直接撮像された325光年先の太陽系外惑星、ヨーロッパ南天天文台が画像公開

【▲パラナル天文台「超大型望遠鏡(VLT)」の観測装置「SPHERE」を使って撮像されたケンタウルス座b星(左上)周辺の様子。矢印で示された右下の天体は系外惑星「ケンタウルス座b星b」。ケンタウルス座b星からの光はコロナグラフに隠されている。右上に見えているのは背景の星(Credit: ESO/Janson et al.)】

こちらは「ケンタウルス座」の方向およそ325光年先にある連星「ケンタウルス座b星」(b Centauri、またはb Centauri AB)の周辺を捉えた画像です(ケンタウルス座ベータ星(Beta Centauri)とは異なります)。ストックホルム大学の天文学者Markus Jansonさんを筆頭とする研究グループが、チリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」の観測装置「SPHERE」(※)を使って取得しました。

※…Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch(分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査)の略

ケンタウルス座b星は画像左上に位置していますが、その光はコロナグラフ(ステラーコロナグラフ)を使って遮られています。注目は右下の矢印で示された天体です。VLTを運用するヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、これはケンタウルス座b星を公転する太陽系外惑星を直接捉えられたものなのだといいます。

Jansonさんたちが発見したこの系外惑星は「ケンタウルス座b星b」(b Centauri b、またはb Centauri (AB)b)と名付けられました。研究グループによると、ケンタウルス座b星bは質量が木星の約10.9倍で、主星であるケンタウルス座b星から約550天文単位離れた軌道を公転しているとみられています。太陽から木星までの平均距離が約5.2天文単位ですから、ケンタウルス座b星bはその100倍ほども主星から離れていることになります。

ESOによると、これまで太陽と比べて3倍以上重い星の周囲で系外惑星が見つかった例はなく、質量が大きな星の周囲では惑星が形成されにくいと考えられてきたといいます。惑星は若い星を取り囲むガスや塵を材料として形成されると考えられていますが、重い恒星は表面温度が高く、紫外線やX線をより多く放射するため、周囲に存在するガスなどの物質を軽い恒星の場合よりも速く蒸発させてしまうのがその理由とされています。

【▲連星「ケンタウルス座b星」(奥)を公転する系外惑星「ケンタウルス座b星b」(手前)を描いた想像図(Credit: ESO/L. Calçada)】

ところが、ケンタウルス座b星は太陽よりも重くて表面温度が高いB型星を含み、連星全体の質量は太陽の6~10倍と推定されています。Jansonさんは「B型星の周囲は一般的にとても破壊的で危険な環境とみなされているため、大きな惑星が形成されることは非常に難しいと信じられてきました」と語ります。

今回のケンタウルス座b星bの発見は、B型星周辺のように厳しい環境でも惑星が形成され得ることを示すものとなりました。研究グループはケンタウルス座b星bが別の場所で形成された後に現在の軌道まで移動したか、ケンタウルス座b星を取り囲んでいた円盤の一部が自身の重力で潰れたことで速やかに形成されたのではないかと予想しています。Jansonさんはケンタウルス座b星b形成の謎に迫るべく、VLTや建設中の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」による今後の観測に期待を寄せています。

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Image Credit: ESO/Janson et al.
Source: ESO
文/松村武宏

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