に増加しています。

また、2019年には空港周辺でのドローンらしき飛行物体の目撃により滑走路が一定時間閉鎖される事案も発生し、航空の利用者や経済活動に多大な影響を与えました。これらのことから、ドローンの所有者把握の仕組みをつくることにより、事故等の原因究明や安全上必要な措置の確実な実施を図り、さらなる安全の向上を目指す…ということが機体登録制度創設の目的です。

2022年にはレベル4(有人地帯における目視外飛行)の解禁によりドローンの利活用がさらに進んでいきます。そのためには、安全性のさらなる向上が必須になるということになるわけですね。

機体登録の対象となるドローンは?

機体登録は、基本的に100g以上の全てドローンが対象となります。現行法では200g以上が「無人航空機」という定義となり改正航空法の主な対象ですが、2022年6月20日より無人航空機の定義が機体重量100g以上となります。これにより、今までは200g未満で「模型航空機」とされていたドローンが「無人航空機」となり、改正航空法の主な対象となるだけでなく機体登録も必要となります。したがって、現行法では模型航空機となる199gのDJI Mini2 やMavic Mini も2022年6月20日から無人航空機です。

199gの高機能ドローンDJI Mini2

また、逆に安全上、問題のある機体は登録をすることができません。DJIやParrotなどのメーカーが製造した機体はメーカーが国土交通省に「登録の要件(≒安全性)を満たした機体」を申告することになっていますので、各メーカーが申告し、国土交通省が登録の要件を満たしていると判断された機体は登録ができます。しかし、メーカーが申告をしなかった機体(古い機種など)や、自作機等で登録の要件を満たしていない機体は登録することができない=飛ばすことができないので注意が必要です。

どうやって機体登録するの?どれくらい有効なの?

登録申請は「ドローン情報基盤システム」によりオンラインで提出するか、郵送により提出することができます。登録は3年間有効で、3年を超える場合は「登録の更新」も可能です。もちろん、機体の仕様変更等による「登録の変更」や機体の売却や廃棄等による「登録の抹消」も申請することができます。

また、修理によって同じ部品を使ってアームやプロペラを交換するような場合は特に問題ありませんが、機体のシリアルNo.が変わった場合は「別機体」として新規登録が必要になりますのでご注意ください。

機体登録に料金はかかるの?

機体登録には手数料納付が必要になります。金額は申請方法(オンライン or 郵送)や本人確認方法によって異なります。納付はクレジットカードか(本人確認を郵送で行う場合を除く)、Pay-easyによる銀行ATMまたはインターネットバンキングとなります。

※「2機目以降」は申請者が登録又は更新申請を同時にする無人航空機の数が2機以上の場合に限る

価格表を見る限り、オンラインで個人はマイナンバーカードを、法人はGビズIDを使い、所有している登録対象の機体を全て同時に機体登録申請をするのがよさそうです。

何を登録したらいいの?

機体登録に必要な項目は下記のとおりです。おおまかに分けても17項目あります。

  • 無人航空機の種類(飛行機 / ヘリコプター / マルチコプター…など)
  • 無人航空機の形式
  • 無人航空機の製造者
  • 無人航空機の製造番号
  • 所有者の氏名又は名称及び住所
  • 代理人により申請するときは、その氏名又は名称及び住所
  • 使用者の氏名又は名称及び住所
  • 申請の年月日
  • 無人航空機の重量の区分(25kg未満 / 25kg以上)
  • 無人航空機の改造の有無
  • 所有者の電話番号、電子メールアドレス
  • 法人・団体の場合の所有者の氏名並びに部署名及び事務所所在地
  • 使用者の電話番号、電子メールアドレス
  • その他の連絡先として、法人・団体の場合の使用者の氏名並びに部署名及び事務所所在地
  • リモートID機能の有無
  • 無人航空機が登録の要件を満たしていることの申告(メーカー機はメーカーで申告)
  • その他国土交通大臣が必要と認める事項

※「使用者」は無人航空機を飛行させるものとは異なり、無人航空機の使用責任・管理責任をもつもの

リモートIDってなに?

リモートIDは現在国内でも開発中の無人航空機の登録記号を遠隔から識別するための機

能で、内蔵型と外付型の2タイプのいずれかを搭載する義務があります。11月に開催された国際ドローン展ではTEADのブースで外付リモートID端末のモックが展示されていました。

TEAD製外付リモートID端末のモックアップ。サイズ:40×30×14mm、重量12g、約8時間動作する予定

BluetoothやWi-fiで300mほど通信(Bluetooth 5.X, Wifi Aware, Wifi Beacon)する機能を持ち、専用受信機やスマートフォンなどで機体登録番号、製造番号、位置や速度の情報、時刻、認証情報を受け取ることができます。

ドローンへのリモートID機能の搭載は世界的な動きにもなっていますので、現状発売されている機体でもファームウェアのアップデート等で(ハードウェアの追加なく)Wi-fiを介したリモートID機能の搭載が可能な場合があります。ただし、現状ではまだ各メーカーとも国内のリモートID対応に対して明確な情報発信をしているところは多くありませんので、引き続きウォッチしていきたいと思います。

外付リモートID端末の搭載が難しい機体はどうしたらいいの?

現在開発されている外付リモートID端末は12g程度になる予定です。機体の構造や、そもそもの積載重量の問題(機体重量が100〜200gくらいの小型機体など)で外付リモートID端末の搭載が難しい場合でも、

  • 事前に国土交通大臣に届け出た区域の上空において必要な措置を講じて飛行
  • 係留した状態で飛行
  • 法執行機関が警備その他の特に秘匿を必要とする飛行
  • 2021年12月20日〜2022年6月19日に初回登録申請が行われた機体での飛行

は認められます。ですので、12月20日から先行して行われる登録申請はぜひしておいてください。登録の要件を満たしている機体であればリモートID機能の搭載なしでもしばらく飛行させることができます(後述の機体登録番号の物理的表示は必要です)。

登録記号(機体登録番号)の表示は必須!2022年6月20日以降の機体に必要なこと

機体登録申請が通ると「JU」から始まる12桁の登録記号(大文字アルファベット+数字)が割り当てられます。無人航空機の所有者はこの登録記号を物理的に機体に表示する義務があります。登録記号は、所有者不明の機体を拾得したときなどに確認するものになりますので、耐久性のある方法で鮮明に表示する必要があります。具体的には…

  • シール、油性ペンでの記載、刻印、塗装などの方法は自由(かんたんに消えない方法)
  • 表記する場所は胴体のわかりやすい場所で、ドライバー等の工具を用いずにかんたんに取り外しできない場所(バッテリーの蓋等はNG)
  • 墜落時に飛散しにくい場所(アームなどは折れて紛失する場合があるのでNG)
  • 記載数字の高さは25kg未満:3mm以上、25kg以上:25mm以上

となっています。DJIの機体で例えると、Mavic 3の胴体上部に3mm以上の高さの文字で擦れても容易に消えないラベルシールを貼る…というイメージです。Mavic 2シリーズやAir2sなどは機体上面後部はバッテリーを取り付けているので、そのバッテリー上面に登録記号を記載していてはNGです。その場合は機体上面の前方などに貼り付ける必要があります。

Mavic 3への記載例。機体筐体表面がザラザラしていて貼付けにくいので工夫が必要かも

また、上記に伴い、飛行前確認に登録記号の表記が適切になされているかという確認も必要になります。

  • 表示されている登録記号に汚れ、かすれ、剥がれ等がなく、明瞭に判断できるか
  • 飛行しているときにリモートID機能により電波が発信される状態であるか
  • リモートIDが外付けの場合は適切に取り付けられているか

これらの確認を良好な状態で確認してから飛行する必要があります。

規制と利活用のバランスを大切に。そのためにはユーザー側の意識向上も必要

アクセル(利活用)とブレーキ(規制)のバランスは大切です。ブレーキの効かない乗り物は凶器となってしまいます。今回の機体登録制度は、よりアクセルを踏むために必要なブレーキとなります。普段からルールを守っている方にとっては負担が少し増えるかもしれません。しかし、ルールをしっかりと守っている人ばかりでないことも確かなので、今後のドローンのより発展的な利活用に必須の基礎ルールとなることでしょう。

また、単純な規制だけではなく、緩和的な措置も用意されているのも見逃せません。事前登録によるリモートID搭載免除だけでなく、今回は趣味で楽しんでいるラジコンユーザーに対しては、ラジコンクラブやラジコン団体による一定の管理下にあることを条件に緩和措置が取られています。これらの制度をよく理解して活用することでユーザー側の負担を一定程度軽減することも可能かと思います。

泣いても笑っても2022年6月20日より始まる機体登録制度。まずは12月20日から始まる事前登録を活用するところからスタートしましょう!

※2022年から始まる新制度については、こちらの「

2022年新設ドローン操縦ライセンス制度導入ガイド

」の記事も併せてご参照ください。

参考資料:

WRITER PROFILE:田口厚

株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)代表。観光PR空撮動画制作、ドローンの活用をテーマにした講習等の企画・ドローン操縦士スクール講師、ドローン導入支援等も行う。JUIDA認定講師。DJIインストラクター。

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