<社説>新沖振法5年期限案 長期計画の根拠が揺らぐ

 2022年度からの新たな沖縄振興の根拠法となる新法について、自民党の沖縄振興調査会が適用期限を従来の10年から5年に短縮する案の議論を始めた。沖縄の目指す姿を10年単位で定めてきた沖縄振興計画の整備や内容にも影響するだけに、拙速な議論は避けなければならない。 5年刻みとなれば、制度がいつまで続くのか見通しづらいなど自治体や企業にとって制度の使い勝手が悪くなり、基地返還跡地の利活用など長期を要する計画を後押しする効果も揺らいでしまう。辺野古新基地建設を巡って国と対立する玉城デニー県政に対する「揺さぶり」で期間の短縮が持ち上がっているとすれば、なおさら言語道断だ。

 10年単位の沖縄振興計画の根拠法として、法律の適用期間も10年であるべきだ。

 これまで10年の時限立法として定めてきた沖縄振興特別措置法(沖振法)は、企業誘致に必要な各種の特別措置を規定するほか、県と市町村が使途を比較的自由に決められる沖縄振興交付金(一括交付金)、公共工事の国庫補助率をかさ上げした高率補助など、「沖縄の自立的発展」に資する制度を盛り込む。

 何より、首相が沖縄振興基本方針を策定すると規定していることが根幹だ。この基本方針に基づいて県が沖縄振興計画を策定することとし、振興計画の円滑な実施に対し国が「必要な援助を行うように努める」と明示する。

 沖振法にのっとり、内閣に沖縄担当相を置き、内閣府への沖縄担当部局の設置、各省庁にまたがる沖縄関係予算を内閣府がまとめて予算付けする一括計上制度、現地で事業を執行する沖縄総合事務局の運営などを展開してきた。

 沖振法が失効すれば、国の責務で実施するこれらの沖縄振興体制も前提を失うこととなる。自民党内では法律を5年に見直す理由として、政策効果をその都度検証していけるなどとしているが、国の責務による沖縄振興をどう考えるのかは見えてこない。

 法律期間の短縮に伴って延長要請などの頻度が増えて国への従属性が強まれば、沖縄振興の目標である自立的発展を遠のかせて本末転倒だ。

 むしろ政府与党内には、振興は基地の受け入れに対する見返りだとする「リンク論」を唱える声が消えず、期間短縮を通じて国の関与を強めようとする意図も見え隠れする。沖縄振興を取引の材料に用いることは許されない。

 一方で、復帰から半世紀がたつ中で沖縄側も、いつか来る沖縄振興体制の出口を見据えた備えが必要だろう。復帰40年の際には、沖縄総合事務局が担う事務や権限、財源の移譲を沖縄県で受けるという提起もあったが、その後、議論は低調になっている。

 自治の能力を高め、自己決定の枠を広げる。中央の意向に沖縄の自治が左右されないよう、自立の道筋を自ら構想し続けなければならない。

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