プロレスリング・ノアは新年1月1日に日本武道館大会『ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR” 2022』を開催する。
怪我から復帰した潮崎豪を挑戦者に迎えてGHCヘビー級王座の防衛戦を行う中嶋勝彦にインタビュー。
N-1 VICTORYを2年連続で制覇しGHCヘビーのベルトも獲得した2021年の振り返り、かつてはAXIZとして共に戦った潮崎豪との日本武道館決戦、GHCヘビー級ベルトへの思いと2022年の展望を語った。
【2021年振返り】
――2021年の振り返りとして、今年の印象に残った試合や思い出深い出来事、ご自身の中でこれだというのはありますか?
中嶋勝彦(以下、中嶋) これはもう二つ一緒ですね。印象に残った試合と思い出深い出来事。ほとんど同じなんですよ。ただ、ありすぎて何から答えたらいいのかわからないですね。髪切りマッチもしたし、(N-1 VICTORYの)初二連覇もしたし、丸藤正道からもGHCヘビーのベルト獲ったっていうのもでかいし、それこそ、この間の(拳王との)60分。年内だと大分多かったかなっていう…
――そうですよね。ご自身でもステップアップを感じられましたか?
中嶋 感じましたね。
――プロレスラーとしてのステージが上がった?
中嶋 そうですね。それとあと引き出しが増えたなという…
――なるほど。以前、プロレスTODAYの柴田編集長が中嶋ワル彦と書いたことがありましたが、その辺からスタイルチェンジして引き出しの幅が出てきたことは、自身でも変化を感じますか?
※2020年の中嶋勝彦。AXIZの潮崎を裏切りN-1を優勝し大胆不敵な姿勢を貫いた。
中嶋 引き出しというか、幅が広がったなっていうのはあります。
――中嶋勝彦選手の自我の強さが、出ているような感じがします。
中嶋 そうですか。
――はい。プロレスラーってそれがいいと思うんですよ。自我の強い人がやっぱり上がっていく世界だと思うので、今そういう部分が確実に来てる気がします。
中嶋 ありがとうございます。
――そして、拳王選手との二冠戦。60分フルタイムドローとなりましたけれども、金剛入りしてから、振り返って何か心境の変化はありましたか?
中嶋 金剛に入って…ノアはずっと金剛が引っ張ってきたっていうのがあったんですけどね。でも杉浦軍だったり、M’s allianceだったり、違うところで今年の上半期はそっちに話題性を持っていかれていたんですよ。なので、これではいかんなというところで。ちょうどN-1のタイミングだったので、そこでなんとか金剛で話題をとりたいなって。個人としても上に行きたいし、制覇したいなっていうのはあったんですけど、結果的に今年のN-1は金剛の拳王と俺で決勝戦ができたっていうのはよかったなっていうのはありますね、金剛として。
――結果論として、金剛がノアの至宝のワンツーベルトをちゃんと持っているっていうところでは、そうですよね。
中嶋 そうそう。現在そうですからね。
――なので、2021年最終的に金剛が主役の年だったと?
中嶋 言えると思いますよ。
――金剛メンバーに対して、何か伝えたいメッセージはありますか?
中嶋 メッセージ?
――はい。中嶋選手と拳王選手はGHCのヘビーとナショナルを持っていて、他の選手は持っていないというところが、拳王選手は発破をかけたいという発言がありましたけど、中嶋選手としてはどうですか?
中嶋 別に言わなくてもいい気がします。そもそも信念の強いメンバーだから、わざわざそんなこと言わなくてもいいって感じはありますね。
――もう自分でどんどん輝きを作っていってくれっていう感じですか。
中嶋 ベルトを持っている今、俺はベルトが獲得できたのは金剛だからだと思うんですよ。多分、拳王も思っているじゃないですかね?あのメンバーだったから獲れたんだと思うので。
――やっぱり絆みたいなものはこのチームはすごい強いですか?
中嶋 口にはしないですけどね。何かあると思いますよ。言葉にできないものは。
――なるほどですね。
中嶋 ジュニアはもうちょっと盛り上がってほしいなっていうのはありますね。
――そうですよね。
中嶋 ただ、ジュニアは今タダスケがけっこういろいろとがんばって、主張も良くなってきているので、もう少し。あとは結果だけかなっていう…
――そうですね。亜烈破選手も入ったんで、機動力面は上がった気がします。
中嶋 そうですね。
――空中殺法の使い手があまり金剛にいなかったところをうまくスポット的に入ったと感じました。そういう意味では、本当に2021年良かった年になってますね。
中嶋 そうですね。
【1/1潮崎豪戦に向けての意気込み】
――2022年の1月1日。元日興行の日本武道館大会ですが、潮崎豪との戦いというのは、前哨戦でも対決されてますが、実際復帰しての潮崎豪はいかがでしたか?
中嶋 復帰戦のときはね、潮崎豪を感じなかったですね。全く。
――それはどういう意味で?
中嶋 いや、復帰だったからかどうかわからないですけど、あんまりこう…
――ビシバシ来なかった?
中嶋 来なかったですね。でも、この間の後楽園ホールは終始、潮崎豪を感じていたので。その二日間なんですよ、ブランクって。復帰戦して次、後楽園が二日後なので。すごいスピードで勘を取り戻している、潮崎豪が後楽園にいたので。それはそれでちょっと面白いなって…
――となると1日は最高潮の状態でやり合えそうなイメージですか?
中嶋 どうなんですかね。彼次第じゃないですか?
――でも、昨日の試合でそういう試合勘みたいなものが戻ってきているっていうのが、中嶋選手的には感じたっていうことですよね。
中嶋 そうですね。あまりにも復帰戦がしょっぱかったんで。
――そういう風に感じられたんですね。
中嶋 しょっぱかったっていう言い方。まあでも、多分みんな思うんじゃないですか。
――本人的にもブランクが長かったから…
中嶋 違う潮崎豪でしたね。あの試合は。
――タイミングとか、間の取り合いみたいな部分がいまいちだったんですか?
中嶋 どうですかね。
――でも、それが昨日の試合では一気に印象が変わったっていうことなんですね。
中嶋 そうですね。
【GHCヘビーへの思い入れ】
――GHCヘビーはこれまで二度、現在も戴冠されてますが、このベルトを持ってみて、中嶋勝彦としての思い入れだったり、ノアを背負うという部分については?
中嶋 全く違いますね。
――違いますか?
中嶋 第28代と第36代じゃあ。
――あの時と今では全然違う?
中嶋 違いますね。
――どういう風に違いますか?
※28代GHCヘビー級王座を獲得した2016年当時の中嶋勝彦
中嶋 あの時はね、俺の中では過去(第28代戴冠時)は何もできなかったっていうのが。あれ、何試合したっけなあ?7回くらい防衛して、1年ぐらい持っていたんですよ。でも、何一つ俺のやりたいことができなかったんですよね、あの時は。
――なぜそういう風に思われるんですか?
中嶋 したいことができなかったから…
――でも、七度の防衛というとそれなりの実績だとは思いますが。
中嶋 実績と言えばあったとは思うんですけど、でもまだ俺があの時ベルトを持っていても影響を与えられなかったっていうのが、俺の反省点というか、過去の中嶋勝彦でした。
――たしかに今では影響力が全然違いますよね。
中嶋 今はそういうのはちょっと感じてはいるので。なんとかこれを、まあそれぐらいエネルギーになってますね、今。
――ノアの強さの象徴になりつつあると思います。
中嶋 本当ですか?
――丸藤さんはノアの象徴と思いますが、強さの象徴は杉浦さんのイメージが強かったと思うんですけど、今は中嶋選手が強さの象徴に段々変わってきてるなというイメージがあります。キックもそうだし、力強さをすごい売りにして。あとは、負けん気とか、自我とか、喧嘩スタイルというか。ちょっと向こうっ気の強いスタイルも含めて、その辺が強さっていう部分に見え隠れしてるなと思います。ご自身的には、どうですか?
中嶋 あんまりそれ言ったら、俺いっぱい技受けなきゃいけなくなっちゃう。嫌ですよ(笑)
――本当にその辺はすごい感じますね。蹴りのシャープさだとか、力強さっていうのは、今までも相変わらずなんですけど、凄みが増したんじゃないですか?
中嶋 それは嬉しいです。
――ご自身的には、そう思いませんか?
中嶋 あんまりそういう風にダイレクトに褒められることないから。金剛に入ってあんまり褒められることないから。
――そうですか?でも、歴戦の強者といろんな対峙をしていたときに、見劣りしないというか、むしろ食って掛かっているようなイメージがあるので、そういう部分でチャンピオン像というのが、たしかにおっしゃっているように前回のときのチャンピオン像とは、全く違う。本当にチャンピオンとして振る舞っているなっていう印象がありますね。
中嶋 自覚というか、自信を持って、今はリングに上がれているなっていうのが実感しています。
――試合をしていても、チャンピオンシップなんかを迎えるにあたっても、当時と今だと心境は違うんですか。
中嶋 違うと思いますね。当時のことはあんまり思い出せないぐらいですもん。
――今のほうが、どっしり構えているっていう感じですね。
中嶋 あんまり動じなくなってきているというとあれなんですけど「なんとかなる」っていう。なんか変な自信というか、自覚というか。結局、チャンピオンですからどうにかしなきゃいけないんですよ。その意識はすごく強くなれたというか、守る強さを持てるようになったというか。うまく言葉にできないですね。
――当時はチャンピオンとして肩の重荷をすごい感じていたんじゃないかなと思うんですけど、今はどうですか?
中嶋 当時はどうにかしたくてしょうがなかったです。
――そうですよね。なんか傍目で見ていても…
中嶋 空振りでした、完全に。
――当時は空振り。
中嶋 自分で勝手に素振りやっている感じですね。「誰も俺の素振り見てない」みたいな。構えているのにっていう。誰もボール投げてこないみたいな。
――たしかにすごい頑張ってるなっていうのは、傍から見ていても感じてましたよ。でも、今のほうが本当に落ち着いているというか。
中嶋 いろんな環境というか、状態が整ったんだろうなっていうのはあります。
――それってチームの支えみたいなものが大きかったりするんですしょうか?
中嶋 そうだと思いますし、会社自体もすごい変わったので。そういうのも大きいと思います。
――たしかにサイバーファイトという会社になって、試合に集中できる環境づくりは整ってきたっていうのも大きいですよね。
中嶋 あの時と一番違うのは、勝負に出れるという環境が、あることですかね?すごい環境にみんないるので。それをあの時があったからこそ、今感じられているっていう。だから、それは大きいかもしれないですね。
――試合中にちょっと狂気じみた笑顔を見せますが、試合をしていて楽しくなるんですか?
中嶋 それもありますね。
――蹴りごたえがあるなっていうようなときとか。ニヤリとして、この試合面白いと感じてるんじゃないかなと思うときとか、やりごたえがあるなっていう感触が表情に出るんですかね。
中嶋 そうだと思います。
――その辺も魅力が増したと思います。
中嶋 褒めますね、俺を褒め殺しに(笑)
【日本武道館に最後に入場する感想】
――日本武道館で最後に入場するとか、本当は拳王選手が一番ココをこだわってやりたかったことを、今度は中嶋選手ができる立場になりましたが、日本武道館で最後に入場する感想は、まだこれから実際やるわけなので、実感があまりないかもしれませんが、いかがですか?
中嶋 嬉しいことです。自分がその位置に今いるんだという嬉しさももちろんありますし、それ以上に自覚と責任感のほうが大きいんだろうなっていうのが。日本武道館。聖地じゃないですか。その最後に入場するというのは、俺がちゃんと締めなきゃいけない…
――そうですね。
中嶋 締めます。
――いいですね。ちなみに、今プロレスリング・ノア全選手の頂点じゃないですか。その重荷を感じることはありますか?
中嶋 あんまり考えないようにしていますね。
――そういうことはできるだけ考えないようにしている?
中嶋 だって、上見たらレジェンドたちがいるわけじゃないですか。レジェンドのようにはできないです。
――でも、現役バリバリっていう面では、完全に前面に立っている選手だと思うので、そこは自信があるんじゃないかなと思います。
中嶋 まあ、やっとこの大きな舞台で最後のメインに立てるので、代々木とかもそうだったんですけど、日本武道館っていうのはすごくノアにとって特別な場所で、その最後の舞台にメインで立つので。今思うことは「中嶋勝彦を存分に味わえ」と思いますね。
――いい台詞ですね。来場したファンの皆さんに、中嶋勝彦を知らしめるという、存分に味わってもらうと。
中嶋 だって、俺がノアだから。
――そのセリフしびれます。
【2022年の目標】
――2022年の目標をみなさんに伺っているんですが、勝彦選手は2022年、どういう風にしていきたいと思いますか?
中嶋 拡大ですね。
――拡大。どういう意味での拡大でしょうか。
中嶋 この2年間コロナに悩まされて、ファンの皆さんがずっと会場に来れない時期もありましたし、でもそんな中でも試合を続けた。その時期に配信とかをして、無観客でやってきたのはノアだけだったんですよ。他の団体、団体がみんな苦しいのはわかっているんですけど、その中でも一つの可能性として配信を先にやれたのがノアだったということは、それは非常に力になりましたね。なので、今まだコロナの状況が続いている中で、お客様が戻ってきつつある中で、もっとプロレスリング・ノアっていうものを、ノアの良さというか、凄さというか、そういうものを実感しているから、コロナがいつまで続くかわからないですけど、来年は勝負できる気がするんですよ。ただ、団体としても去年、今年、閉鎖的だったんですよね。他から選手が来なかった。ノアだけでやっていこうっていう感じだったんですけど、来年からはどんどん広げていくべきなんじゃないかなっていう。ノアのプロレスを知ってもらうためには、もっと海外に、世界に目を向けていってもいいんじゃないかなっていう、その中でもWRESTLE UNIVERSEに海外の選手を出せるんじゃない?ファンの皆さんも見てくれていますし、SNSも普及している中で、もっとノアで日本を知ってもらうためには、世界に出るのもいいんじゃないかなっていうようなものはあります。できるかどうかはそれは別として。
――世界に目を向けている面で、2022年。すごく面白そうな年になりそうですね。
中嶋 なりますね。きっと。
――1月1日の日本武道館、楽しみにしております!
(インタビュアー:山口義徳 プロレスTODAY総監督)
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大会の詳細・配信/放送情報は、ノア公式サイトで