大阪桐蔭と開成にある共通点とは? 東大前監督が力説する「身近なお手本」の重要性

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:高木希】

強豪校も超進学校も「先輩が後輩のお手本になる好循環」

東大野球部前監督の浜田一志氏は2013年から2019年までの在任中、東京六大学リーグでの連敗を94で止め、プロ野球にも宮台康平投手(ヤクルト)を送り出すなど優れた手腕を発揮した。一方で部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長も務めている。少年野球指導のヒントを紹介するFirst-Pitchの企画「ひきだすヒミツ」では、浜田氏による連載最終回として「身近に手本がいることの重要性について」聞いた。野球強豪校と進学校の共通点でもあるという。

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野球でも勉強でも希望の進路に進みたいのなら、同じ目標を実現した身近なお手本を作ることです。人間というのはどんなに困難にみえる目標でも、実際に実現した人が身近にいると、自分もできると思うものですからね。

大阪桐蔭がなぜ毎年のように甲子園の優勝候補になるかというと、先輩のプレーを真似して練習すれば優勝できるというのが分かっているから。開成からなぜ毎年、東大に100人以上合格するかというと、先輩の勉強法を真似すれば東大に受かるというのが分かっているからです。

要するに身近なお手本がたくさんいるということです。野球強豪校も進学校も代々、先輩が後輩のお手本になり影響を与えるという、好循環があるんですね。

東大野球部でも宮台(康平=現ヤクルト)がいた時にベストナインに選ばれる選手が出たり、法政大学から勝ち点をあげたり(2017年秋季リーグ)しましたが、これも宮台が他の部員のお手本になった効果と言うことはできますよね。明治大学もすごくわかりやすくて、歴代のエース・川上憲伸さんあたりから柳(裕也)君、森下(暢仁)君まで、みんな似たフォームで投げて、必ず縦のカーブを使っている。先輩をお手本にしているのが、如実に分かりますよね。

桑田真澄氏の東大コーチ招聘は「部員の手本になってほしかったから」

よく、子どもたちがプロ野球選手の物真似をしますよね。あれはすごく大事なことです。運動センスというのは、人の動きを真似するセンスでもあるからです。

子どもたちが大谷翔平投手の真似をして、面白がってやるんだけど、どうもうまくいかない。そこでなんでだろうと思う。そりゃそうですよね、体のパワーが全然違うんだから。それでいっぱいご飯を食べて体を大きくしなくちゃいけないんだ、筋肉をつけなきゃいけないんだということも分かるわけです。

だから指導者がすべきは、身近なお手本を用意すること。子どもたちにとって一番、身近なお手本は先生やコーチなので、指導者自身がお手本になってもいいし、いなければ外から連れてくればいい。私が東大監督時に桑田真澄さんらプロ野球出身者にコーチをお願いしたのも、部員の身近なお手本になってほしかったからです。

今はインターネットを調べれば動画サイトでお手本が出てきますけど、やっぱり実際に近くに存在した方がいいですよ。その方が「お手本」はこんなに努力するんだとか、「お手本」でも疲れたらサボるんだとか、良いところも悪いところもいろいろと分かりますからね。

○プロフィール
浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。1989年に東大工学系大学院を修了し、新日鉄に入社。1994年に文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」としてAi西武学院を開業。2008年に東大野球部スカウティング事務局を立ち上げ、2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。現在は文武両道で東大合格を目指す高校生に自身の学習メソッドを伝える支援活動を行っているほか、全国各地の中学・高校での講演活動も精力的に行っている。(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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