パ・リーグが“国内初”試合映像NFT事業参入へ メルカリとタッグでファン層拡大

イベントに出席した袴田彩会アナ、PLM・根岸友喜氏、メルカリ・伏見慎剛氏、元ロッテ・里崎智也氏(左から)【写真提供:メルカリPR事務局】

「パ・リーグ Exciting Moments β」を年内にスタート

パ・リーグ6球団、およびパシフィックリーグマーケティング株式会社(以下、PLM)は16日、株式会社メルカリとNFT事業で連携し、共同事業としてパ・リーグ6球団の名場面やメモリアルシーンをコレクションできる「パ・リーグ Exciting Moments β」を年内に開始することを発表した。日本国内の試合映像をNFTで利活用するのは初のケースとなる。

NFTとはブロックチェーン技術を活用し、簡単にコピーのできるデジタルデータに対し、“世に一つだけ”という資産的な価値を付与、新たな売買市場を生み出す技術のこと。今回の事業はパ・リーグ6球団の名場面を動画コンテンツとしてコレクションできる公式のサービスとなる。

初期のラインナップ「Series1-21 Season Best Players」では2021年シーズンで活躍した選手を中心に、合計18プレーを収録。シーンや選手に応じて、星の個数でレアリティが付いており、専用ウェブサイトで購入することできる。公式戦の映像ではダウンロードが禁止されているが、購入したコンテンツは自身が保有するだけではなく、サービス内の機能を活用してSNS等でシェアすることも可能となっている。

最低価格2000円からで、レアリティは星2つから星4つ。数量はレアリティにより変化する。初期ラインナップで星4つの付くオリックスの山本由伸投手やソフトバンクの千賀滉大投手ら“エース級”の価格は25000円となっている。

実際の購入画面【写真提供:メルカリPR事務局】

このサービスの背景は? 観客数激減も3倍になったインターネット視聴者数

この施策の背景にはコロナ禍のプロ野球の来場者減少も大きく関わっている。年間約1100万人から今年は無観客試合や入場制限があったため、約330万人に。しかし、試合映像や「パーソル パ・リーグTV」などのYouTubeの視聴者数は2019年から約3倍となった。パ・リーグ6球団が進出した米国の市場でも新たなファンを獲得している。

都内で記者会見に出席したPLMの根岸友喜CEOは「球場内ももちろん大事ですが、球場外でファンの皆様とのエンゲージメント(関わり、接点)を高められるか。これを機にどうやって新しいファンを増やすかが我々の課題」と新しい価値を提供していく狙いを明かした。

また、権利を持つ2012年以降の映像のコンテンツ化だけでなく、それ以前のレジェンド選手の映像コンテンツなども権利元と話し合いを進め、順次サービスを展開していきたいという意向も示した。ファン拡大には欠かせない子どもたちも親しめる金額設定なども検討していくという。

「プロ野球で言いますと、歴史的にコンビニエンスストアや駄菓子屋にプロ野球チップスという素晴らしい商品が並んでいたと思います。具体的な戦略はこれからになりますが、お子さんがお買い求めしやすい価格にすることも重要だと思っています」と新しい世代の野球ファンも視野に入れ、サービスを展開していく。

購入時のサイトでは、キューブ上のアイテムが動き、その中で試合映像を楽しんでもらう設計となっている。ECサイトで買い物をするような簡単な操作で、パ・リーグの名シーンをコレクションすることができる仕組み。試合映像以外ではDeNAや西武がすでにNFT事業を行っている。海外スポーツでも多く取り入れられ、ファン獲得につなげている。このような新サービスが、今後も日本の野球界で進んでいくことになるだろう。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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