年金を受取る人に届く「年金振込通知書」とは?何を確認すべきか解説

2021年10月上旬、年金振込通知書の宛名と中身を取り違えて誤発送するという出来事がありました。愛知県、三重県、福岡県を中心に約97万人もの人に送ってしまった後、自身のものでない内容の記載に気づいた人の問い合わせで、発覚したそうです。年金振込通知書は、言わば給与明細書と同じ。誰のものか分からないといっても、印刷ミスという理由で簡単にかたづけられない問題です。

この年金振込通知書は、年金をもらっている人にとっては見慣れた書類かもしれませんが、受取っても読むのがおっくうだとそのままになっているかもしれません。

今回は、年金をもらうのはまだ先という人も、年金通知書がどんなもので、何を確認すべきかチェック事項を解説していきます。


年金振込通知書とは

年金通知書とは、金融機関等の口座振込で年金を受取られている人に対して、日本年金機構から6月から翌年4月までの間に2ヵ月に1回、毎回支払われる金額をお知らせするものです。記載内容は、振込先や年金額のほか年金から天引きされる税金や保険料が書かれています。

形式は、年金振込通知書、年金通知書と年金額改定通知書がいっしょになったもの、金融機関等の振込先が変更になった場合、年金振込額が変更になった場合などがあります。年金支払額や受取金融機関に変更があった場合には、その都度お知らせがあります。

年金額改定通知書と年金額振込通知書

年金は2ヵ月に一度、偶数月の15日に後払いで振り込まれます。15日が土日・祝日の場合には、その前の平日に振り込まれます。たとえば12月に支払われる年金は、10月分と11月分が後払いされているものです。

年金振込通知書に記載されている年金額は、同じ金額もらえるものではなく、賃金変動と物価の変動をもとに調整があり、年度ごとに年金額の改訂が行われます。年金額の改定が実施されるのは、4月分の年金からになります。

年度の最初にあたる4月分が振り込まれるのは6月なので、6月上旬には年金振込通知書と年金額改定通知書がつながったハガキで届きます。実際に自分の年金額がその年度にいくらになるか、国民年金・厚生年金の合計額が書いてあるので、「年金額改定通知書」でチェックしておきましょう。

年金通知書に記載されている内容

年金振込通知書には次の内容が記載されています。

・振込先
・年金支払額
・介護保険料
・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
・所得税額と復興特別所得税の合計額
・個人住民税額
・控除後振込額

それでは、一つずつチェックしていきましょう。

■年金振込通知書

■振込先

年金が振り込まれる金融機関名や支店名が書かれています。

年金を受取ることができる時期には、終活の一環として金融機関の口座を解約して整理する方も出てきます。年金の振込先を変更したいときには、「年金受給者受取機関変更届」を年金事務所などに提出します。

受取金融機関の変更には、1ヵ月ほどかかるので、変更が完了するまでは今までの年金受取口座を解約しないように注意しましょう。変更届は年金事務所でもらえるほか、日本年金機構のサイトからも入手可能です。

■年金支払額

1回あたりの年金支給額が記載されています。この金額は税金や健康保険料、介護保険料が差し引かれる前の金額になっています。

「参考:前回支払額」が「0円」になっている場合には、年金の金額が支給停止されているなどで、前回の定期支払月に支払いがなかった場合です。また「*」の場合には、今回支払いのある年金が、新たに年金を請求されたことによる初めての支払いであることを記載しています。

■介護保険料額・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料

65歳以上の人は、年金から介護保険料が差し引かれます。介護保険料額の下の欄は空欄になっていますが、75歳未満は「国民健康保険料」、75歳以上の場合には「後期高齢者医療保険料」が記載されます。

なかには国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の記載がない方もあるかもしれません。国民健康保険料や後期高齢者医療保険料は、年金からの特別徴収(天引き)では口座振替を希望することもできるからです。しかし、介護保険料は本人の希望によって、特別徴収を中止することはできないしくみになっています。

なお、介護保険料額は、市区町村から通知された介護保険料額と違っている場合があります。6月に送付される年金振込通知書には、6月に特別徴収される金額が表示されています。

また市区町村から送られてくる通知書には、その年度1年間の保険料全額と徴収予定の保険料額が記載されています。介護保険料の金額が変更になった場合には、市区町村と日本年金機構との情報交換のスケジュールで把握できないことがあるようです。

■所得税額および復興特別所得税

老齢年金には所得税がかかります。年金額が年158万円(65歳未満の人は108円)を超える人は課税の対象になり、受取る時点に年金から所得税が差し引かれます。この欄には、今年の年金額と「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の内容をもとに計算された所得税と復興特別所得税の合計額が記載されています。扶養親族等申告書を期限までに提出していないと、各種控除が適用されないまま多く所得税などが源泉徴収されることになります。

なお、扶養親族等申告書を出し忘れた場合でも、確定申告をすれば各種控除の適用を受けることができます。

■個人住民税額

前年の所得に応じて計算された税額です。年金から特別徴収(天引き)されます。

■控除後振込額

税金や介護保険料や健康保険料などの社会保険料が差し引かれた後の振込額です。

年金振込通知書の疑問を解決するには

年金振込通知書は、必ずしも保管しておくべき書類ではありませんが、収入を把握するのに役立つので、1年程度は取っておくとよいでしょう。もし、年金振込通知書をなくした場合でも、最寄りの年金事務所やねんきんダイヤルに連絡すれば直近のものを再発行してもらえます。年金記録や年金見込額などを調べるためにねんきんネットを活用する人も多いと思います。このねんきんネットでは、「受給に関する各種通知書の確認」や「再交付申請」などにも活用できます。

また年金から特別徴収されている金額に疑問やわからないことがある場合には、項目によって問い合わせ先が違います。

・所得税額…所轄の税務署
・住民税額…お住まいの市区町村
・介護保険料額・国民健康保険料…お住まいの市区町村
・後期高齢者医療保険料…お住まいの都道府県の広域連合

これからの生活に年金振込通知書を活かす

今回の年金振込通知書の誤発送では、「年金振込通知書の送付理由」、「年金の制度・種類」、「基礎年金番号・年金コード」、「振込先金融機関及び支店」、「令和3年10月から令和4年4月までの年金支払額・年金から特別徴収する保険料等・所得税額および復興特別所得税額・控除後振込額」及び「前回支払額」の記載内容が誤って印刷されていたそうです。個人名は流出していません。

なお、誤発送が見つかった後には、早急に正しい記載の年金振込通知書が発送されたようです。この年金振込通知書は、年金振込額が変更になった場合の様式でした。

老後の生活を支える年金です。これからは、年金振込通知書のハガキが届いたら、どんなものが特別徴収されているかをきちんと確認しておきましょう。確定申告をすれば、税金の還付が受けられそうな方は、ぜひチャレンジしてみてください。

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