社説:ウクライナ緊迫 威嚇より対話の継続を

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 ウクライナ国境で緊迫した状況が続いている。

 ロシアが軍部隊を増強し、米欧諸国はウクライナ侵攻への準備と警戒を強めている。ロシア側は米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)こそ国境近くで軍事活動を強化していると主張する。

 先週、米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領がテレビ電話で会談したが、互いに反発し主張は平行線をたどった。

 このままでは軍事衝突が起きかねない。2014年のロシア軍によるクリミア侵攻、併合の記憶は新しく、予断を許さない。

 まずロシアは国境付近から部隊を撤収し、威嚇の姿勢を改めるべきだ。米国もロシアの警戒心を解くように努め、互いに対話を重ねなければならない。

 ウクライナは旧ソ連解体で独立した後、国内は親欧州と親ロシアの間で揺れ動いてきた。ロシアに接する東部では、クリミア併合後も紛争が続いている。現在のゼレンスキー政権は反ロ傾向を強め、NATO加盟を目指す。ロシアにとっては許容できない一線だ。

 プーチン氏はミサイル施設がウクライナに置かれたら「7~8分でモスクワに届く」と危機感を表し、先の米ロ首脳会談でNATOの軍備を東方拡大しない法的保証を求めた。バイデン氏はロシアが侵攻してくれば中欧などに部隊を追加派遣すると伝えたという。

 米ロは互いに疑心暗鬼を募らせているのが現状だ。

 米国の有力紙は、ロシアが来年初めにも攻撃を始めるとの見方を報じた。ロシアは強く否定し、米側が対立をあおっていると反発している。

 先日開かれた先進7カ国(G7)外相会合はロシア軍増強に非難声明を出し、NATO当局者はウクライナに侵攻すれば「高い代償を払うことになる」と警告した。

 さらに、米国は同盟国とともに強い追加制裁を加えると表明している。ロシア産天然ガスをドイツに送るパイプラインの停止が含まれており、ロシアだけでなく、欧州各国にも影響が出る。

 忘れてならないのはウクライナの主権だ。ロシアは、旧ソ連の構成国との意識が強く、影響下に置こうとしているのではないか。

 ウクライナ国境をはさんで、かつての東西冷戦のように対立を深めるのは危険だ。国際秩序をさらに不安定にしかねない。ロシアと米欧が対話を続けるよう、日本を含め国際社会は働きかけを強める必要がある。