<北朝鮮内部>中国に越境試みた3人銃撃で民心悪化 憤怒広がる 1人即死か

◆情報拡散し銃撃に怒りと反発

12月初旬に中国に越境しようとした3人を北朝鮮の兵士が銃撃し死者が出た事件から約10日が過ぎた。銃撃があった両江道(リャンガンド)では、事件に関する情報が広く拡散し、住民たちの怒りを買っている。(カン・ジウォン

(参考写真)銃を携行して中国との国境警備に動員された民間人。「労農赤衛隊」と思われる。2017年9月末に平安北道を中国側からパク・ヨンミン撮影(アジアプレス)

◆1人は即死か

事件は鴨緑江上流の金正淑(キムジョンスク)郡で発生した。両江道に住む複数の取材協力者によれば、凍結した川を徒歩で中国に越境しようとした3人に国境警備の兵士が発砲、1人がその場で即死し、2人は逮捕されたという。

事件を伝え聞いた住民の間からは憤怒の声が上がっている。両江道に住む取材協力者たちが聞き取った意見を紹介したい。

◆越境は最後の手段だったはず

「国から脱出しようとした人を当局は『背信者』だと批判・宣伝するが、今回は、住民たちは皆、同情して怒っています。もう暮しは限界。多くの人が飢え、寒さに震えていますが、解決する方法がないのを知っているから。(渡河しようとした3人は)どれだけ辛い決心をしたことか。政府は人民の困窮に何の対策もせず、統制だけを厳しくしている。挙句に撃ち殺すなんて」(市場の商人)

「何も殺さなくてもいいではないかと、周囲の人は皆反発している。配給もない、商売も大不振。どうやって生きていけというんでしょう? 耐えるにも限界があるんです。越境しようとした人たちにとっては最後の手段だったはず」(労働者)

「中国に渡河しようとする者は無条件に撃てと、国境警備兵は命令されています。暮しがしんどくて逃亡しようとするのを若い兵士たちもよくわかっているはず。射殺してしまった兵士は動揺していることでしょう」(労働者)

「統制が厳しいので、息が詰まりそうです。最近、人々は自らのことを『穴倉で暮らすブタのような人生だ』なんて言っています。でもブタは腹が減ったら鳴くことができるだけれど、ここの人間は声も出せない。外国の人たちは、こんな有り様だということを知っていますか?」(家庭の主婦)

金正恩政権は昨年8月に、国境河川に許可なく接近する者は警告なく射撃するという布告を発表していた。新型コロナウイルス流入を防ぐという名目で、昨年から中国との国境は厳戒態勢が続いている。未確認ながら、豆満江、鴨緑江沿いの複数の地域で、中国に越境図った住民に兵士が銃撃を加えたという情報が複数ある。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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