【薬剤師会】独自の研究助成先を決定/オンライン服薬指導のあり方など/より強固なエビデンスに基づく政策提言に前進

【2021.12.17配信】日本薬剤師会は12月16日に定例会見を開き、独自の研究助成先を決定したことを報告した。血糖値をモニタリングするウエアラブルデバイスを薬局の活動にどう生かすかや、オンライン服薬指導が対面とどう違うのかなどの研究を含め、4件を決定。同助成は、今年9月に募集を告知していたもの。政府でもエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(EBPM=証拠に基づく政策立案)を進める動きがある中で、薬剤師会としては助成研究のデータを政策提言力に生かしていきたい考え。

日本薬剤師会は、9月に「薬剤師職能振興研究助成」事業の募集を開始していた。同事業は医療、薬事衛および薬局機能について、発展を希求する研究や状況調査に対して助成することで国民の健康な生活への貢献を目的に掲げている。

このほど決定したのは以下の4件。

1、岡田 浩氏(所属:京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
「薬局薬剤師による2型糖尿病患者のCGM(Continuous Glucose Monitoring)データを用いた血糖自己管理支援プログラムの開発とその効果の検証」
助成額 2,000,000円

2、林秀樹氏(所属:岐阜薬科大学地域医療実践薬学研究室)
「オンライン服薬指導では入手困難な情報が疑義照会等に及ばす影響の「Pharmaceutical Intervention Record(薬学的介入報告)」を活用した解析」
助成額 1,600,000円

3、近藤悠希氏(所属:熊本大学大学院生命科学研究部・薬学部臨床葉理学分野)
「保険薬局における腎排泄型薬剤適正使用推進のための教育プログラムの作成」
助成額 1,600,000円

4、富永佳子氏(所属:新潟薬科大学)
「生活習慣病を有する患者に対する行動変容支援による重症化予防~地域医療ネットワークを活用した比較検討~」
助成額 1,400,000円

地域の薬剤師会と連携して研究・調査

専務理事の磯部総一郎氏は、調査について、補足説明した。

まず、今回の助成の前提について、「薬剤師の職能を確立し充実していきたいということで種々の活動をしている中で、我々の主張や業務改善のために活動の内容をデータ化して、実態や実情がどうなのか、どのぐらいの数をやってるのかとか、具体的にどのようなことをやっているのか、その効果はどうか、どうしたらもっといいのか、そういったことについてデータ・エビデンスを収集して、我々の政策に関する主張であったり我々の業務の改善につなげたいと考えている」とした。採択については30件以上の応募の中から、「新規性」「重要性」「発展性」「実現性」「社会的意義」の5つの観点で厳正に審査したとした。

1の岡田氏の研究については、神戸の須磨区薬剤師会、大阪の枚方市薬剤師会、神奈川の小田原薬剤師会と協力して実施するという。ウエアラブルデバイスによって24時間、血糖値に関与する数値をモニタリングすることによって、糖尿病患者の自己管理や薬局の関わりについて調査研究するもの。
磯部氏は、「政策提言でもウエアラブルデバイスで得られるデータを患者ケアに活用していく重要性も指摘しており、そういった提言にも資するものと考えられる」と述べた。

2の林氏の研究は、岐阜県薬剤師会と共同で実施する予定という。磯部氏は「オンライン服薬指導の問題は我々としても重要な関心事だ。研究はオンライン服薬指導と対面との違い、それによってどのように対応ができるのか、薬局での対人業務にどのような影響をもたらすのかということを研究するもので、基礎的なデータ収集にも資する」と紹介した。

3の近藤氏の研究は鹿児島県薬剤師会と連携する予定。4の富永氏の研究は佐渡市薬剤師会と協力して行う予定。

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