違いわかる?究極の技巧「和紙マネキン」発表 従来品のわずか20%の重さ 輸送コスト、労働時間を大幅削減

和紙マネキン(右)

マネキン人形制作会社のトーマネ社は16日、都内で和紙マネキン「Waltz」を開発したことを発表した。並べられた2体のマネキンは、片方がFRP(強化プラスチック)を素材に、もう一方が和紙でつくられたものだ。マネキンに触れると和紙製は、ザラザラした感触があり見分けられるが、見た目に関しては、近くに寄らないと区別ができない仕上がりとなっている。

和紙マネキン かなり近づくと違いが分かる
従来のFRP(強化プラスチック)を素材としたマネキン 表面はなめらか

同社の工場がある茨城県の無形文化財「西ノ内和紙」を素材として採用。同社が制作している従来のFRP製品と比較して80%もの軽量化に成功した。登壇したトーマネ代表取締役・岩下久起社長は、ボディー部分がわずか620グラムだと明かし「今まで使っていたボディーとは重さが桁違いに違います」と話した。軽量化により、輸送コスト・組み立てに関する作業量・労働時間の削減にも貢献できるという。

製作期間は1年半にわたった。これまでのマネキンと全く違う素材を使用するため「和紙の特性を生かした組み立て方や立たせ方の研究」「ファッションの世界で通用する表現に仕上げる工夫」を行った。

和紙マネキン 座ってるポーズも
和紙マネキン ちなみに写真の向きは正しいです
筋肉部分まで細かく表現されている

プロトタイプ版1体をつくるに、2人がかりで3カ月を要した。小さい和紙を上から何枚も貼り重ねた構造上、「和紙を重ねた跡がはっきりと浮かぶ」「製作時間の長さ」二つの問題にぶつかり、克服に尽力した。「和紙に特殊な加工を施すことで、大きな面を1枚の和紙で貼ることが可能になり、同時に二つの問題をクリアしました」と説明した。現在は、1人が2週間に1体ペースで製作できるという。

実際に用いる大きな和紙を持って、説明する岩下社長

製作コストは、6500~1万円の従来品と比べ約2倍となるが、成形した和紙造形を再び和紙に戻すことが可能。SDGsに添った環境・文化・地域貢献の商品を目指した。「西ノ内和紙を素材として使うことで、需要を生み出し、認知を拡大することで無形文化財が後世に残るためのきっかけになったり、地域を盛り上げることができればと考えています」と言葉に力を込めた。

トーマネ代表取締役・岩下久起社長

(よろず~ニュース・松田 和城)

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