WRC、2022年の使用可能エンジン数が年間2基に。コスト管理や安全性を焦点に規則が修正

 フランス・パリで12月15日に開かれたFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)の会合を経て、WRC世界ラリー選手権のレギュレーションの一部修正が承認された。

 WRCは来月20日に初日を迎えるラリー・モンテカルロで2022年シーズンが開幕するが、それを前に“ラリー1規定”と呼ばれる新規定のスポーティングレギュレーション(競技規則)と、テクニカルレギュレーション(技術規則)にそれぞれ修正が加えられている。

 前者の競技規則ではコスト管理や安全性、持続可能性の面に重点が置かれ、トヨタなど各社が新たに用意した“ラリー1ハイブリッドカー”の導入をサポートするための改正が行われた。

 具体的なことのひとつは、各メーカーに許される1台あたりのエンジン使用数が年間3基から2基に削減されたことだ。

 また、シリーズの共通ハイブリッド・ユニットについては、マニュファクチャラー選手権ポイントを獲得するために参戦する車両に対して9基の制限が設けられた。なお、これにはテストでの使用は含まれない。各イベントでは、ラリー1カー1台に対してひとつのハイブリッド・ユニットとスペアの1基の使用が認められるなど、ラリー1規則のコスト削減案に準じたものになっている。

 安全性の確保につながる部分では、高電圧に対する安全対策の一環として、すべてのラリー1カーに“HVクラス0グローブ”の搭載が義務付けられる。万が一、ハイブリッドシステムに問題が発生した場合、ドライバーとコドライバーの両名はこれを着用しなればならない。

 同時にラリー1カーは、マーシャルや観客がひと目でハイブリッドカーであることを識別できるよう、フロントドアに配置される車両番号に代わって赤字に白文字で「HY」の表示を掲げることとなった。

 この他、プラグインハイブリッド車であるラリー1カーの充電手順や、HEVゾーン(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル・ゾーン)での充電方法など無公害車への対応が明確にされた。また、異常を知らせるシグナルが赤色を示したり、バッテリーの異常加熱が起こった場合に従うべき安全手順の概要を示すため、附則14が追加承認されている。

 2021年シーズンも何名かのドライバーが指摘を受けた、ヘルメットの正しい着用方法を規定した53.1条も今回改正が行われており、競技者がヘルメットの装着が正しく行われていないことに気づいた場合に、再度着用し直すことを促すものに。これに違反した場合はペナルティが与えられる。

 給油方法についても手順が明確化され、給油中はドライバー、コドライバーともに車内に留まることが禁じられる。また、給油を行うクルーには特定のウエアの着用が義務付けられた。

 ドライバーがコドライバーとして登録し選手権ポイントを獲得することを防ぐための措置では、不可抗力を除いてエントリーフォームでドライバー登録を行った者がスペシャルステージ(SS)でクルマを走らせることを義務化し、これに違反したクルーはポイントの獲得ができなくなっている。

 テクニカルレギュレーションの修正はラリー1車両の重量に関するもので、新型WRCカーの最低重量が従来より10kg増加した。これは車両開発に係るコストを抑えるために盛り込まれたものだ。

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